スキャンダラスというだけではなかったリスト~フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか | Cecilia's Diary

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「聖セシリア」は、音楽の守護聖人。これにならって、音楽をはじめとする芸術や
伝統文化などを楽しみつつ、毎日を生き生きと過ごしている様子をつづります。
ライフワークとしてコーチングも勉強中。

ショパンとリスト。ほぼ同じ時代を生きたロマン派の作曲家でありながら、
ショパンに関する本はたくさんあっても、なぜかリストに関するものはない。

そんなリストに関する貴重な1冊、「フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか」
を読んでみました。

フランツ・リストはなぜ女たちを失神させたのか (新潮新書)/新潮社

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リストといえば、先日映画で観たパガニーニとならび、
「超絶技巧」で知られた作曲家でありピアニストです。

若い頃の肖像画を見ると、とてもカッコイイので
コンサートには若い女性が押しかえ、なかには失神する女性も出たそう。
今でいう人気ロックミュージシャンなみの熱狂ぶりだったようです。

マリー・ダグー伯爵夫人とのスキャンダラスな結婚、そして超絶技巧的な演奏と
派手な印象がクローズアップされがちですが、晩年には超絶技巧だけによらない
まるで、人生いろいろやりきったあとの悟りのような美しい曲も書いていて、
前半の人生と後半の人生でずいぶんと変化があるようです。

前半の人生は、今までにない超絶技巧の曲を作って演奏したというだけではなく、
リサイタルというものを始めた史上初のピアニストでもあります。
現代では考えられませんが、リストの時代、ピアニストがソロでコンサートをする
という習慣はなかったそうで、その習慣を打ち破ったのがリスト。

また、当時のピアニストは今のようにレコードやCDといった
再生音源がないため、自分の作品を自分で演奏することでしか
作品をアピールすることができなかった。
なので、基本、自分の作品だけを演奏していたのですが、
リストは、自分の作品だけではなく、自分がすばらしいと思った
ほかの作曲家の作品も自分が弾くことで、広く世間に広めようとしたそうです。

しかも、そのリサイタルの数がハンパなく多い!

そして後半生は、当時の恋人だったカロリーネの進言もあり、
すっぱりとピアニストとしての活動をやめ、
作曲活動と後進の指導に従事します。

この後進の指導もハンパなく多い!
まあ、なかにはろくにレッスンも受けず、ちょっとリストに見てもらっただけd
「リストの弟子」を名乗る人もいたようですが、
今活躍する世界じゅうの著名なピアニストの系譜をたどっていくと、
すべてリストにつながるというくらい、さまざまな人に教えたようです。

さらにすごいには、稼ぐために教えていたわけではないこと。
レッスン代はいっさい取らずに無償で教えていたらしい。
また、何かあれば惜しみなく寄付をしたり、とにかくお金には頓着しなかったようです。

ピアニスト時代の派手なパフォーマンスからすると、
お金もうけとかに執着していたのではないか、なんて思っていましたが、
あまりそういったことには興味はなく、自他問わずにすばらしい音楽を
世に伝えたい、自分のあとに続く人材を育てたい、そういった利他的なことを
めざしていたアーティストだったようです。

ピアニスト時代の派手なパフォーマンスも、ピアニストとしての自分の存在を
印象づけるためのある意味プレゼンテーションのようなもので、
あくまで自分を売りだすための手段だったようです。

晩年は宗教的な音楽をずいぶん作曲していますが、
もともと宗教的なものにひかれていた人のようです。

今までにリストに関する詳しい本がなかっただけに、
この本はリストという人物を改めて知るにはとてもいいと思います。