日曜日、なぎと電話した時のなぎの声。
えらいドスのきいた低い声。
(元々低めの声なんだけどね)
「どしたん?昨日会った時は普通だったのに。
風邪でも引いた?」
「いや~、朝ご飯食べてなあ、横になってたら
うつらうつら寝てもうて。でな、何か胃酸が上がって
来た感触がして、起きたら気分悪いな~って思ってたら
こんな声になっててん。」
日記には書いてなかったんだけど、実はなぎは木曜に
気分が悪くなって、吐いちゃってたのね。
そん時にちょっと強く吐いたみたいで、胃酸で喉を
傷めたみたいなの。
「木曜にちょっと吐いて、それで今日の気分の悪さだから、
喉が胃酸でやられたかな~。ネットで調べたら、結構
そういうのあるみたいだった。」
なぎは女性の「月イチのモノ」が結構重い方。
それで会社を休んだりする事もあるくらい。
月経前症候群の影響で木曜は気分が
悪くなったみたいなの。
「ちょっとあんた、木曜からは吐いたりしてないよね!?」
「ああうん、してないしてない。土曜にあるもちゃんに会った時も
元気だったでしょ?食欲もあったし。ただ、喉の奥が『モコ』って
なってるっていうか、ちょっと引っかかるのよ。」
「うん、まあ確かに土曜は元気だったけどさ。
疲れがたまってるんじゃない?」
「他は元気なんやけどなあ、声だけやねん。」
「なんかさ、その声で話されると脅されてるみたいなんだけど。
すごいドスがきいてるよ。ニューハーフみたい。」
「ニュッ、ニューハーフ!! う~う~う~。」
「でも今日寝たら治ってるって。」
「そうかなあ。喉の奥に何かありそうなら耳鼻科に行った方が…」
まあその夜は、予後観察ということで決着。
そして昨日、お昼休みにメール。
「会社で早速、なぎさん、ニューハーフ?って言われたわ!」
夜の電話。
「やっぱまだ治ってないやんか。昨日よりは少しマシやけど。」
「でしょ?絶対治るってば。」
「あかん!もし土曜までこの調子やったら、耳鼻科に連れてくからね。」
「いややあぁぁぁぁ~~。耳鼻科怖い!
行ったことない!鼻から管突っ込まれるって聞いたもん!」
なぎは病院が大嫌い。
「いつも私には、あるもちゃん一人の身体じゃないんだから…って
言うやんか!だったら、私も安心したいから、このままだったら
ちゃんと診てもらおうよ。
私の行ってる耳鼻科なら、中待合から診察台見えるし、
不安だったら、横についててあげるからさ。」
「いやや…。鼻から管突っ込まれるの…。」
「あのですね、喉を見るのに鼻から管は突っ込まないってば。
私が何度も行ってるの知ってるでしょ!?」
なぎを病院に連れて行くのは一苦労。
でもね、去年の秋に事件があってね。
3連休で私が泊まりに行って帰る夜に食事したの。
その頃は私もまだなぎの家に車で行ってたから、
帰ってからの帰宅報告電話の時のこと。
なぎの声の様子がおかしい。
息が苦しそうっていうか力がないっていうか。
「どうかしたの?」
「あるもちゃんが帰って、帰宅報告待ちながら洗濯物
たたんでたらね、突然目の前が真っ暗になって、
急に吐き気がしてね…。
さっき食べたものがそのまま出ちゃった…」
「えっ!それで大丈夫なん?」
「今はちょっとマシになった。」
「夜更かしとかしたから疲れたんかな?
明日、ダメそうなら会社休んで病院に行くんやで。」
「寝たら治ると思う。」
ちなみに彼女はいつも「寝たら治る」が口癖。
で、翌朝メールしてみた。
「具合はどうでしょう?朝、起きられたんかな?」
「ん…、かっ会社、休むって電話してもうた…。」
「なぬ~~~!じゃあ、絶対に病院に行きな!」
「大丈夫…と思う。」 ←声に力全くなし
「この~~!今から行くっ!」
こいつ、絶対病院には行く気ないなと思ったので…
私はまだ会社に着いてなかったし、上司に連絡。
「あの~、母が体調悪くて…病院に連れて行くので
今日は休みます。」
で、そのまま会社を通り過ぎ…
高速にのってなぎの家に押しかけちゃった。
なぎはそんな調子なのに壁にもたれて洗濯してた。
「あ、こいつぅ、ほんまに来よった…」と言いながらも
だらしなくもたれてくる。
あかん…病院や!
でもその前に何も食べてないみたいだから少し
食べさせよう。
なぎの家には食べる物がなかったし、
私はなぎの家周辺の地理に明るくないし、
おまけになぎは病院には縁のない人。
当然、かかりつけの病院もない。
なぎが仕事帰りにでも寄れて、家から近い病院を
探しがてら食事に出て、雑炊を少し食べさせた。
もうその時点でお昼過ぎ。
小さな医院なら、夕方4時くらいから診察あるはず…
食事に出る前にタウンページで目ぼしいとこを探しといて、
なぎの家の近辺によさそうなとこがないか探す。
ちょうど食事に行く途中によさそうなとこを発見。
彼女はフニャフニャだし、頭のコンパスもない人だから
私の頭にインプット。
食事して帰って来て、その医院に何時から診察か問い合わせる。
案の定16時から。
それまで時間があったから、なぎを横にさせる。
そしたら、急になぎが泣きだした。
「ん?どうしたの?しんどいの?」
「だって…あるもちゃん優しいんやもん。私、おかあちゃんの
病院には何度も付き添ったけど、自分が調子悪い時は
兄姉すら相手にしてもらったことなかったから…。」
「…そうかぁ。でも、今日は私が夜までいるから。
病院もちゃんと連れていくからね。それまで少し眠ろう。」
で、病院で診てもらった。念のため、血液検査もお願いした。
血圧がかなり低かったので、吐き気とかめまいはそのせい
だろうという診断。
そこの医院が親切で、あんまり食欲のないなぎに点滴もしてくれた。
看護士さんが時間がかかるから…って、
私をなぎのベッドに付き添わせてくれた。
結局、血液にも異常はなくて、低血圧からくる症状だと
判明したんだけどね。
それで、その日はなぎが口に入るものを食べさせて、
薬を飲むのを見届けてから、夜になって帰ったの。
私は両親と一緒に住んでるから、多少の問題が起こっても大丈夫。
でもなぎは一戸建てに一人でお父さんやお母さんの仏様を守って
暮らしてるの。
兄姉とは色々と問題があって、法事の時くらいしか連絡してこない。
薄情な兄姉だよ。なぎ一人に全部押し付けて。
私達は結婚できないし、うちの両親にもカムアウトしてないから、
なぎに何かあった時にとっさに対応できない可能性が高い。
なぎに何かあったら誰が私に教えてくれる?
いざとなったら名刺をもらってるから、なぎの会社に連絡して
どうなってるのか尋ねるくらいしか方法がない。
私がいつも持ってるカードケースには緊急連絡先に
自宅となぎの家と携帯の電話番号を書いてある。
もしなぎに何かあったら…
それを考えると心配でたまらなくなる。
だからこれから電話して、ちょっとでもおかしかったら
絶対に耳鼻科に連れていくよ!覚悟しなさい。