実は周到に練られた復讐だった~手紙は憶えている | Cecilia's Diary

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「聖セシリア」は、音楽の守護聖人。これにならって、音楽をはじめとする芸術や
伝統文化などを楽しみつつ、毎日を生き生きと過ごしている様子をつづります。
ライフワークとしてコーチングも勉強中。

ワーグナーの曲がピアノで流れる、ということだけで

観に行ってしまった映画「手紙は憶えている」。

 

妻ルースを亡くし、自身の記憶もあいまいになっている90歳(!)の男性、

ゼヴが、同じ施設にいるマックスとともにかつてアウシュヴィッツ収容所で

自分たちの家族を殺した元ドイツ兵に復讐をしようとする

シリアスなストーリーです.

 

マックスは頭ははっきりしているけれど、車いす生活で

出歩くことができない.

彼が、身分を偽ってアメリカで生きている元ドイツ兵の候補

4人を選びだし、彼らの元を訪ねる手はずをすべて整える代わりに

ゼヴが実際に探す旅に出まず.

 

その4人の候補を探すなかで、主人公のゼヴがピアノを2回演奏する

シーンが出てきます.

 

一度目は、2人目の候補が入院している病院のピアノで、

メンデルスゾーンの作品を演奏します.

そのときはちょっとおぼつかない感じで、記憶を呼び戻しながら演奏します.

 

そして、二度目は最後の4人目の候補者を訪ねていったときのこと。

まだ就寝中の候補者が起きるのを待っている間に、

その家にあるグランドピアノでおもむろに弾き始めるゼヴ。

その曲はなんとワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の一端。

 

ワーグナーといえば、第二次大戦下でヒトラーが好んでいたため

ユダヤ人からは敬遠されてきた作曲家のはず。

 

しかし、ここでゼヴは「音楽の好みはそれとは関係ない」と言いながら

演奏します。

 

このゼヴ役、言われないとわからないのですが、

かつてミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」で

トランプ大佐を演じたクリストファー・プラマーなんです。

この人、もともとはピアニストになりたかったそうで、

劇中でも実際に本人が弾いているそう。

なかなか美しい優しい演奏です。

 

そして、いよいよ4人目の候補者であり、おそらく復讐の相手と思われる

男性と対面することに…。

 

しかし、ここで思わぬことが起こります。

最後の最後にきて大ドンデン返しが起きて、思わず「え…!」と

茫然とします。

 

劇中ゼヴが旅するなかで、さざなみにように震えるヴァイオリンの音が

ずっと鳴っていて、なんだか不気味な雰囲気をかもしだしているのですが、

ラストでそのなぞが一気に解ける感じです。

 

あまりの衝撃に、映画が終わってからもなんとも言えない気持ちになりましたが、

振り返ってみると、この復讐の旅は、もうひとつの目的のために周到に練られた

憎悪に満ちた復讐計画だったことに、ぞっとしました。

 

もちろんこの映画はフィクションだし、ユダヤ人迫害は実際にあったわけだし、

一個人がどうにもできない状態だったとはいえ、

あまりにも悲惨な出来事だったし、それに対する恨みや憎悪といった

人間の深い暗部を見せつけられたみたいで、いい映画でしたが、

かなり気持ちがめいってしまう映画でもありました。