イギリスを救った天才数学者の光と影~イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密 | Cecilia's Diary

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「聖セシリア」は、音楽の守護聖人。これにならって、音楽をはじめとする芸術や
伝統文化などを楽しみつつ、毎日を生き生きと過ごしている様子をつづります。
ライフワークとしてコーチングも勉強中。

偶然ではありますが、「博士と彼女のセオリー」に続き、またまた理系男子の話。
天才数学者アラン・チューリングの人生を描いた
「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」を観ました。

時代は第二次世界大戦のさなか。
天才数学者のアラン・チューリングは、チェスのチャンピオンや
言語学者などとともに、英国政府の機密作戦に参加することになります。
それがドイツの暗号「エニグマ」を解読すること。

「謎」という意味を持つエニグマ、時々ききますが
第二次世界大戦中の暗号のことだとは知りませんでした。
このエニグマ、その組み合わせが膨大なため、
10人がそれぞれ1日24時間解読に努めても、
すべての組み合わせを調べるには気が遠くなるような時間がかかるというもの。

しかも深夜0時なると設定が変わるため、
1日が終わる前に解けないと、それまでの努力が水の泡になってしまう
かなり困難を極めるものなのです。

アラン・チューリングという人は、この難解なエニグマの解読方法を発見する
マシンを開発し、エニグマ解読によって戦争を当初より2年早く終わらせた
と言われているそうです。
そして、この解読機は現在のコンピュータの元であり、
さらに人工知能の基礎になったものだそう。

映画は、戦後数年たった時点を現在とし、
エニグマ解読に至る戦時中と、それよりもっと以前の
少年時代のエピソードが交錯しながら描かれていきます。

このアラン・チューリングを演じているのが、
最近のTV版シャーロック・ホームズでホームズ役を演じている
ベネディクト・カンバーバッチ。
シャーロックに負けず劣らず、このアラン・チューリングもかなり変人です。

天才という人はどこかとびぬけて頭がいいだけに、
コミュニケーション不全に陥りやすいのか、
少年時代のチューリングも、級友たちにいじめられる孤独な少年だったよう。
たった一人、そんな彼に寄り添ってくれる少年がいましたが、
その少年も途中で病死してしまい、チューリングは人に高慢な態度でしか
接することができない不器用な人間となっていました。

そんな状態なので、英国政府に集められた仲間ともうまくいかず、
ひとりで解読マシンを作る日々。

そこにやってきたのが、クロスワードパズルの天才、ジョーン。
彼女は、頑なで他人とコミュニケーションをとろうとしない
チューリングと仲間たち双方に働きかけることによって、
チームとしての絆を少しずつ作り上げていきます。

史実かどうかわかりませんが、チューリングがジョーンのアドバイスによって
ある日仲間たちにリンゴをもってくるシーンがとてもほほえましいです。

この仲間とのコミュニケーションによって、彼らのチームワークが育ち、
のちのちチューリングが危うい立場に立たされたときに、
仲間が助けてくれるようになります。

このことが影響してなのか、最初はゲームとして暗号を
解読することに臨んだチューリングが、次第に人の命を助けるために
暗号を解読することで早く戦争を終結させたいと、
暗号解読に必死になっていくことになります。

感情から距離をおいてマシンのようだったチューリングが
少しずつ人間らしさを取り戻していく姿は、
戦争という特殊な環境において、ほんの少し救いを見た気がします。

そして、ついにあるきっかけから暗号を解読することに成功します。
ですが、解読した内容に基づいて動くと、
ドイツ側に暗号を解読したことがバレてしまう。

そのために、ドイツ側に暗号を解読したことを悟られないよう、
情報ソースを二重三重にしてかく乱させ、ドイツ軍の攻撃を阻止しました。

映画の中では、暗号解読によってドイツ軍が攻撃する標的を定めたのですが、
そこには仲間の1人の兄がいることがわかり、それぞれが苦悶するシーンが
描かれています。

これも史実かわかりませんが、場合によっては暗号を解読したことが
ドイツ側にわからないように、攻撃されることがわかっていても
そのままにさせておいたケースがあったのかもしれません。

チューリングたちの活躍がイギリスを勝利に導き、
戦争は当初より早く終結しました。

しかし、彼らの功績は隠ぺいされ、
戦後散り散りになり、彼らは自分がかかわったことを口外せず
秘密を持ち続けます。

さらにチューリングには、このほかに重大な秘密がありました。
それが彼を悩ませる原因でもあったのですが、
戦後彼の家に泥棒が入ったことをきっかけに、明るみになってしまい、
彼は罪人となり、薬物治療を受けることになります。

現在でもこの秘密は、なかなか公表しづらいものですが、
それでもかなり市民権を得てきています。
ですが、当時のイギリスではこの秘密が明らかになると
罪として罰せられてしまったのです。

チューリングは2年間の薬物治療ののち、残念ながら自殺して
命を絶ってしまうのですが、
現代のコンピュータや人工知能の礎を築いた人が
このような機密作戦にかかわっていたこと、
つまり、今の私たちの生活になくてはならないものが生まれるきっかけが
戦争であり、暗号解読という目的だったということには、
正直、ショックではありましえた。

しかし、彼が絶対に暗号を解読してみせるという信念のもとに
暗号解読に臨んだという功績があったからこそ、
今のように便利な世の中になったわけで、
その彼の功績が50年間も封印されていたということは、
戦争中のこととはいえ、非情なことだと思いました。

もしも、チューリングが自らの命を絶つことなく、
その命を存分に全うしていたら、どんな発見をしてくれたのかと思うと
残念です。