昨日はなぎと買い物に行った話。
でも実はその帰りに、なぎと考えの食い違いから
言い合い(と言ってもうちは静か)になった。
買い物も済んだし、お茶でもして帰ろうか…という時、
おやぢから電話がかかってきた。
用件は、4月の2週目あたりに某所のイベントに行きたいが、
デジカメを貸してくれないか?ということ。
それの受け渡しに明日(今日のこと)どこかで待ち合わせて、
使い方を教えて欲しい、美味しい物を食べたいから
どこか店も探しといて…というようなこと。
「そんな事を急に言われても。
その日に行くっていつ決まった?」
「昨日。」
「なら何で昨日言うてくれんかったんよ。
そしたら今日渡せたやんか。
私らかてそんなに暇じゃないんやで。」
そこでは家に帰ってからもう一度電話するって事で
一旦電話を切って。
いつもの事ながら、急に用事を言ってくるおやぢにカチンと
来ながらもなぎと喫茶店へ。
それでも冷静になってくると、やはり何とかしてやろうと
いう気持ちになってくる。
おやぢが病気になって、手術をして…
退院時にははじめは予想していなかったリンパ節への
転移も判明したらしく(ここは本人から直接聞いてない)、
一応、余命宣告なるものがなされた。
私はそれを聞いても普段と変わりないように接してきたけど、
やっぱり出来る事はしておきたいと思うようになった。
実家にいる時はおやぢの言う事なんて、まともに聞いた事
なかったからね。
でもやっぱり咄嗟に用件を言いつけられて、
それも「明日」とか時間的に苦しい条件やと電話してる
私の表情も厳しくなる。
それでも何とか都合つける方法は…と考える。
うちのデジカメは、なぎと一緒にいる時に使うために
買ったもので、その時の支払いはなぎがした。
だから所有者は「なぎ」ということになってる。
私がそれを借りてるという形。
喫茶店で考える私を見てなぎが言った。
「あるもちゃん、やっぱり明日は無理やで。
言いにくいやろうけど、お父さんには
あれはなぎのデジカメで、精密機器を人に貸すのは
なぎが良しとせんから無理って断りな。」
「大体な、あっちにお兄さんもおるわけやんか。
なんで遠いあるもちゃんにばっかり用事が回ってくるん?
あるもちゃんだって仕事も生活もあって、もう大人やで。
普段色々よくしてもらってるお父さんにこういう事を
言うのは心苦しいけど、線引くとこはきっちりせな
あるもちゃんがしんどくなってしまうんやで。」
もう実はその時には私の頭の中では、なぎに頼んで
デジカメを買い取って、それを来週の週末にでも
渡しに行こうかと考えはじめてた。
「なあ、デジカメは私が買い取るって事でええかな?」
「なんでそこまでせなあかんの?」
そこで注文してた物が来たから話は中断。
店を出て駐車場まで歩く。その途中でもなぎに
「応えてあげたい気持ちはわかるけど、
電話を受けた時のあるもちゃんの難しそうな顔見てたら
私だって辛い。
今は簡単に動ける状況じゃないからね。
やっぱりはっきり無理なものは無理って言うべきやと思う。」
こう説得されるも…。
歩きながら涙がボタボタと流れてきた。
私だって日程的に厳しいのはわかってるけど、こっち方面まで
来てまで受け渡しっていうのは、本音のところはカメラが
どうとかじゃなくて、会いたいから…と思ってるんとちゃうん。
おやぢが自分でどこかに行きたいとか、誰かに会いたいって
外へ出ようという気持ちがあるうちが華や…そう思う。
それがあの人の生きる希望になるというなら、
私が出来る事はしてやりたいと思う。
泣きながら歩く私を見てなぎが「何で?」と。
黙ったまま歩いて駐車場に着いて、車に乗ってから
自分の思う事をなぎに話した。
「なぎはお母さんが亡くなってから3年経った今でも
『あの時ああしてやればよかった』とか振り返って、
泣いてる事いっぱいあるやんか。
そんななぎを傍で見てきたし、いざ自分の身内で
こういう事になって、それが自己満足とわかってても
出来る事はしたいなと思うようになった。
演出…って言うたら言葉悪いけど、命が尽きる人への
最期までの道を少しでも満ち足りたものにしてやりたい、
そう思う事っておかしい?」
「おやぢがどうとかそんな事関係ないよ。
もしもの事があった時、私が後悔したくないからするんやよ。
人間の行動理由なんて自己満足のためじゃないん?」
「それって…私に『なんでわかってくれへんの?』って
失望したって事やんね?」
「失望とは違うけど、わかってくれへんのかな?とは思う。
けど、なぎが言う事も第三者的な意見としてもっともやと思う。」
話してる間にうちに到着。
荷物を片付けた後、なぎは私を呼んで自分の膝に座らせて
私の肩に顎を乗せて静かに泣いてた。
「私って度量の狭い女やな…と思うわ。
結局、いくら親しくさせてもらっても、あるもちゃんは
あの家の人で、私は蚊帳の外で。独りなんやなって思った。」
「何、それって嫉妬?」
「お恥ずかしい…よく考えたらそうかも。」
「あんた…アホちゃうん?
