最高裁判例が令和2年9月30日にあった。

 

事案の流れ(ざっくり)は以下の通りだ。

 

①AB共謀の上、V(被害者)を暴行(第一共同暴行)

②被告人が登場し、ABとの間で、被害者に対して暴行を加えることにつき現場共謀成立

③AB被告人でVを暴行(第二共同暴行)

④傷害結果1、2は、いずれも第一共同暴行によるものか第二共同暴行によるものか不明。被告人が行った暴行(≠第二共同暴行)には、傷害結果1を生じさせる危険はあったものの、傷害結果2を生じさせる危険はなかった。

 

このような事例で、被告人について同時傷害の特例(刑法207条)が①適用されるか②どのように適用されるかについて、原判決・弁護人の主張・本判決で意見が異なった。

 

この事案と似た事案が司法試験某年論文で出題済みである(予備短答平成26年第13問でも出題された)。

 

私は、その論文問題で207適用パターン(本判例の原判決の考え方)と不適用パターン(本判例の弁護人の考え方)の参考答案を作成した。当時は最高裁判例が出ていなかったし、最近の司法試験の出題方式とマッチすると思ったからだ。

論述してみるとわかるが、処理方法はわかっていても、とてつもなく書きにくい問題だったし、いまだに書き方に自信がない。

基本的に行為中心で検討しているのに、207条の論述においては、結果中心になるからだろう。

 

最高裁は、一般的な207条の要件について

①各暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであること

②各暴行が外形的には共同実行に等しいと評価できるような状況において行われたこと,すなわち,同一の機会に行われたものである

こと(「二人以上で暴行を加えて」の解釈だろうか)

を挙げ(平成28年3月24日付け判例参照)、①②が証明された場合、

「更に途中から行為者間に共謀が成立していた事実が認められるからといって,同条が適用できなくなるとする理由はなく,むしろ同条を適用しないとすれば,不合理であって,共謀関係が認められないときとの均衡も失するというべきである。」

ことを理由として、

「他の者が先行して被害者に暴行を加え,これと同一の機会に,後行者が途中から共謀加担したが,被害者の負った傷害が共謀成立後の暴行により生じたものとまでは認められない場合であっても,その傷害を生じさせた者を知ることができないときは,同条の適用により後行者は当該傷害についての責任を免れないと解するのが相当である。」

として適用可能性を肯定した。また、①の要件につき

「上記の場合に同条の適用により後行者に対して当該傷害についての責任を問い得るのは,後行者の加えた暴行が当該傷害を生じさせ得る危険性を有するものであるときに限られると解するのが相当である。」

として、①行為の危険性について後行行為者の単独行為を基準として判断することを示した。これは、行為の危険性について第二共同暴行を基準として判断した原判決と異なる。

 

しかし、この最高裁判例の処理で論文書こうとしたら、どのように書くことになるのだろうか、、

 

⑴ ABによる第一共同暴行と因果関係の認められる傷害結果について処理(傷害結果1、2については因果関係否定)

⑵ AB被告人による第二共同暴行と因果関係認められる傷害結果について処理(傷害結果1・2については因果関係否定)

 

ここまではオーソドックスな処理で足りる。

しかし、この後、AB被告人に傷害結果1・2を帰責できないか、についての論じ方がいまいちわからない。特に、(共謀)共同正犯の処理で傷害結果1・2を帰責できるABについての処理をどうしたらいいかよくわからない。

本判例は、あくまで上記事例における後行者たる被告人についての207条適用について判断した事例判例だから、ABにも207条が適用されるとするのは慎重にならなければ。

 

ア ABについては、第一共同暴行及び第二共同暴行に加わっていた以上、傷害結果1・2の責任を負うこととなる(ABとの関係のみ、第一共同暴行と第二共同暴行を一連の行為とみて、これと傷害結果1・2の因果関係を認めるのだろうか?)。

イ 被告人については、207条の適用により、傷害結果1のみ責任を負う(被告人との関係のみ、AB被告人の全暴行行為を共同実行行為と擬制するのだろうか)

 

うーん、悩ましい。

 

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