草薙龍瞬 (著)

出版社:KADOKAWA/中経出版

テーマ:自分の心を観察する

とても素晴らしい本でした。筆者が一貫して伝えているメッセージは、「不快な反応をしない」ということです。どうしても人生の中で、苛立つことがあったり、ストレスが溜まっている状態のときは、悪口や愚痴を吐いたり、時には物に当たることもあります。そういった不快な反応をやめようというのが本書の主張です。かといって、今すぐに不快な反応をきっぱりやめるということが簡単にできたら、本書をそもそも読んでいません。不快な反応をしないようにするために、まず自分の心の中身を変えていこうと筆者は発言しています。「心の半分を相手への理解に、もう半分を自分の内側に目を向けろ」という意味合いのメッセージを残しています。我々はあまりにも外側に目を向けすぎではないでしょうか?数多くの人々はTwitterやInstagramなどのSNSを使用して、「こいつは良い」「こいつは悪い」などの判断を無意識にしています。そもそも判断することをするなと筆者は語っています。確かに、自分の中で人を判断すると、優越感を感じます。ただ、その一時の優越感は果たして有意義でしょうか?自分の位置は全く変わっていません。どんなに自分が美人やイケメンで、金を持っていて、才能に溢れている天才でも、上には上がいます。逆も然りで、自分のある能力がどれだけ低くても、下には下がいます。人と比べても、上と比べたら、劣等感に苛まれ、自分が惨めになり、下と比べたら、つかの間の安心感だけ手に入ることによって、自己成長が全く望めません。しかも、人と比較して相手に注目することによって、自分の成長が見えなくなります。これは、すごく勿体ないことです。自己成長することへの喜びを他人と比較することによって得られないのです。現代社会は競争社会です。否が応にも、人と比較され、他人に評価されます。当たり前ですが、一個人の力で競争社会を変えることはできません。だからこそ、競争社会の中でどう自分が向き合っていくのかがキーポイントになってくるのではないでしょうか?心が不快な方向に動くことは当たり前のことで、その上で、それ以上不快な心の動きが起こらないように、心を見張ることが重要だと本書で主張されています。