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テーマ:徳永の自己問答と神谷という名の幻想

 

面白い。文章がかなりきれいであり、自分のことをしっかりと客観的に考察しており、他人に対する考察も素晴らしい。

 

徳永は神谷という人物に憧れを抱いており、そういう人物になりきれない自分にショックを受けている場面も存在する。ただ、物語終盤で神谷の致命的な欠点が映し出される。

 

胸にシリコンを入れているのがわかったシーンは特に印象的である。私自身、あこがれている人物がいるのだが、その人物は致命的な欠点を持っている人物でもある。その欠点とは、神谷と似ている部分がある。

 

つまり、人間関係を構築する上で、媚びなかったり、うまく立ち回ることができなかったりする点である。

 

又吉直樹という人物は、何事もなくスムーズに生きてきたように一見見えるが、そうではない。そういった当たり前の事実すらもわからないほど、人間というのは自分が一番苦労をしているのだと思いたいのかもしれない。

 

みんな、人並みに悩んで、模索しながら生きているのである。いきずらくなるほど、幻想が肥大化するという表現は言い得て妙である。

 

つらい状況であるからこそ、神谷という名の幻想に徳永はすがりたかったのだと感じた。

 

神谷の誹謗中傷の意見については、反対である。同じ人間から発せられた言葉だとしても、真正面に受け止める必要性などないと考える。

 

彼らは、ただストレス発散のために当たり散らしているに過ぎないからである。