■John Laughlin / Morning Moon■

 前回ご紹介した、Ann Mortifee が自身のアルバムを出した 1975 年よりさかのぼること 2 年前、1973 年に初めてミュージシャンとしてクレジットされたのではないかと思われるのが、この John Laughlin のアルバムです。 Ann Mortifee 研究の素材としてはかなり重要な史料的価値を持っているでしょう。  そんな研究をする人がいるかどうかは別問題ですけどね。 ま、それはそれとして、このStamp Records という他の作品をみたことがないレーベルからリリースされたこの「Morning Moon」は、おそらく彼の唯一の作品と思われます。 見るからに神経質そうな彼の表情を見ると、その後の彼の消息がちょっと不安になったりしてしまいますね。

 アルバムは、ちょっとネコ声の John のボーカルがシンプルな演奏にのったナチュラルな楽曲「Changes In The Weather」で始まります。 アルバムのオープニングにはふさわしい曲だと思います。 つづく「Nicky’s Song」は、カナダ音楽界の重鎮ともいえるギタリスト Dave Sinclair の弾くギターをバックにした小品。 深みのある霧が立ち込めたような地味な曲「Seaman’s Sea」では、Kathleen Payne のスキャット風のコーラスが情景を演出しています。 かなり内省的な「Between Us」につづいては、久しぶりに音数の多い「Come Autumn」となります。 ここでは、Harmnium のイントロに Robbie King のピアノが印象的な曲。 注目の Ann Mortifee がバックコーラスで参加しています。 クレジットにあるとおり、ウー♪と歌うのですが、彼女の声はたしかに認識できます。 A 面ラストは、マンドリンも加わった初のカントリータッチの「One Two Many Songs」で終了。
 B 面に移ると、やはりマンドリンが入った曲「Demain , Demain」で始まります。 こちらの曲は、マンドリンのテケテケ風のタッチが日本の叙情派フォーク(もしかして死語ですか?)のようです。 この曲は途中の 2 番からはフランス語で歌われています。 続く「Do What You Can」は、煌く Robbie King のピアノが印象的な名曲。 さりげない存在感が逆に好印象を与えてくれます。 続くは、アルバムのなかで最も長い曲「Mid-November」です。 ピアノの演奏のみをバックにしたシンプルな楽曲で、典型的な SSW 的な展開で次第にボーカルにも力がこもってきます。 一瞬ですが、Ian Tamblyn を思い出してしまいました。 プロデューサーである Jay Telfer の曲「Okuzidoo」を経て、ギターの弾き語り「Let Me」が始まります。 この曲は悲しみのなかにもどこか陽気さも見え隠れする楽曲ですが、あっという間に終わってしまいます。 ラストの「Follow Me Up」はさらに短い曲で、聖歌のように美しい女性コーラスが胸に染みこんで来ますが、その余韻にひたらせない短さで 1分31 秒です。

 曲の紹介にも、あるいは下記のクレジットにも書きましたが、John Laughlin はかなり偏屈なのか、あるいは茶目っ気なのか、クレジットの用語を尋常でない言葉で表現しています。 たとえば、John 自身の guitar and larynx というのは、「ギターと咽頭」という意味。 ほとんど医学用語です。 さきほどの Ann Mortifee もコーラスではなくOoooo ですし、Kathleen Payne のコーラスは sweet siren と表されています。  ラストの曲では、mothery ですからね。 John Laughlin は果たして、文学青年なのか、オタクなのか、ウケ狙いなのか、native の人に聞いてみないとまったく分かりませんね。
 さて、そんなこの「Morning Moon」ですが、カナダ系 SSW としてもあまり知られていないようですが、ジャケットの雰囲気も含めて名盤とはいえないものの、手元においておきたい気分にさせられるアルバムだと思います。 当然のようにCD化されていませんし、その気配すらまったくありません。
 次回は流れでこのアルバムをプロデュースした Jay Telfer のアルバムを取り上げてみたいと思います。 今週は忙しいので、ちょっと日にちが空いてしまうかもしれませんが、そこはあしからず。



■John Laughlin / Morning Moon■

Side-1
Changes In The Weather
Nicky’s Song
Seaman’s Sea
Between Us
Come Autumn
One Two Many Songs

Side-2
Demain , Demain
Do What You Can
Mid-November
Okuzidoo
Let Me
Follow Me Up

Engineered and Produced by Jay Telfer at Studio ,Vancouver
All Selections written by John Laughlin except ‘Okuzidoo’ by Jay Telfer

John Laughlin : guitar and larynx
Doug Edwards : bass on A-①⑥ , B-②
Robbie King : piano and harmonium on A-①⑤ , B-②③
Paul Burton : drums on A-①
Dave Sinclair : lead guitar on A-②⑤
Marty Harris : bass on A-②
Jay Telfer : brush and mouth on A-② , pot on A-③ , guitar and bells on B-② , lead plink on B-④ , thumb harp on B-⑥
Kathleen Payne : sweet siren on A-③, motherly on B-⑥
Tom Haslitt : bass on A-④⑤,B-④
Bill Buckingham : guitar on A-④
Dick Stepp : tabla and baayan on A-⑤
Joni Taylor : Ooooo on A-⑤
Ann Mortifee : Ooooo on A-⑤
Rick Van Krugel : mandolin on A-⑥ , B-①
V.DeShorts : clapping and tambourine on A-⑥
Frank Allison : steel guitar on B-④
Jim McGillvary : drums on B-④
J.P and J.D.Turnip : forever chorus on B-⑤
Melady Greene : motherly on B-⑥

Stamp Records ST 3-3