今までの音楽教室の概念を一変~RENEWカレッジ第2回「音楽教室でメシを食う」 | Cecilia's Diary

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「聖セシリア」は、音楽の守護聖人。これにならって、音楽をはじめとする芸術や
伝統文化などを楽しみつつ、毎日を生き生きと過ごしている様子をつづります。
ライフワークとしてコーチングも勉強中。

「音楽と共に生きる」を再定義するための学びの場、RENEW COLLAGEに参加してきました。テーマは「音楽教室でメシを食う」。ゲストは、「花まるメソッド音の森」代表の笹森壮大さん。

 

https://renew-college-2.peatix.com/view

 

笹森さんは、音高、音大のチェロ科を卒業後、留学をされたあと、帰国して「革命的な音楽教育の場をつくる」ことを目的に、「花まるメソッド音の森」を立ち上げ、5年で生徒数が1000人ほどに増えているそうです。

 

そもそも本人がチェロを始めるきっかけは、とある音楽教室。最初はヴァイオリンを習っていたそうですが、ほかの生徒のレッスンの最中にゴロンと床に寝転んでしまい、「ほかの生徒のレッスン中もちゃんと聴いていないといけない」と先生に怒られてしまったそう。それで、隣でレッスンしていたチェロの先生のところに行ったら、寝転んでいても何も怒られなかったことから、チェロを始めたとのこと。

 

子どものころ、ピアノなどの音楽教室に通っていて途中でやめてしまった人の多くの理由が、「練習が大変」「先生が厳しすぎる」といったこと。音楽とは「音を楽しむ」ものであるはずなので、その入り口のところで「楽しくないもの」「つまらないもの」となってしまって興味をもてなくなることが少なくありません。

 

お話の中でも、「先生が厳しくて音楽をやめたら、その責任は誰がとってくれるんですか?」という笹森さんの強い発言がありました。笹森さん自身の原体験自体が、今の「花まるメソッド音の森」のコンセプトにつながっているようです。

 

また、音高に入学した当時の家庭の事情により、音楽で食べていく必要が生じたことも、のちの「花まるメソッド音の森」立ち上げにつながっていきます。自分自身の音楽をやるためにも自分の時給を上げなければならない。音楽を続けるためにもお金を稼ぐ必要がある。そこから音楽の仕事で食っていけるための音楽教室として、「花まるメソッド音の森」を立ち上げたそうです。

 

既存の大手音楽教室の講師であっても、そのほとんどが委託業務で、生徒の数による歩合制をとっているところを、この「花まるメソッド音の森」は、正社員として講師を雇っているそう。ここで働くことはまさに「音楽で食っていく」ことになるのです。

 

音楽教室を立ち上げるにあたって、笹森さんがまずやったこと。それは、学習塾で仕事をすることだったそうです。

今まで通りの音楽教室経営をしても先が見えない。楽器を習わせる保護者たちは、なんらかの実利に結びつく習い事をさせたいと思っているので、そこのフォーカスさせなければならない。

また子どもたちの主軸にあるのは勉強。たとえば、小学校4年生くらいから算数が急激に難しくなり、その分勉強時間が長くなり、おのずと習い事にかける時間が少なくなる。そういった子どもたちの学習状況も鑑みながら、音楽をやることは楽しいという音楽に対する価値観を見出してもらうためにも、まず学習塾に入り、実際に子どもたちに勉強を教えることを3年間されたそうです。

この視点も、従来の私たちにはなかった視点で、目からウロコでした。

 

この「花まるメソッド音の森」では、今の音楽教育の問題点を改善するための画期的な指導法が行われています。

 

まず子どもたちに教えるための教材。今、新しい教材などもたくさん出始めていますが、日本の音楽を教えるための教材は、とても古くてなかなか改訂が進んでいません。なぜなら、教材をつくるのに莫大な費用がかかるわりに、償却できないから。つまり、多くの費用をかけたわりには実入りが少ないということ。だから、なかなか改訂できないのだそう。

 

そして、今ある教材は、正直、幼児の発達に合わせた教材になっていないことが多いのだそう。

たとえば、幼児は五線譜の線上にある音だけならわかるけれど、線と間の音が混じると混乱するとか、そもそも手指の筋力コントロールができず、大きな丸しか書けないのに、子どもたちに書かせる五線譜が小さすぎたり。

こういった問題を解消するために、「花まるメソッド音の森」では、独自に音楽教材を開発しているのだそうです。

 

ちょうど勉強が難しくなり、勉強する時間が長くなって、楽器の練習時間が短くなるのに、練習する曲の難易度が高くなってしまって、子どもたちが音楽を続けられなくなってしまう最大の理由は、譜読みに時間がかかるとか、初見の力が足りないといったこと。つまり、自分で音楽を読み解く力が弱いので、その分時間がかかってしまって、練習することがつまらなくなったり、つらいものになってしまう。

「花まるメソッド音の森」では、独自の音楽教材を使うことで、自分で音楽を読み解く力をつけ、難易度の高い曲になっても、ある程度の時間で、ある意味効率的に練習できるような力を持ってもらい、音楽を長く続けてもらうことが目的なのです。だいたいその力を身につけるのに3年間を費やすのだとか。

 

そして、何より大事なクラシック音楽のリズム感や様式感を学ぶために、ヨーロッパ各国の民族音楽を集めて、それを原語で歌うこともやっているそう。音楽に親しむために日本のわらべ歌を歌うこともよいのですが、西洋のクラシック音楽とはリズム感も様式も音階も違うもの。たとえ言語がわからなくても、子どもはすんなり原語の歌詞を歌うことができるので、ヨーロッパの民族音楽を取り入れているそうです。ここも視点が新しいです。

 

教材だけではなく、子どもたちの指導の仕方にも、秘密がありました。子どもは、感覚的に時間を巻き戻されることを嫌うらしく、同じフレーズを練習する際に先生はつい「もう1回弾いてみよう」と言ってしまいますが、これはNGワードだそう。同じことをやらせるのであっても、時間軸が先に進んでいるような感覚にさせることが大事なので、「じゃあ今度は」とか「次はレベルアップして」といった言葉を使って、練習させることが大切なのだそうです。私も、ピアノ教師時代「もう1回」って何度言ったからわかりません。この言葉がNGワードだったというのは、驚きでした。

 

子どもたちに指導する際の声がけについても、日々講師の間で研究を欠かさず、その日行ったレッスンの内容をすべて言葉に書き起こし、講師同士で振り返りをするそうです。

 

講師に向いているのは、なによりコミュニケーション能力が高い人。社会のほとんどはコミュニケーションで成り立っているものなので、どんなに楽器の演奏能力が高くても、楽器演奏だけやってきました、というような人では務まらないとのことでした。そして、子どもに対して発信していくので、明るく、気迫のある人がいいそうです。

 

笹森さんが今やっていることの結果は、今習いにきている子どもたちが成長する15~20年後に現れるもので、今はまだわからない状態。だからこそ信念をもってぶつかっていくのだという笹森さんの力強い言葉に、その決意と堅い信念が見られました。

 

子どもの音楽教育に対して、ここまでの熱意と新年と情熱を持っている人を、まざまざと間近で見て、かつてピアノ教師だったときの自分がここまでの強い思いを持っていなかったことを恥ずかしく思いました。音楽教育ということに対するいろいろなヒントをいただいた、有益な時間となりました。

 

こんなにも情熱をもった人が育てた子どもたちが、どんなふうに自分の音楽をつくりだしていくのか、とても楽しみです。