レアメタルの「レア」 | ZERO.blog

レアメタルの「レア」

ここ数年でマイナーから超メジャーになった言葉があります。それは「レアメタル」。

ここ数日の中国の輸出制限云々で超メジャーになった言葉は「レアアース」。

レアアースはレアメタルの一部ですが、どちらも共通しているのは「レア」と言う頭文字が付いている事です。


で、まずレアアースの前にレアメタルの事をまとめておきたいわけです。

レアメタルの「レア」は何に起因するのか?大きく4つの理由が挙げられます。


1:そもそも地球上の存在量が少ない
2:鉱石としては偏在している
3:元素としては十分存在するが、材料として使うためには大変なエネルギーが必要
4:副産物として採られる場合が多い


1:そもそも地球上の存在量が少ない
いわゆるクラーク係数が小さいという事です。そもそも存在しないから希少価値が高いという事ですね。レアメタルと言うと、まずこの理由が思い浮かぶと思いますが、実はこういう元素は稀です。何故なら、そもそも希少価値が高い物は希少であるという前提で採られてきたし、使われているからです。その状況が変わらない限り、需給バランスが崩れる事はなく資源危機も起こりません。これは日本が一定量長期的に買い続けている範囲では需給バランスが崩れず安定している石油と同じです。


2:鉱石としての偏在し
量はともかく、実用的な鉱石として存在する場所が少ないという事です。金や白金が代表例ですが、この二元素は実用的な鉱山が南アフリカと中国に限定されます。この実用的と言うのは、十分な量が含まれる鉱石が存在する、と言う意味です。どれくらいかの含有量かと言うと、数十ppm。これは1gの金を取るのに数トンの鉱石を掘る必要がある量ですが、それで十分実用性があるのです。そのような鉱石がまとまってある地域は今のところ、南アフリカと中国だけです。ちなみに金の生産量は長い間南アでしたが、最近中国に抜かれましたね。


3:元素としては十分存在するが、材料として使うためには大変なエネルギーが必要
例えばチタンやシリコンがそうですが、存在量は豊富でどこにでもあるのですが、材料にするには膨大なエネルギーとプロセスが必要になるという障壁があるのです。もう少し詳しく言うと、鉱石は主に酸化物で複数の元素が共存していますが、この複数の元素を分離し、純度を高くして金属にするには、いくつものプロセスで大量の電力、熱、酸、アルカリが必要となるのです。このエネルギーと純度を上げる技術と言うのが高い障壁なのです。


4:副産物として採られる場合が多い
レアメタルはそもそも主産物ではないの物が多いです。例えば工具や磁石や電池に使われるコバルトは銅やニッケルの副産物で、コバルト鉱山やコバルト鉱石は存在しません。液晶TVの透明電極に用いられるインジウムは、亜鉛の副産物です。こういった元素は主産物の生産に左右されます。またそもそも主産物の純度を上げる過程で除去される元素ですから、多くの副産物の回収率は低いのが実情で、この回収率の低さがレアメタルの希少価値を更に上げる一因に成っています。


経産省は、レアメタルとしてレアアースを含む30元素、31種類を定義しています。ただしこれには貴金属が含まれない、レアアースは一群として扱われるなど、不備が目立つのも事実です。実際、以前経産省非鉄金属局課長殿の講演を聞いた際、これらはたたき台なので絶対の基準ではない、今後議論したいとのコメントがありました。


別の軸として上記四条件があり、この四つの理由のいずれかに当てはまるとレアメタルと言ってよいのではないか、そういう主張がアカデミアの一部にあります。そうすると、実はほとんどの金属元素はこのどれかに当てはまります。


「レアメタル」と対をなすのは「ベースメタル」ですが、こちらは以下の5元素がとされています。

鉄、亜鉛、アルミ、銅、鉛

これらは「レアメタル」の上記四条件を満たさない稀な材料です。これに含まれない金属元素は全て基本的に「レアメタル」とし、後は上記四条件をどのくらい満たすかを問う方が、レアメタルを定義する際には妥当でしょう。


例えば、ニッケルはレアメタルの代表格ですが、ニッケル鉱山があり、それはいくつかの地域にまたがっていて、工業的な精錬技術も経済的に確立していて、主産物ですので、むしろベースメタルに近いと言えます。

一方今後も工業的に価値が高まるであろうレアメタルの代表、コバルトについては、鉱石がニッケルや銅の副産物としてしか存在せず、生産量も生産地も主産物によって制限される事から、典型的なレアメタルと言えます。


例えると、レアメタルというのはパン屋で売っている「パンの耳」です。パン屋の主な収益源は食パンやおかずパン、菓子パンですから、それが売れていれば良い。食パンや菓子パン、それが主産物です。パンの耳も捨てるくらいなら、一部の人達にとってパンの耳は価値があるので、原価に近い安値でさばいていた。これが副産物のレアメタルです。これが20世紀の状況でした。

しかし最近状況は変わりました。レアメタルの価値の方が上がってしまった。それは、レアメタを使う事によって製品特性を向上させた製品が予想以上に普及し、需給バランスが崩れたからです。電気自動車の普及によって、ディスプロシウムの需要は80年代と比較して二桁上がります。正にコップの中の恐竜。それ故、今ではパンの耳の方が価値が出てしまった。今までは安値でパンの耳をもらったり買えたりしていた人たちは、希少価値のあるパンの耳を仕入れる為にパン屋の言うなりの価格で買わなければならない状態です。何しろ、その人たちが行けるパン屋はこの世に数が限られているからです。レアメタルが採れる国は限られることと同じです。

一方で、パンが作られる限りパンの耳は出ます。無くなることはありません。これはレアメタルも同じで、実は枯渇する危険はまずありません。レアメタルの「レア」は石油危機のように枯渇が問題になっているわけではないのは重要な点です。

例えば希少性が高く枯渇の危機が言われたインジウムですら30年は持つのに、その主産物である亜鉛のは20年程度で枯渇する計算に成っています。つまりベースメタルの方が先に枯渇するのです。

レアメタルの「レア」は枯渇とは無縁で、鉱石や生産の偏在によって生じる、という点が重要です。



そのレアメタルの中でも最近資源としての価値が急上昇しているのが、最近中国が輸出制限をするしないで話題に成った「レアアース」です。

またレアメタル資源対策として、「省レアメタル/レアメタルレス材料」開発を国が主導していますし、資源リサイクル研究も盛んです。

この二点については、別の機会にまとめるとします。