
■Lander Ballard / High Time■
何度見ても配色が気持ち悪く、色合いにもなじむことができないジャケット。聴くときには、モノクロの裏面と歌詞のブックレットを手にして、この鮮烈な赤が目に入らないようにしています。そんなジャケットでかなり損をしているのが、Lander Ballard のこのアルバムです。1977 年にリリースされたこのアルバムは、おそらく彼の唯一の作品です。
裏面の Lander の表情やたたずまいからは、神経質そうなフォークサウンドを予想してしまいますが、意外にも内容はカラフルなニッチポップといってもおかしくない内容です。まず、彼の歌声が伸びやかで美しく、低音から裏声まで広い声域を活かしたサウンド作りが意識されています。ストリングスやホーンもなく、自身のセルフコーラスが随所に効いています。
アルバムタイトルとなった「High Time」はちょっとしたグルーヴ感すら感じる名曲です。キャッチーなサビとドライブ感のある演奏で、これはクラブ DJ などにはお薦めできるのではないでしょうか。 自らがピアノを演奏する「Previous Things」は Elton John あたりを髣髴とさせるポップソングです。 表情豊なボーカルの魅力という点では、この曲が一番かもしれません。 続く「Song For An Aging Minstrel」は、♪Mr. Piano Man♪と歌うこともあってか、何となくBilly Joelを聴いているような錯覚に陥ります。 Lander Ballard の奥さん Kathie のことを歌った「Kathie’s Love Song」はアルバムを代表するバラード。名前もBallard なのですが、関係ないですね。綴りも違うし。 しかし、1970 年代にはこのように自分の恋人や奥さんのことを歌にする人が多いですね。自由奔放なヒッピー文化から個々を大切にするライフスタイルが定着していった時代背景による影響が強いのでしょう。 「Ch’I (Natural Energy)」は一貫してファルセットに近い裏声で通す風変わりな曲。 David Forman 名曲の「If It Takes All Right」を思い出します。
6 曲の A 面に対して、B 面は 4 曲とバランスが悪いのですが、「The May – Fly Song」は珠玉のバラードですね。 70 年代中期の David Pomeranz に通じるようなサウンドとメロディのクオリティは大したものです。ラストの「My Friends」は 7 分超の大作ですが、アッパーなフォークロックという趣きです。
繰り返しになってしまいますが、レコードのジャケットって大切ですね。 Lander Ballard のこのアルバムの内容を伝えるのに、彼がギターを抱えている必要はないし、むしろ誤解もしくは別のイメージを与える可能性があり、メリットはひとつもありません。彼はこのレコードのことをどう思っているのでしょうか。訊いてみたくなりますね。 ネットで調べたところ、公式サイトはありませんでしたが、彼はいまも時折ライブなどを行っているようでした。
■Lander Ballard / High Time■
Side-1
High Time
Previous Things
Song For An Aging Minstrel
Kathie’s Love Song
It Just Can’t Come To An End
Ch’I (Natural Energy)
Side-2
Rock And Roll Man
Circles
The May – Fly Song
My Friends
Music and Lyrics by Lander Ballard
Except ‘Previous Things’ Lyrics by Lander Ballard and Jan Bulla
Produced by Billy Sherrill and Lander Ballard
Engineered by Billy Sherrill
Lander Ballard : all vocals & guitars , acoustic piano on ‘Previous Things’
Timmy Tappan : all keyboards , tuned percussions
Tommy Tow : bass
Larrie Londin : drums , percussions
Free Wind Records LB7701