■Elliott And Walter / Save A Piece Of The World■

 未知のレコードに出会う楽しみは、いつになっても変わりません。 そこにどんな音楽があるのかはもちろんですが、サウンドやジャケットの情報から、そのレコードに関わった人々や暮らしまで想像してしまいます。
 今日取り上げたこのレコードもそんな 1 枚。 NASA の本拠地でもあるテキサス州ヒューストンのローカル・レーベルから 1975 年に発売された Elliott And Walter のアルバムです。 南極方面から映した地球の写真。 何故モノクロなのでしょうか。 これはデザイン的な理由からジャケット印刷のコストによる理由まで、いろいろな可能性が考えられますね。 その前にどうして地球なのか、そもそもこのアルバムのコンセプトは何なのか…などいろんな疑問が頭を駆け巡ります。 しかし、結局のところ、その疑問に対する明確な回答があるわけもなく、それは自分の妄想のなかで勝手な解釈をみつけるしかないのです。

 Elliott And Walter は、Jerrel Elliott と Clark Walter によるユニット。 バックメンバーも含めて、標準的な 6 人編成のロックバンドとみなしても良さそうです。 全ての曲は Jerrel Elliott が書いていることもあり、彼がサウンドの中核を担っていることは間違いなさそうです。

  アルバムはサウンド・コラージュを使用した遊び心で始まり、次第にソウルフルに流れていく「Baby , Baby , Baby」でスタート。 単に♪baby baby ♪と繰り返すコーラスをモチーフにラフなアドリブや拍手などのエフェクトでフェードアウトするという実験的なナンバーです。 何かのデモ音源にしか聴こえないこんな曲でリスナーを猫だましするセンスには一本取られた気持ちになります。 つづく「All I See」からが、真の Elliott And Walter ワールド。 この曲は初期のSteely Dan にも似た渋い味わいのミディアムなのですが、アメリカらしくない陰影を感じる独特の楽曲となっており、このアルバムを代表する曲ともいえます。 一転してギターの弾き語りによるシンプルなバラード「For The First Time」をはさんで、「Lately I’ve Laid My Troubles Down」は陽気なピアノ系ロックナンバー。 この曲は 1971 年作との表記があります。 「I Know How You Feel」はまた低めの渋いボーカル・ナンバー。 こうして聴くと、リードボーカルが入れ替わっていることが徐々に明らかになってきます。 Elliott と Walter のどちらがこの低音なのかはわかりませんが、Glenn Campbell が歌ってもおかしくない雄大なバラードです。 この曲もハイライト。 「Raggedy Ann」は、牧歌的なワルツ。 リコーダーの響きも聴こえ可愛らしく仕上がっています。

 B 面は、サビが印象的な「Teaser」でスタート。 この曲も Steely Dan に通じるマジックを感じます。 シングルが存在したとしたら、この曲に違いありません。 「Too Late」はピュアなラブソングということがメロディやアレンジから伝わってくる佳作。 この 2 曲は高い方のボーカル担当でしたが、「Save A Piece Of The World Part 1」はまた低い方へ。 この曲はロック色がほとんどなく、「男性ボーカル」というジャンルです。 曲調がアップに変化したところから「Save A Piece Of The World Part 2」の始まり。 この曲もどちらかというと僕には苦手なタイプということで、アルバムタイトル曲への期待は見事に裏切られました。 アルバムを締めくくる「Something’s Going Down」は、シンセサイザーのスペーシーなイントロが長く、徐々にアコースティックギターがフェードインしてくる様は、王道のプログレのようです。 しかし、本編や淡々としたワルツでシンセによるフレーズの繰り返しも引っ張りすぎというほど長いので引き締まった印象とは真逆な感じを受けます。

 このようにアルバムはボーカルによって楽曲のイメージが大きく異なり、楽曲も半数くらいが平凡な出来といって差し支えのないものです。 逆にいい面を指摘すると、どんな曲が飛び出すかわからないような「おもちゃ箱的」な側面でしょう。 サウンドは聴く人や時代によって受け止め方がまるで違ったものになるものです。 ですから、僕はアルバムの中身よりも、Google にも検索されない彼ら自身の招待の謎へと関心が移ってしまったのです。 Elliott And Walter の二人が目指した夢はどんな方向だったのか…。 それをサポートしたスタッフの思いは…。 そして、このレコードを手にしたヒューストンの人々の反応は…。
  そんなことを考えて、にんまりしてしまう自分もそろそろやばいかなあ。




■Elliott And Walter / Save A Piece Of The World■

Side-1
Baby , Baby , Baby
All I See
For The First Time
Lately I’ve Laid My Troubles Down
I Know How You Feel
Raggedy Ann

Side-2
Teaser
Too Late
Save A Piece Of The World Part 1
Save A Piece Of The World Part 2
Something’s Going Down

All Voices : Jerrel Elliott and Clark Walter
Piano : Gerald Bennett
Bass : Joe Medina
Drums : Steve Keller
Guitar , Synthesizer , Recorder : Jerrel Elliott

All songs composed by Jerrel Elliott

Jam records Jam103