ウッディ・アレン監督の最新作「マジック・イン・ムーンライト」を観ました。
とても軽やかな感じのロマンティック・コメディです。
ウッディ・アレンはどうやらクラシックやジャズの音楽が好きらしく、
冒頭の怪しげな中国人(実は白人)のマジックのBGMとして
ストラヴィンスキー「春の祭典」や、ラヴェル「ボレロ」、
そしてベートーヴェンの第9交響曲の第2楽章など、
すべてクラシックの名曲が流れていました。
また、そのマジシャンが「ぼくはベートーヴェンの7番が好きなんだ」
と言うセリフがあったり。
クラシック音楽を使っていないところには、とてもおしゃれで粋な
ジャズが流れていて、ウッディ・アレンが映像だけでなく音楽にも
結構こだわりがあるように感じられます。
映画の舞台となるのは、1920年代の南仏。
日本でいうと昭和のはじめくらいでしょうか。
車¥はゴージャスな感じのオールドカー、
そして女性の服装もとてもクラシックな感じで、
スクリーン全体がとてもレトロで優雅な雰囲気です。
主役は、魔法や超能力といった非科学的なものをいっさい信じない
男性マジシャン、スタンリーと、不思議な透視能力を持つ女性、ソフィー。
ある日、スタンリーのところに昔なじみが現れ、
ある富豪をとりこにしている占い師の女性の正体を暴いてほしいと頼みにきます。
自信満々で富豪宅へ乗り込んだスタンリーですが、
誰も知らないことを言い当てるソフィーに驚き、
今までの自分の価値観をくつがえされます。
実はこの透視能力にはあるしかけがあったのですが、
非科学的なものを否定してきた自分の価値観がくずれてしまった
スタンリーは、それと同時にソフィーに恋をしてしまいます。
ソフィーのほうもまんざらでもなさそうなのですが、
マジシャンと占い師、お互いに人の心を錯覚させたり、
言い当てたりするくせに、自分の気持ちはさとられたくないために、
お互いの恋心を妙にひねくった形で表してしまい、関係はこじれるばかり。
特に頑固で、論理を好むスタンリーが、ソフィーに対する恋心を
皮肉たっぷりに語ってしまうところがくすっと笑えます。
インパクトのあるクライマックスがあるわけではなく、
予定調和的にハッピーエンドで終わるのですが、
このスタンリーとソフィーのお互いに意地をはりあった
やりとりがとてもほほえましく、穏やかな気持ちになりました。