水中からくぐもった月の光が揺らいでるのが見える

ツィンは既にアンダーパンツまで脱ぎ捨てて、全裸で月光を映し出してる海と戯れている

俺にも脱げと言って来るが、人間である証拠の最後の一枚を脱ぐわけにもいかず、断る俺

酔っ払ってフルムーンの夜に月光に照らされた海の中で、中国人と体を冷やした思い出は、旅が終わっても忘れることはないだろう

結局俺たちのバイクは再修理が終わった後は快調な走りを見せたが、途中で立ち寄ったガソリンスタンドで今度はタンクの蓋が開かなくなって再度の長時間立ち往生

たまたま隣が修理屋だったので、タンクを破壊してもらい、ガソリンを入れることは出来たのだが

俺は前回のトラブルの時に、ツィンにもう一回トラブルがバイクに起きたらリタイアすると言ってある

正直俺も度重なるトラブルに参っていたのは確かだし、ツィンの予定を俺たちの都合でこれ以上狂わせるわけにもいかないと思ったのだ

その上、このタイミングでレナちゃんの具合が悪くなり熱が出たのである

2人で相談した上、もはや選択の余地はなかった

俺はすぐにツィンにリタイアする旨を伝えた

レナちゃんとはここで別れて一人でツィンについていく事も考えたが

実は俺のビザも滞在期間が迫っていて、バイクの故障のせいで数日単位で旅程が狂うと、不法滞在者となってしまう

だから、ここで彼と別れる選択をした

ツィンは文句の一つも言わずに快く受け入れてくれた

結局トラブルに次ぐトラブルで、この日は予定の半分もこなせずに、ガソリンスタンドの店員が連れて行ってくれた、ソンミ村の近くの海沿いのモーテルで宿をとることにしたのである

次の日3人でソンミ村跡地を訪れて、クォンガイの街で別れる。そんな約束をした

俺が知らずに泊まった中国人宿がきっかけだった

前にオランダ人の友達に、なんでそんなに日本人を避けるの?って言われたことがある

別に避けてる訳じゃないけど、日本人宿はあまり泊まらないようにしている

少なくとも日本人宿ばかり泊まっていたら、ツィンも含めた今までの外国人達との出会いはきっと無かった

世界中どこに言っても日本人がいるならそれでもいいけど、これから行く所には日本人がいないとこなんて幾らでもある

だからいろんな国の人とコミュニケーションを取れる力が必要な気がする

とくに印象の悪かった中国人と旅を出来たのは、食わず嫌いを払拭するいいきっかけともなった

ツィン自身も、行くところ、所々でベトナム人の中国人に対する印象が悪いから、自分が中国人である事は黙ってて欲しいと言われたことがある

自分の祖国のお国柄のせいで、なんの理由もなく嫌われて苦労する

そんな礼儀正しい中国人の苦労や気持ちなんて俺たち日本人には到底理解できないだろう


世界一周ふらふら軌~4ヶ月目~

月の光を映し出した一本の光のラインが、ゆらゆらと揺れながら暗闇で見えなくなった地平線の彼方まで続いているような気がした