
■Clay Smith / Decoupage■
ようやく都会でも紅葉が目立ち始めました。 そんな夜に左利きの SSW、Clay Smith の頼りなげでぎこちないアルバムを取り出しました。 Clay Smith のキャリアについてはよく分からないものの、1977 年という時代もあって、マイルドでメロウな雰囲気が全体を覆う作品となっています。 朴訥として不安定な感じのボーカルが彼の特徴でもあり、弱点ともなっているアルバムです。
楽曲の半分は Clay Smith 自身によるものですが、それ以外はカバー。 なかには意外な選曲もあったりしますが、その代表が「My Girl」です。 初めて聴いたときは同名異曲かと思いますが、テンプテーションズの代表曲の「あの」「My Girl」なのです。 Clay Smith のマイルドなボーカルと、アダルトなアレンジで無難にこなしている印象ですが、このアルバムに必須な選曲だとは正直思えません。
ところが、このアルバムにはもう 1 曲、テンプテーションズのカバー「The Girl’s Alright With Me」が収録されているのです。 よほど Clay Smith が好きなのでしょう。 世代的には幼少の頃のアイドルだったのかもしれません。 こちらは、誰が聴いてもモータウンと分かるようなリズム・アレンジが再現されています。
ここまで書いてみて、このアルバムのコンセプトはどうなっているのかと不安になりますが、他のカバー曲にも触れておきます。 「Memories Of You And I」は、やや田舎臭さの残る曲。 Lee Clayton のカバーです。 「Rainbow Love」は、Arthur Smith の楽曲。 彼のことはよくわかりませんが、1950 年代に活躍したギタリストに Arthur Smith という人物がいるので彼の作曲かもしれません。
では、Clay Smith 本人の書いた曲からピックアップしてみましょう。
オープニングを飾る「Decoupage」はアルバムのハイライト。 この曲を試聴したら、迷わずに買ってしまう AOR ファンもいそうです。 穏やかで控えめな Clay Smith の良さはこういう楽曲でしか出てこないことに気づくのはアルバムを聴き終わってからなのです。 B 面 1 曲目の「This Party’s Over」は、夕暮れのそよ風感のあるライトタッチな佳作。 「Follow The River」は、アルバムのなかでもサビがはっきりした楽曲でシングルカットもされたようです。 ラストの「Jo-Anne」は憂いのあるバラード。 個人的には「Decoupage」とこの曲があれば十分かなと思ってしまいます。 このようにプレ AOR 的なサウンドのほうが彼は似合っているのですが、仮にその路線に転向して次作を出したとしても成功したかは難しいかもしれません。
このアルバムを聴いて不思議なのは、選曲/アレンジ/メロディ/ボーカル等どこをとっても中途半端なところです。 何かひとつ強烈な個性があって、それが全体を引っ張っていくというサウンドでは全くないのですが、逆に致命的な弱点は何かと考えると難しいのです。 強いていうなれば、その弱点は Clay Smith 自身の性格に内包されているように思います。 「優しいだけでは生きていけない…」そんな言葉がお似合いのアルバムなのです。
最後に Monument Records に関して少し。 このレーベルは Fred Foster が創設した歴史の長いレーベルですが、ネットで調べたところどうやらこの Clay Smith のアルバムはレーベルとして晩年にあたる時期の作品でした。 そんな状況を想像しながらレコードに耳を傾けるのも悪くありませんね。

■Clay Smith / Decoupage■
Side-1
Decoupage
Memories Of You And I
My Girl
Where I’m Around
Rainbow Love
Side-2
This Party’s Over
The Girl’s Alright With Me
Follow The River
It’s Ending
Jo-Anne
Producer : Fred Foster
Bass : Tommy Cogbill
Guitars : Reggie Young , Jim Calvard , John Christopher
Drums : Gene Chrisman
Keyboards : Bobby Wood , Bobby Emmons , Randy Goodrum
Steel Guitar : Weldon Mylick
Harmonica : Charles McCoy
Percussion : Farrell Morris
Tenor And Baritone Sax : Norman Ray
Monument record MC 6646