といっても、ただコンサートを聴いてきたわけではありません。
女子限定で、クラシック音楽をもっと楽しもうという「女子クラ部」の
イベントツアーに参加したのでした。

このツアーは、コンサート開始前に楽屋でランチをいただきながら、
当日演奏される曲や作曲家、指揮者について解説してもらったうえで
コンサートを聴けるという企画。
ナビゲーターを務めるのは、丸の内朝大学のクラシッククラスでも
おなじみの飯田有紗さん。
彼女がナビゲーターということで、この日の参加者の約半分が朝大受講者でした♪
まずは楽屋口に集合して、普段は団員たちが使う楽屋へ向かい、
そこでおいしいカレーランチをいただきました。
こちら、ecoLoveというパソナ本社にあるレストランのケータリングです。

さて、今回聴いたコンサートは「作曲家の肖像」シリーズで、
毎回、ひとりの作曲家に焦点を当てたプログラム。
今回のテーマはチェコの作曲家、ヨゼフ・スークです。
指揮者のヤクブ・フルシャさんは、都響の首席客演指揮者で、彼もチェコの出身です。
ということで、まずはこのフルシャさんについての解説。
この方、非常に落ち着いた穏やかな方だそうで、指揮ぶりもとても落ち着いているそう。
本人はとても誠実で真摯な方で、あるときクリスマスプレゼントとして
団員からスタッフ、受付の人にまで手書きメッセージを添えた
ストラップを全員にプレゼントされたというエピソードをうかがいました。
また、飯田さんが力説していましたが(笑)ぜひ注目したいのが、「腰」!
腰がとても安定しているそうで、指揮しているときの腰つきに要注目!ということでした。
そんな飯田さんの解説の途中、なんとフルシャさんが私たちの楽屋に登場!
スークや、今回演奏する曲について、やさしい英語で解説してくれました。
見るからにとってもやさしく穏やかな方で、よくも悪くも「オレが指揮者だ!」
的な押しの強さを感じさせない方でした。
(こんな穏やかで優しい指揮者もいるんですねー)
次は、今回とりあげられているチェコの作曲家、スークについて。
ヨゼフ・スークという名前だけはなんとなく知っていましたが、
どんな作曲家なのか、どんな作品を書いた人なのか、よくわかっていませんでした。
スークは1874年生まれ。チェコ出身の作曲家といえば、
1824年生まれのスメタナ(ショパンやリストが活躍していた時代と同年代)、
1841年生まれのドヴォルザークがいます。
またスークと同年代の作曲家には、
プッチーニ、レスピーギ(イタリア)
マーラー、R.シュトラウス(ドイツ)
ドビュッシー、ラヴェル、サティ(フランス)
リムスキー=コルサコフ、ラフマニノフ、スクリャービン、ストラヴィンスキー(ロシア)
などがいます。
スークの父親は音楽好きだったので、スークにピアノやヴァイオリン、オルガンなどを
手ほどきしました。
そしてスークは11歳でプラハ音楽院へ入学。17歳で卒業を迎えますが、
その翌年にドヴォルザークがプラハ音楽院の教授に就任するというので、
スークは卒業を遅らせてドヴォルザークに師事します。
そこで、スークは師であるドヴォルザークに溺愛され、
またドヴォルザークの娘、オティーリエと24歳で結婚するに至ります。
(ブラームスもスークの才能を評価していて、ブラームスの推薦によって
スークの楽譜が出版されたこともあったとか)
このオティーリエと恋に落ちているときに書かれたのが、
今回の前半で演奏される組曲「おとぎ話」。
詩人・劇作家のユリウス・ゼイエルの戯曲「ラドゥースとマフレナ」に
劇音楽をつけたのですが、それを改めてオーケストラ用に編曲したのが
この組曲なんだそう。
非常にロマンティックなこの曲と対照的なのが、
後半に演奏される交響詩「夏の物語」です。
スークが活躍した19世紀末から20世紀にかけては、
オーケストラの規模が飛躍的に大きくなった時代。
それは楽器、特に管楽器の構造が発展したことで大きな音が出るようになった
ことが大きく影響しています。
そんな時代のスークの最高傑作と言われる作品が「アスラエル交響曲」。
ですが、この曲、スークのとても悲しい体験から生まれているのです。
この作品を書く前に、スークは恩師であるドヴォルザークを亡くします。
