■Don Jewitt / Between Hello And Goodbye■

 昨日は真夏日で 32 度にもなったのに、今日の日中は 17 度くらいしかなかったようで、季節の変わり目とは言え、極端すぎますね。 いっきに秋へと向かう夜長に針を落としたのは、Don Jewitt が 1979 年に発表した唯一のアルバムです。 彼のプロフィールなどは全く不明ですが、Tony Kosinec が参加したアルバムとして Ron Baumber の「China Doll」と並ぶ名作だと思います。 「China Doll」に参加していた Jon Goldsmith 、Dave Nicol  Bob DiSalle が、このアルバムにもクレジットされているあたりがサウンド面でのヒントとなりそうです。

 しかし、このアルバムを検索してみても、まったく見当たらないのには驚きました。 名称もないマイナーレーベル盤とはいえ、珍しいことだと思います。 そんな Don Jewitt は誰に似ているかというと、Michael Johnson に近いと感じています。 ボーカルの雰囲気、アコースティックギターを基調としている点、そして曲調といったところに共通項を見出すことができます。 さっそくアルバムの曲をおさらいしてみましょう。

 まず、最初に Tony Kosinec がコーラスアレンジとバックコーラスで参加した 3 曲をピックアップしてみます。 それは「No Point Coming Down」、「Overturned Memories」、「Northern Wind」の 3 曲なのですが、どの曲にも共通してこの声が Tony Kosinec だとはっきりとわかる部分はありません。 しかし、アレンジはユニークで、とくにフェードアウト前に小細工してるように聴こえます。 「No Point Coming Down」は、都会的なピアノ、クールなギターソロなどサウンド面での充実が光る曲。 「Overturned Memories」も、同様に哀愁あふれるミディアム。 そして、「Northern Wind」 も Jon Goldsmith のピアノセンスが光るミディアムとなっており、いずれもレベルの高い仕上がりとなっていること間違いありません。

 他の曲も含めてアルバムは、ギターソロのない AOR といった趣向でほぼ統一されており、満足度は極めて高い内容となっています。 アルバムのオープニングを飾る「Turn Down The Roses」、Bill LaBounty に近い AOR テイストを感じる名曲。 こうした傾向の曲は他にも、「Word For Word」や「Tomorrow Never Came」などがあります。 「Tomorrow Never Came」は、アルバム中で最もハードで明るいアメリカンな楽曲ですが、エレキのソロはこの曲を含めて 2 曲のみしかありません。 ですから AOR 風に仕上がっているといっても、サウンド面の主体はアコギとエレピ・ピアノとなっているので、いわゆる売れ線の匂いは全くしません。

 バラードの充実も見逃せません。 タイトル曲の「Between Hello And Goodbye」は、音数の少なさに Jon Goldsmith のストリングスが琴線を刺激する名曲。 同様のテイストとしては、哀愁を帯びた「If You Can’t Always Do Good」や、「What Friends Are For」 があります。 後者は、Jon Goldsmith のピアノが蝶のように舞い続ける美しい曲。 タイトルからしてもしっとりした曲であることが予想できますが、アルバムを代表する名曲でしょう。 「Break Loose」は、Don Jewitt が優れたギタリストであることを証明するインスト。 ラストの「Glory」も本人のみによる弾き語りでしんみりと幕を閉じていきます。

 アルバムを久しぶりに聴きましたが、全体を通してサウンド面での一貫性とスムースな流れ、高いクオリティの楽曲群からして、カナダの SSW のなかでも屈指の名盤であることを再認識しました。 大陸横断の長距離バス「グレイハウンド」のジャケットはあまりしっくり来ないのですが、1979 年にトロントから産み落とされた知られざる至宝を大切に聴き続けたいと思っています。



■Don Jewitt / Between Hello And Goodbye■

Side-1
Turn Down The Roses
Between Hello And Goodbye
No Point Coming Down
Overturned Memories
Word For Word

Side-2
Northern Wind
If You Can’t Always Do Good
Break Loose
What Friends Are For
Tomorrow Never Came
Glory

Produced by Don Geppert

Drums : Jon Anderson , Bob DiSalle
Bass : John Toulson , Dave Nichol , Paul Blaney , Billy Scullion
Piano , Electric Piano , Poly Moog , : Jon Goldsmith
Acoustic Guitar , Lead Vocal : Don Jewitt
Electric Guitar : Hal Ames
Organ , Synthesizer : Robbie King
Percussion : Mat Zimbel
Shaker : Don Geppert
Backing Vocals : Marek Norman , Tracy Richardson , Tony Kosinec

Strings Arrangement by Jon Goldsmith
Back Chorus Arrangement by Tony Kosinec

WRC 1-1144