個人的にかなり好きな巻です。名シーンがたくさん登場する巻でもあります。

 

永井圭のセリフとして次のようなものがあります。

 

「余分な感情は状況を悪化させる 情にすがったって窮地は好転しない 本当は昔からわかってたさ 心に流されれば身を滅ぼす

 

過去の経験からそう結論づけています。元々合理的な性格でしたが、このシーンでより一層その性格に磨きをかけたシーンでもあります。

 

平沢と永井圭の会話シーンもかなりいいです。平沢はタイプとして永井圭と似ていると思います。


だからこそ、永井圭が実は寂しいという感情を持っていることに気づいたのです。永井圭は「自分の性格がこのままでいいのか」という疑念を抱いていました。


それに対し、平沢はこう言います。

 

「お前はそれでいい」

 

最高の賛辞です。このセリフは永井圭にとって救いだったでしょう。

 

その後、下村泉の過去エピソードへと移ります。彼氏にも裏切られ、義父にも裏切られます。


母親は最後の最後で泉への思いが再燃し義父を殺しました。

 

「母さん 今度は最後まで逃げない やり直してみせるから」

 

そのセリフとともに第二の人生を歩むことになります。


みなさんも苦労はしているでしょうが、下村泉ほど苦労している人間はなかなかいないのではないでしょうか。下村泉を見習って私も強く生きたいものです。

 

ラストフェーズでは、琴吹と海斗のシーンへと移ります。琴吹の過去を匂わすセリフが何箇所か出てくるのですが、結局琴吹の過去は明らかにされません。


琴吹は本巻が最後の登場となります。そういったところが妙にリアルです。


現実世界でもつらい過去を匂わす人はいますが、その過去を全て告白する人はなかなかいません。

 

琴吹はかなりポーカーフェイスであり、普通の人間なら怒る場面でも平静を保っています。感情のコントロールがかなりうまいと思います。


さらに、暴行してくる相手に対し煽るあたり、かなり根性が座っています。

 

海斗も損得では決して動かず、「こうしたい」という自分の思いに対し素直に行動を移しています。

 

そして、作中きっての名シーンがラストに登場します。

 

「もしもだ もしもこの先 永井 圭に何かあって この クソみたいな所から出たい時は 俺に言え」

 

「一度だけ この壁を超えさせてやる」

 

このセリフとともに、琴吹は羽の生えたIBMを出現させます。かっこよすぎます。


琴吹が羽の生えたIBMを保有している事実も素晴らしいです。

 

ただひたすらにかっこいい巻でした。