私はあんたがお母さんの事でウダウダ言うてても、
それが当然やと思ってたし、仏壇にチーンってしてるのに…」
「あるもちゃんがお父さんに出来る事はしてあげたいって
気持ちはようわかるのよ。
だからあるもちゃんが出来る範囲でしてあげればいい。」
「考えたんやけど、おやぢが行くのは9日とか言うてたから、
そしたら来週末でも間に合う。
これから家に電話して、ぽんちゃん(兄)とこからデジカメを
借りれるか聞いてみと言ってみて、それでもどうしても
あかんかったら、来週、土曜から一泊で私だけデジカメ持って
実家へ行って説明してくる。
ほんまにおやぢが持って行って、それでカメラに不具合が
生じたり、壊れたり…って事になったら、そこで新しいのを
私が買うっていう事でいい?」
「ええよ。」
二人の間では一応決まったから、実家に電話した。
「ぽんちゃんとこにもあるから、いっぺん聞いてみて。」
「何!そうやったんか。そんならええわ。
いっぺん電話して聞いてみるわ!」
どうやら何が何でも私でなければ…でもないのか。
すぐさま電話がかかってくる。
「ぽんちゃんとこのデジカメ、壊れてるらしいわ~。」
後ろから「使い捨てカメラでも綺麗に撮れるって!」と
母の声が聞こえてくる。
「なんやと!そんなものもあるんか!」
「あるよ。知らんかったんかいな?
ただ写したいなら、あれでもいけるのはいける。
けどどうしてもデジカメがいいって言うんなら、こっちも考える。」
「でもな、そのイベントっていつまでやってるんよ?」
「イベント自体はずっとやってるんや。」
「ならゆっくりでもええやんか。別に9日じゃなくても。」
「それがな、13日に定期健診があるんや。
でな、病状があんまり芳しくないからな、この検診で
また病院に戻ってくださいって言われたら行かれへんやんか。
だから焦ってるんや。」
本人から直接こういう事を聞くのは初めてやけど、
前回の検診でもあまり数値はよくないってのは母から
聞いたし、病院に戻れと言われるかも…と言葉にするくらいなら、
自分でもあまりよくない状態やという自覚があるんやろう。
「まあな、詳しい事とか日程は3日に決まるから。
でも使い捨てカメラあるんやったら、それでもええか~。」
「まあ…来週やったらまだ何とか出来るから、
どうしてもって思うんやったら連絡してきたらええわ。
こっちに来る必要もないし、私が一日帰って説明して渡すし。」
「おう。ありがとな~。んじゃまたな~。」
母が後ろで止めてるのが聞こえたから、
使い捨てカメラで済むような気もするけど…
独立して自分の生活を持つ私、あの家の子供でもある私。
なぎの言う事も理解できるし、客観的なまともな意見。
でも二つの間で昨日は気持ちが揺れた夜。


