第1 設問1

 1 本件訴訟1は、5000万円の貸金債権という金銭「債権者」Cが、その「債務者」Aの唯一資産といえる甲を担保に出した責任財産減少行為といえる本件担保提供行為が、本件通知書を発送していた以上E「を害することを知ってした行為」であるとして、民法4241項本文の規定により提起した詐害行為取消訴訟訴訟である。

   Cは、上記債権を「破産手続開始決定前」の令和2年7月16日の消費貸借契約という「原因」で取得したから、「破産債権者」にあたる。

   本件訴訟1は、破産手続開始決定時である令和2年12月1日、係属中だった。

   したがって、本件訴訟1は、同決定によって「中断」する(破産法(以下略)45条1項)。

 2 そして、破産管財人は、同訴訟を受継でき、その申し立ては、相手方Eもできる(同条2項)。破産管財人が受継した場合、訴えの変更を申し立てて、詐害行為取消訴訟を否認訴訟に変更することとなる。

 3 同受継後に破産手続が終了した場合は、上記訴訟は中断し(同条4項)、Cはこれを受継しなければならない(同条5項)。その申し立ては、相手方もできる。なお、破産管財人が受継せずに破産手続が終了した場合は、Cは、これを当然受継する。

 4 以上の取り扱いを受ける。

第2 設問2

 1 162条1項に基づく主張

   本件担保提供行為は、「担保の供与…に関する行為」(同項かっこ書き)にあたるとも思える。

   しかし、同条項の趣旨は、破産者の破産財団を原資とした債務消滅行為・担保提供行為が債権者平等を害するため、これを否認することにある。そして、ここでいう“債権者”とは、破産者の債権者をいう。そうすると、「担保の供与」とは、破産者の債権者に対してされるものと解すべきである。

   本件担保提供行為は、Bの、Eに対する債務5000万円を担保するためにされたから、これに当たらない。

   よって、上記主張は、認められない。

 2 160条1項に基づく主張

  ⑴ 前述のとおり、本件担保供与行為は「担保の供与」(同項かっこ書き)にあたらない。本件担保提供行為は、Aが、資金繰りに窮していることを自覚した上で、甲以外にみるべき財産がないにもかかわらずした責任財産減少行為だから、「破産債権者を害することを知ってした行為」(同項1号本文)にあたる。

  ⑵ Eは、本件担保提供行為時、Aが資金繰りに行き詰まり債務が弁済できない旨記載された本件通知書を発したことを知っていた以上、「破産債権者を害することを知らなかった」とはいえない(同号但書)。

  ⑶ よって、上記主張は認められる。

第3 設問3

 1 本問代物弁済(以下、本行為)を162条1項1号によって否認できるか。

 2⑴ 本行為は、AD間の本件事業用車両(以下、本車両)売買契約に基づく代金債務の弁済としてされたから、「既存の債務についてされた…債務の消滅に間する行為」(同項柱書かっこ書)にあたる。

  ⑵ 「支払不能」(同項1号)は、「支払の停止」によって推定される(同条3項)。「支払の停止」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態であることを外部に表示する客観的行為をいう。

  ⑶ 本件通知書には、資金繰りに行き詰まり(支払い能力を欠くために)、本件通知書を発した令和元年9月4日までに支払期限が到来した債務の支払いができなくなり、その後も支払いができる見込みがない(その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない)旨記載されていたから、これを全ての債権者に発送する行為は、上記状態であることを外部に表する客観的行為といえ、「支払の停止」にあたる。

    よって、同発送行為以降は、「支払不能」が推定される。

  ⑷ 本行為は、上記発送があった後の令和元年9月23日にされたから、「破産者が支払不能になった後…にした行為(162条1項1号本文)にあたる。

  ⑸ Aの債権者であるDにも本件通知書が発送されている以上、Dは、「支払の停止があったこと」を「知っていた」といえる(同号イ)。

 3 しかし、同条項の趣旨は、責任財産を原資とした債務消滅行為が債権者平等を害するためこれを否認する点にあるから、実質的に責任財産を構成していない財産による債務消滅行為であれば、否認の対象にならないと解すべきである。

   本車両は、上記売買契約時の特約で、所有権がDに留保されていた。

   所有権留保は、その担保としての実質を重視して、破産法上別除権として扱われ、破産手続によらないで行使できる(65条1項)。そうすると、所有権留保の被担保債権が弁済期にあって、目的物と同債権の均衡が取れていれば、同目的物は実質的に責任財産を構成していないといえるため、これによる代物弁済行為は否認できないと解する。

   Aは、令和元年9月15日支払分以降の分割代金を支払うことができなかった以上、代金債務の弁済期が到来しているといえる。

   また、本車両の本行為当時の評価額は750万円だったから、残代金額900万円と均衡が取れているといえる。

   したがって、本車両は、実質的に本行為時にAの責任財産を構成していなかったといえるため、本行為は否認の対象とならない。

 4 以上により、本問主張は認められない。

以上

 

 

 

 

書く量が予想以上に多くて、4枚目の後半は、小さい字で丁寧に書かざるをえなかった。

設問1は、どこまで書いたらいいか分からなかった。

設問2は、親子会社の関係に配慮するのかなとも思ったけど、時間なかったし、書ききることを優先した。

設問3は、支払停止の認定が明らかなのに記載量多くなってしまった。

評価があればB程度は欲しい。