監督 宮崎駿
脚本 宮崎駿
原作 角野栄子
『魔女の宅急便』(福音館書店刊)

テーマ:成長物語

かなり良い物語でした。魔法が使えたり使えなかったりすることによって、キキの心理描写が表現されています。トンボがほかの女の子と話したことによる嫉妬やニシンのパイを届けるものの孫娘に嫌がられた際、魔法が使えなくなっています。我々人間は魔法が使えないですが、キキと似たような状況に陥ることはあるのではないでしょうか。誰かに対して嫉妬をしたり、嫌なことを言われた際、落ち込み、通常の自分ではいられない時があります。その状態を本作では、魔法が使えるか使えないかで分かりやすく表現しています。キキと初対面で関わる人にとっては、明るくて良い子で、いつも幸せそうという印象を抱くでしょう。ただ、キキ本人からしたら、いろいろな心の動きが内部で起こっており、時には傷ついたりしています。つまり、我々が日々接している人間の印象というのは、その人の表層の部分でしかないのです。キキは人から嫌な態度をとられても、それをスルーします。性格の良さが伺えます。対するジジは文句を口に出し、ストレスを発散します。ジジというキャラは素直なので、嫌いではないです。キキは、最終的にほうきを失ったり、ジジと話せなくなったりと、失うものもありましたが、同時に魔女の旅で得た経験というものは素晴らしいものです。人の人生でも同じことが言えると思います。失うものもあれば、得たものもある。人間は悲観的になりやすいので、少しでも自分の得たものに注目することが重要なのではないでしょうか?