
■Pine Island / No Curb Service Anymore■
前回に続いて Green Mountain Records のレコードを取り上げます。 グループ名の Pine Island は直訳で「松島」ですが、裏ジャケに湖に浮かんでいる小島の写真が載っています。 これがまさに松島なのです。 アメリカ人も日本人も同じ感性なのですね。
そんな Pine Island は 5 人編成のグループ。 メンバーはフィドルやバンジョー、ドブロなどを担当しており、典型的なブルーグラス編成となっています。 クレジットを見ると、各々がそれなりの演奏キャリアを持っていることから、バーモント州のスーパーバンド的に編成されたのかもしれません。 曲もほぼ均等に書かれており、民主的な雰囲気を感じます。 アルバムを主役別にレビューして見ることにしましょう。
ボーカルを務めることが多いのは、Susan Longaker と Dan Manoney ですが、まずは紅一点の Susan Longaker のボーカル曲からピックアップしましょう。 彼女はギターとボーカルということもありリードやハーモニーで活躍しています。 「Blue Night」ではしっとりと大人っぽい歌声を披露、ハイな気分のアップチューン「I’ll Stay Around」ではリズム感抜群です。 派手な演奏陣に負けていませんね。 「Walkin’ Shoes」も高速のブルーグラス。 フィドルとバンジョーの技巧には脱帽です。 ミディアムな「When My Blue Moon Turns To Gold Again」でも Dan Mahoney との見事なハーモニーを聴かせてくれます。
その Dan Mahoney はドブロ、ギターそしてボーカルを担当。 彼の陽気で表現力の豊なボーカルはアルバムの魅力を広げています。 アップテンポの「Stay All Night」は、 Gordon のバンジョーが心地よく、Dan のリードと掛け合います。 James McGinniss 作の「Gin And Moxie」や、「Lovesick Blues」でも柔和なボーカルを披露しています。 Pine Island の男性陣のなかでは最も歌が上手いですね。
つづいて取り上げるのは、フィドルとボーカルを担当する David Gusakov 。 彼はコーラスがメインのようで、リードボーカルを務めているのは「Rough And Rowdy Ways」だけです。 渋めの声でくたくたな感じのヨーデルを決めて最高です。 しかし、フィドルのテクニシャンぶりは素晴らしく、アルバム冒頭の「Katy Hill」のフィドル・ソロをはじめ、スイングする陽気なインスト楽曲の引き立て役を演じています。 そんな華麗なテクニックは「Bootleg Express」、「President Garfield’s Hornpipe」そして「Pine Island Breakdown」といったインスト・ナンバーで遺憾なく発揮されています。 そのテクはバンジョーの名手 Gordon Stone にも当てはまります。 彼のプレイは前述のインストや「Walkin’ Shoes」で炸裂します。 そもそもヘタなバンジョー弾きにレコードでお目にかかったことは無いですけど。 彼のハイライトは自身の作曲による「Django’s Banjo」でしょう。 Django とは勿論あのジャズ・ギターの巨匠 Django Reinhart のこと彼への敬意が込められた曲のようです。 腕に自身が無いと付けられない曲名ですよね。 そんな Gordon が唯一ボーカルをとる「Mind You Own Business」では、ヘタウマなボーカルを披露しています。
そして寡黙そうなベーシスト James McGinniss は自身の作曲による「By Your Side」で心優しいボーカルを披露している以外は、演奏のほうに専念といったところのようです。 しかし、全員にリードボーカルを取らせていることは冒頭にも書きましたが、このグループの成り立ちにも大きく関係しているように思います。
Pine Island はこの後 1977 年にFretless Records から「Live Inside」というライブ盤をリリースしてるようです。 バーモント州の Chelsea House Folklore Center でレコーディングされたこのレコードは未聴ですが、きっとバンジョーとフィドルの超絶バトルが繰り広げられていることでしょう。 その白熱した演奏を想像するだけでドキドキしてしまう......そんな卓越したパフォーマンスが魅力のグループです。

■Pine Island / No Curb Service Anymore■
Side-1
Katy Hill
Stay All Night
Blue Night
Gin And Moxie
Django’s Banjo
By Your Side
I’ll Stay Around
No Curb Service Anymore
Side-2
Walkin’ Shoes
Mind Your Own Business
Bootleg Express
Lovesick Blues
President Garfield’s Hornpipe
Rough And Rowdy Ways
When My Blue Moon Turns To Gold Again
Pine Island Breakdown
Produced by Dick Longfellow and Pine Island
David Gusakov : fiddle , vocals
Susan Longaker : guitar , vocals
Dan Mahoney : dobro , guitar , vocals
James McGinniss : bass , vocals
Gordon Stone : banjo , guitar , dobro , vocals
Green Mountain Records GMS-1052