30年
昨日は面白いデータを見つけました。
1980年以降の一次産品と最終製品価格動向の比較データです。1980年といえば、石油ショック以降の狂乱物価が落ち着いて先進国の経済成長が軌道に乗った時期で、日本が経済大国としての地位を確立した頃です。
1980年を基準年とすると、2005年までに製品価格、これをCPIベースで見ると、2.5倍に上昇しています。一方で一次産品価格、これを商品市況ベースで見ると、2000年まで10%程度しか上昇していないのです。勿論その後急上昇し、最近では製品価格同等の2.5倍のラインを超えるところまで来ています。
この情報だけでもいくつかのことが分かりますが、製品価格ベース以上に一次産品価格が上がり続けることはまず無いでしょう。一方で世界的な需要拡大をベースにした一次産品価格上昇は続く、となると、結論は、次にくるのは製品価格の上昇、つまりインフレということに成ります。
今の状況は確かに1970年代前半とよく似ています。それまで貧しかった日本やドイツが豊かになり始めた。それに伴って一次産品が不足する。
この頃、原油は1バレル1US$程度だったのが4US$迄あがりました。近年では、20US$程度だったのが100US$弱。どちらも4倍程度。当時は日独、今ではBRICsに代表されるアジア諸国の中で豊かになる人が増えている。このことを背景に、一次産品需要は確かに急激に増加するでしょう。しかも、今でも中国には13億人、インドには10億人を超える人が居て、その8割程度は豊かになることを待ち望んでいる人たちです。ロシアにもベトナムにもブラジルにもそういう人たちが居る。今後も、豊かになっていく人たちの増加は一次産品価格の下方硬直性の高さを支えるでしょう。
企業の収益性の視点から見ると、80年以降、一次産品価格が停滞しているのに製品価格が上がって行ったのですから、労務費の上昇以上の企業努力は必要なかったわけです。つまり、勝手に利益が上がる社会情勢だったのです。
まずそのめっきが剥がれたのはバブル崩壊による国内の経済成長率の鈍化です。上がるはずの製品価格が上がらなくなった。その背景には中国等の低賃金諸国での製造業拡大があります。しかしそれは第一の波に過ぎず、次に来たのが一次産品価格の上昇です。第一の波に人員整理で対処したのは理解できます。しかし、一次産品価格上昇が利益圧迫の要因になっている状況において、その対策として人件費見直しをするのは理解できません。原因と対応が明らかに間違っています。収益圧迫の要因は高い労働分配率という固定観念が、経営者層にはあるのかもしれません。
しかし、では20世紀に高い利益率を誇ったのは本当にその体制や技術力ゆえだったのか、そこは見直しが必要だと思います。つまり、原料価格は上がらない製品価格は上がって行く、労務費負担の増加はあるにしろ、その部分のマージンは自動的に企業に入っていたはずなのです。いまはそのマージンが無くなっていっている。逆に言えば、本当の利益が試されているわけです。
今の状況は1970年以降に似ていると書きましたが、ではその頃経済大国で今それなりに発展していると思われる国、いわゆる欧米諸国の当時の対応は、参考になるのでしょうか。つまり、第三次産業、金融とサービス産業の拡大、さらに言えば高級ブランド化です。
少なくとも高級ブランド化に関しては、私は否定的です。というのも、例えば自動車、家電といった日本メーカの野一部に確かにブランドは存在します。では、今の日本で欧米メーカーのブランドは残っているか。ごく少量の金持ちの間だけのかなりニッチな市場です。そのニッチな市場で一億人の国民が暮していけるか?
もう一点、それらメーカーはセットメーカーに過ぎず、実際に中に組み込まれている物の大半を辿れば中小企業で作られています。しかし、それらの中小企業で高い収益性の商売はしていません。たとえ技術があったとしても、です。ごく一部、日本で数十社といった企業は中小企業でもブランド化されているでしょうが、それで全体が底上げされるわけではない。国が活力を得る為には、ブランド化ではない方策が必要です。
第三次産業の拡大、これはそれなりに効果があると思います。ただし、国内市場が停滞する以上海外に出るしかない。その素地はあるのか、やはり国内経済の拡大も必要ではないか、という疑問は残ります。
日本は、やはり技術を生み出し広げる事で国が活性化するのではないかと思います。今、その対象が国内ではない、弟子が、日本人ではない、というだけではないということではないでしょうか。勿論、日本人の中にもそういうものを身につけ、、世界に広げる人が増えていくのでしょう。
唯一ついえるのは、一次産品価格が上がり、最品価格が上がるということは、経済力というか、購買力が問われます。つまり、格差は世界的に広がる方向にあるということです。国内で格差問題が議論されますが、それは間違いで、世界の大きな流れの中にある日本、という視点が大事だと思います。
そしてその基本は、製造業の実力、過去に利益を上げて来た理由とこれからどう上げて行くかにかかっていると、私は考えるのです。