伝説のコンシェルジュとベルボーイが連続殺人事件の謎を解く~グランド・ブダペスト・ホテル | Cecilia's Diary

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「聖セシリア」は、音楽の守護聖人。これにならって、音楽をはじめとする芸術や
伝統文化などを楽しみつつ、毎日を生き生きと過ごしている様子をつづります。
ライフワークとしてコーチングも勉強中。

とてもファンタジックでスウィートで、でもかなりエグいストーリー展開の映画
「グランド・ブダペスト・ホテル」を観ました。

ヨーロッパ最高峰のホテル、グランド・ブダペスト・ホテルの
伝説のコンシェルジュが、お得意さまである伯爵夫人が亡くなったことで
殺人容疑をかけられてしまったことから、
このコンシェルジュとその忠実な部下であるベルボーイが
容疑を晴らすためにその謎を解きに走り回る、というストーリー。

このグランド・ブダペスト・ホテルの世界観というか空気感がすごくいい!
ホテル内はおそらくスタジオセットだと思うけれど、
ホテルの外観とか、ホテルの背景にある美しい山々が、思いっきり作りものっぽい。
当時のホテルの外観がどピンクなんですが、舞台背景として板をホテルの形にして
色を塗って立たせました、みたいな(実際たぶんそう)
そのあまりのリアリティのなさがかえっておもしろい。

そのために、ホテル内で働く人やお客さんなど
ホテルの中にいる人たちのリアリティもなくなって、すべてがファンタジーの世界
みたいに思えるのです。

反転して、ホテルの外、列車に乗ったり、どこか別の場所にいるときは
わりとリアリティが実感として伝わってくる。
このコントラストがたまりません。

映画は、一見この話となんの関係もない作家のお墓に
ある女の子がやってくるシーンから始まります。

この映画は作家が亡くなった現代と、作家が若いころに元ベルボーイの
ホテルオーナーに出会う1960年代、そしてそのオーナーが
ベルボーイだった1930年代と3つの時代を行き来します。

その作家が若かりしころ、グランド・ブダペスト・ホテルに泊まった際、
ホテルのオーナーであるゼロ・ムスタファに出会い、
難民だった彼がなぜホテルのオーナーになったのか彼の半生を聴いて
それを本にしたのがこの映画のストーリーである、という仕立てになっています。

ゼロがまだベルボーイだったときに、ホテルの伝説のコンシェルジュだったのが
ムッシュ・グスタヴ・H。
ホテルのすみずみまで気を配り、究極のおもてなしをする彼は、
多くの客に気にいられ、彼目当てでホテルにやってきます。

特に、なぜか金髪で年老いた女性(ほかにもいろいろ条件がありますが)には
気にいられ、彼もそういった女性たちには「夜のお相手」というこれ以上ないという
究極の「おもてなし」をして、寵愛を受けています。

その中のひとりである伯爵夫人である「マダムD」が
自邸で殺されたことから、彼の人生が転がり始めます。
マダムの死後24時間後にグスタヴが彼女の屋敷にやってきたことから
なぜかグスタヴがマダム殺人の容疑者に。
実は、これはマダムの息子の陰謀なのですが、この容疑でグスタヴは捕えられて刑務所へ。

その前にマダムDの遺言により、グスタヴはある絵を
マダムから譲り受けるのですが、(といってもマダムの息子が納得しないので、
無断で持ち出し、グランド・ブダペスト・ホテルの金庫に隠すことになります)
この絵が全体のストーリーのカギとなります。

彼の無実を信じるベルボーイのゼロは、グスラヴがあきらめないように励まし、
グスタヴは刑務所仲間とともに、脱獄をします。

さあ、ここからがグスタヴとゼロの逃亡かつ冒険の始まり。
ゼロは恋人のスイーツ店メンデルズの店員アガサを残して
グスタヴと逃亡の旅に出ます。

実はマダムの息子はジョプリングという私立探偵(というか殺し屋?)を
雇っていて、このジョプリングが、次々とマダムの息子にとって
めざわりな人たちを殺していってしまうのです。
この殺しが結構残酷で、このシーンだけ観るととても耐えがたいのですが、
全体の色彩感や、これもカギとなる、メンデルズの箱(これがまた超ど級ピンク!)
などのファンタジックな雰囲気がまぶしてあるので、あまり残酷な感じにはなりません。
まるで、本当はあまりおいしくないのに、砂糖やきれいなデコレーションをして
一見美しくおいしそうに見せているお菓子のように、
遺産相続という醜い争いやそれにともなう殺人という目をそむけたくなるような
汚いことを、色彩感でカモフラージュしてファンタジックにしている。
そんな感じです。

ストーリーの終盤でマダムDの最新の遺言があることがわかり、
またグランド・ブダペスト・ホテルに隠してある絵を持ち出そうとした
グスタヴとゼロ、そして彼らの命を受けて絵を金庫から取りだしたアガサ、
その絵をねらうマダムの息子と大戦のために集まっている大勢の兵士たち、
これらが最後にはみんなでいっせいに大騒ぎ状態になります。

特にアガサを追いかけるマダムの息子、それを負うグスタヴとゼロ。
さらに、彼につられて銃撃戦をはじめる兵士たち。
吹き抜けのホテルの中で銃撃戦が行われるシーンは、
まるでホテル内で花火を打ち上げているようにパンパンと
音が鳴って圧巻でした。

すごく不思議な世界観の映画でしたが、
最後のタイトルロールでは、バラライカの音楽に合わせて
スクリーンの右はじにおっさんが出てきて、民族衣装を着て
ロシアンダンスを踊っていたのがクスリと笑えました。

ストーリー展開だけを観るとかなりエグい感じで
それだけだと最後まで観ていられない感じですが、
「メンデルズ」のピンクに代表されるこのスウィートで美しい
世界観をまぶされたことで、あまり気持ち悪さを感じずに観ることができました。