マイスコア:90

 

テーマ:重度障がい者の心の内側の吐露

 

芥川賞受賞作である。

 

序中盤は90。終盤は60。平均して80ぐらいというのが点数の内訳である。己の経験に即した小説だったため、非常に読み応えがあった。しかし、最後の謎の妄想がよくわからなかった。

 

ただ、一つ言えるのは、一般的に不幸と言われている人間の人生を妄想で語ってはいるので、一般人の人並な苦労な経験を望んでいる点にある。

 

感想をかいているうちに、終盤の重大な事実に気づいたので、点数を90にアップした。

 

子供を宿して、中絶して子供を殺したいという謎の欲望を持つ井沢。その望みを1億5500万と引き換えに叶えようとした。

 

この女性は、妊娠して中絶するという欲望を健常者になっていても、もっていたのだろうか。自分はもっていたと感じられる。

 

それとも、重度障がい者になってしまった影響で、歪んだ欲望が産み出されたのか? 真相は闇の中である。

 

苦労を綴るヤフコメ民に対し、「本当の苦労を知らないくせに」と愚痴る井沢。自分も重度障がい者だったら同じように愚痴るだろう。

 

そして、もっとこの物語に感情移入し、この作品を神格化していただろう。

 

結局、人間はポジショントークしかできないし、自分の立場や境遇からでしかものを考えることが不可能だという結論に行き着いた。重度障がい者に対して可哀想という感情を持つことはあっても、健常者からしたら真に共感することはできないのである。当たり前の事実だ。

 

その中でも、人は人に対し、気遣いをして、人の気持ちを考えながら発言をしなければならないのである。そう考えると、人間関係が難しいというのは当たり前のことなのである。

 

そういう事実を胸の隅っこにしまいこんで、なんとなく生きていたら、少しは心を楽にし生活を営むことができると感じた。