そしてそのあとを追うように、翌年に愛妻であるオティーリエが亡くなってしまうのです。
この2人の死に突き動かされて書いたのが「アスラエル交響曲」。
スークの作品はこの「アスラエル交響曲」を境にガラッと変わったと言われています。
死というものと向かい合ったスークは、これ以後、人生や愛、死など
非常にスケールの大きなテーマの曲を書いていくことになります。
この「アスラエル交響曲」の直後に書かれたのが、今回のプログラム「夏の物語」。
今回の演奏会は、この「アスラエル交響曲」の前後の曲、
かたや無邪気で明るく、かたや思慮深い、このスークという作曲家の
両面を味わえるプログラムになっていたのでした。
(こういうことも、事前に解説してもらえると、意識して聴くことができます)
飯田さんの楽しい解説はあっという間に終わり、いよいよコンサート会場へ。
ふだん自分では取らないような、前から3列目という至近距離の席です。
近いのはいいのですが、ヴァイオリンとヴィオラ、コントラバスの一部しか見えず、
管楽器などはほとんど見えなかったのがちょっと残念…。
前半の「おとぎ話」は、本当にロマンティックであまーい音楽でした。
第1曲「ラドゥースとマフレナの誠の愛と苦難」は、
王子ラドゥースが狩に出かけてうっかり敵国の領地へ迷い込み、捕まる。
彼に心を寄せた敵国の王女マフレナは、彼を助け、
二人はラドゥースの国へと逃げる場面。
全体にとても柔らかく情緒豊かな音楽で、特にコンサートミストレスが
奏でるヴァイオリンソロが最高に美しい!
第2曲「間奏曲 白鳥と孔雀の群れ」はポルカのリズムに乗せた軽快な音楽。
第3曲「間奏曲 葬送の音楽」は、マフレナの助けでラドゥースは国に帰ったところ、
彼の父ストイミールが亡くなったことを知る場面。
王を悼む歌から作られています。
第4曲「ルナ王妃の呪いと愛の勝利」は、ラドゥースと逃げたマフレナに怒った
マフレナの母、ルナ王妃が呪いをかけたことで、ラドゥースの記憶から
マフレナの存在が消えてしまいます。それを悲しんだマフレナは、城の前に立つ
ポプラの樹に姿を変えます。
そして、このポプラの木が伐られたときに、流れ出した血に
ラドゥースが触れたとき、呪いは解けてマフレナの記憶がよみがえり、
めでたし、めでたしという場面。
この第4曲の最後で「愛が勝つのだ!」と言わんばかりのクライマックスが
印象的でした。
どの曲を聴いても、それぞれのストーリーの場面が思い浮かぶような
とても楽しい曲でした。
続いて後半の「夏の物語」。
事前に解説してもらったように、「おとぎ話」とはガラっと曲想が変わります。
第1楽章「生命と慰めの声」は、絶望の底から生きる意味を見出して
再び立ち上がる、非常に深い音楽です。
第2楽章「真昼」は、のんびりとした、しかしどこかまだ悲しげな音楽。
第3楽章「間奏曲 盲目の学士たち」は、ハープの伴奏でイングリッシュホルン
(オーボエみたいな縦長の楽器です)2本が哀愁を込めたメロディを奏でます。
途中、ヴァイオリンとヴィオラの二重奏がいっそう悲しげで美しいメロディを
奏でるところがたまりません。
(この盲目の学士、というのは、スークがあるときに悲しげな歌を繰り返しながら
歩いていく旅周りの貧しい学士を見かけたことから、インスピレーションを得たそう)
第4楽章「幻影の力」は、さまざまな音楽の断片が飛び交い、
激しく渦巻くなか、突然強烈な一撃で音楽がとぎれ、さざめきの中に
音楽が静まりやがて消えていきます。
第5楽章「夜」は、再び最初の「生命と慰めの声」に戻るような、
しかしもっと深く、さらに生命や愛といったものを追求した音楽へと続き、
壮大なハーモニーが奏でつつ終結していきます。
この「夏の物語」、確かに「おとぎ話」とはまったく異なる曲想ですが、
そうはいっても同じ作曲家なので、ところどころに「おとぎ話」をほうふつとさせる
ロマンティックの断片が見え隠れしていました。
スークという作曲家のこともあまり知らなかったし、
今回聴いた曲も日本初の演奏とあって、知らない曲だったし、
これを事前に楽しい解説で聴けたのは(ランチもついて♪)
とてもお得でした。
このナビつきコンサートシリーズ、今後も続編があるらしいので
ぜひまた参加したいと思います。