■Charlie King with Paul Despinosa / Old Dreams And New Nightmares■

 今までこのブログで取り上げたレコードのなかでも、最も政治的なメッセージの強いアルバムです。 メッセージというよりも政治への批判や皮肉と言った方が近いかもしれません。
 1975 年に、Charlie King が Paul Despinosa のサポートを得て、制作されたアルバムです。 どこから見てもプライベート・プレスに違いないと思えるこのジャケットにも、Charlie King のこだわりとか姿勢を感じ取ることができます。
 アルバムは、この手のフォーク作品としては、曲数も長く、片面も 25 分近く収録されています。 当時は、Charlie King が関心を寄せる出来事も多く、曲がどんどん生み出されていたのでしょう。

 「Do The Continental Walk」は、1976 年にサンフランシスコからワシントン DC までの大陸横断をしながら、非武装・中立を唱えるという行進が行われる計画となっており、その計画への参加を呼びかける歌のようです。 このような曲からスタートしますが、サウンドは、淡々としたフォークです。時折トーキングスタイルにもなりながらも、決して荒げることはなく、極度に感情移入することもなく、マンハッタンの片隅で歌っているかのような気楽なイメージを感じ取ることができます。「This World Is One」は、当時 NYC に日本から原水協のメンバーが訪問したことを題材にしたもの。曲ごとに書かれているライナーには、原水協のメンバーの多くが広島と長崎の原爆を体験していることも明記されています。CIA のことを皮肉ったと思われる「The Good Ol’ C.I.A.」などは軽い曲なのですが、Charlie King の向ける矛先の相手はスケールが大きいですね。
 批判の矛先は、CIA のみならず、ウォーターゲート事件で任期途中で辞任したニクソン元大統領にまで及びます。 「I Don’t Feel sorry For You, Mr. Nixon」はタイトルの通りなのですが、税金のムダ使いなどを歌いながら、It’s hard to sorry for a guy like this とまでにコテンパンにしています。 表現の自由が認められているとはいえ、かなり痛烈ですね。 1975 年に起こったマヤグエス号事件のことを歌った「The Mayaguez Incident」は珍しくマイナー調の曲。 マヤグエス号事件のことは初めて知りましたが、この曲ではその事件に関するフォード大統領の判断を批判しているものと思われます。
 このように多くの曲が政治色の濃いものとなっていますが、なかには「Time Is A Love Thief」や「Ordinary Love Song」のようなふつうのラブソングもあったりします。 メロディとしては、「Pour Yourself Out In Line」がキャッチーでポップな味わいです。 

 このアルバムは当時の時代との関連性が希薄になってしまった今となっては、音楽的な評価というよりは史料的な意味として語られるべきものでしょう。 僕は今回で2度目でしたが、また聴こうという気にはなかなかなりません。 
 そんな Charlie King はいまもなお、現役のフォークシンガーとして活動しています。 さすがにこのアルバムのような鋭いメッセージ性は影を潜めているのではないかと想像しています。 むしろ、そう願っています。

 

■Charlie King with Paul Despinosa / Old Dreams And New Nightmares■

Side-1
Do The Continental Walk
Talking Whip Inflation Blues
America, Where Did You Go?
Time Is A Love Thief
This World Is One
He Had A Dream
The Good Ol’ C.I.A.

Side-2
I Don’t Feel sorry For You, Mr. Nixon
Ordinary Love Song
The Rats Are Winning
Pour Yourself Out In Line
The Mayaguez Incident
An Old And Simple Dream

All Songs written and sung by Charlie King
Guitar and vocal accompaniment : Paul Despinosa
Shouting Chorus : Gerry Mooney , Debby Hoey , Kathy Coughlin , Nina Rutledge
Produced by Gerry mooney
Recorded at Mastertone Studio , N.Y.C.

CW Records