監督 スチュアート・ローゼンバーグ
脚本 ドン・ピアース(英語版)、フランク・ピアソン
製作国 アメリカ合衆国
テーマ:ポジティブでいることの大切さ
面白い映画だった。
ルークの掴みどころのない性格が、みんなを魅了した。なぜ脱獄を試みるのかはかなり謎ではあるが、母親が死んだのがきっかけだったと感じる。
ドラグラインは初め、ルークに対しきつく当たっていたが、ルークの人柄により、みんなの仲が深まっていった。ルークが撃たれた際、ドラグラインはボスを絞め殺そうとしていたので、相当ルークを気に入っていたことがわかる。
「ルークが世界を変える」ということをドラグラインは示している。全くその通りだと思う。
実際にルークみたいな男に日本を引っ張ってもらいたい。
ルークは器物損壊罪で収容されているので、罪は軽いといえる。ルークが刑務所内で力を持っていたからこそ懲罰房に入れられたのだ。しかし、これが脱獄のきっかけとなってしまう。
脱獄してからは、かなりいじめまがいの行為をされている。土を掘ったり、埋めたりを繰り返されたり、臭くて美味しくないご飯を沢山入れられたりしていた。それでも、ルークはいつも笑っていた。ルークは最高の男である。感動した。
ルークは上の立場である刑務所所長に皮肉を言ったりしていた男だったので嫌われていた。この部分は反面教師として学ぶべきである。ボスがルークを撃ち殺そうとしたのは、ボスにも冗談を言っていた影響であろう。上司に反抗すると、上司からは嫌われるが、同僚からはすごく好かれることがわかった。私も似たような経験をしたことがあるので、リアルな描写であるといえる。
しかし、ルークはきつい状況でもめげずにずっと笑顔を保ち続けていた。
ルークが馬鹿みたいにゆで卵を短時間で50個食べたりするのも良い思い出かもしれない。傍から見たら、ゆで卵を食べまくるシーンはなんでもないような思い出かもしれないが、ルーク本人にとっては大切な思い出であろう。ルークが最後どうなったのかは気になるところである。ルークは軽罪なので収容期間は2年である。だから、脱獄する必要はない。しかし、ルークはフロリダの刑務所のルールが気に入らなかったのであろう。損得ではなく、自分の信念を大事にし行動したのだ。しかし、ルークはもう少しずる賢く打算的に生きる方が得だと感じる。
臭くて美味しくないご飯をみんなが協力して食べてくれるシーンも好きである。映画『ショーシャンクの空に』でのビールのシーンを思い出した。人々の絆を感じる良いシーンである。
ルークは戦争で人を殺している。ベトナム戦争に参加していたらしい。戦争での経験が、どんな状況になっても諦めない笑顔のルークが形作られたと思う。そして、ルークは飄々としている。
ベトナム戦争から帰ってきたという繋がりでいくと、映画『タクシードライバー』が挙げられる。ベトナム戦争をきっかけに狂人と化した男の物語である。よって、映画『暴力脱獄』と映画『タクシードライバー』は対極の物語であるといえる。
辛い経験をしたせいで、性格が悪くなってしまい、そのまま狂人と化すか。(映画『タクシードライバー』)
辛い経験の中でも、常に笑顔を心がけ、己の信念に従い行動する魅力的な人間になるか。(映画『暴力脱獄』)
答えは自明であろう。
どんなに辛い経験でも本人の捉え方次第でいかようにもなる。そう思わされた。


