事の発端は屋久島 以来4ヶ月以上登山をしてこなかった俺の山が恋しくなったとの思い付きからだった

これで日本の山も最後になるかもしれないから、最後は仲間と愉快に楽しく登山できればと思って、暇な仲間を集めた

今回のメンバーは、亭主の趣味に付き合うのは嫁の義務。登山暦は3年くらいで、つるぎ岳などの経験もあり岩場にも慣れ、装備も完璧。

最近職を失い婚約者に家を追い出され、昼間からイイチコを呑みコンビニにエロ本を買いに行くのが趣味の絶賛無職中のツルヤやと、佐川急便で足腰を鍛えられたやはり無職で変態のテツヤ

この二人は登山は初めてで、装備はスニーカーにスウェットとという非常に貧弱なものだったが、カッパと水だけ用意してくれればとOKをだした

俺と友人二人を合わせて人々は無職の三賢者と呼ぶのである

俺は二人の装備と経験を加味して熟考した結果、行き先は谷川岳のバリエーションコースを選んだ

谷川岳と言えば、昔から魔の山と呼ばれていて、今まで800人以上の死者を出してきた恐ろしい山である

急な気象変更、落石、滑落、鉄砲水、雪崩と山でのアクシデントが全て盛り込まれた、高級ホテルのバイキングのような面白い山である

とはいえ、帰らぬ人となるのは、一般の登山というよりはロッククライングや冬山の登山が殆どで、一般登山道でいえば、初心者で登頂できるような楽なコースもたくさんあるのが谷川岳だ

しかし、俺が今回選んだのは、谷川岳の中でも最難関といわれる中芝新道を含むバリエーションコースである

俺は証明したかったのだ

最近の登山者の装備は過剰すぎる

安全面を重視するのは結構だが、登山はサバイバルの一種なのだ

たとえ装備はしょぼくても、気合と折れない心さえあれば出来ない事はないと、友人を使って証明したかったのだ

俺はツルヤに全行程が7時間くらいの登山と伝え、つるやはてつやに往復5時間くらいの登山と伝え、このように伝言ゲームの様に少しづつ勘違いした情報が伝わったまま二人の参加が決定したのである

長丁場が予想される今回の山行のため、俺達4人は前日から谷川岳の麓に向かい、前夜泊をして早朝立つことにした

俺の車はベルファイアだから、二人には車の中で寝てもらい、俺たち夫婦は車の横にテントを張って次の日に備えた

次の日待っている地獄も知らず、満天の星空の下で、夏の川原で遊ぶ子供のようにはしゃぐ二人を見ながら、俺はほくそ笑むのをやめる事が出来なかった

前置きが長くなってしまったので、続きは次回へ