ちょうど2週間前に「大統領の執事の涙」を観ましたが、
この「それでも夜は明ける」も、同じテーマの映画、
つまりアメリカ史における黒人奴隷制度を扱ったものです。
監督はスティーヴ・マックイーン、そしてこの作品に出演もしている
ブラッド・ピットがプロデューサーです。
この映画、先日の第86回アカデミー賞で作品賞、助演女優賞、脚色賞部門で
受賞したのですが、その業績をおいても観たい、いやこれは観なくては
と思った作品です。
「大統領の執事の涙」と同じく、実話に基づいた話ですが、
「大統領~」は1950年代から1980年代にかけての話だったのに対し、
「それでも~」はそれよりも約100年前、南北戦争が勃発する前の
1850年代の話です。
アメリカの奴隷制度は1865年まで続いたそうですが、
それ以後も黒人に対する差別意識は続いていたことは「大統領の~」
に描かれていた通り。
しかし、それよりももっとひどいことがかつて行われていたのです。
1808年にはアフリカから奴隷として黒人を連れてくることが禁止となったため、
あろうことか南部の白人は、北部にいる自由黒人
(生まれながらにして自由な身分にある黒人)を拉致し、南部に連れて行って
奴隷として酷使していたそうで、この映画の主人公、ソロモンも
自由黒人として北部に住み、ヴァイオリニストとして活躍して
家族とともに裕福に暮らしていました。
ところが、ある日突然興業主にだまされて南部に連れてこられることになります。
今まで自由黒人として暮らしてきた彼には、いったい自分の身に何が起きたのか
わからないまま、ソロモンという名前も奪われ、奴隷として働くことになります。
自由黒人という身分があったことも知りませんでしたが、
その自由黒人を拉致して南部に連れてくるなんてことがあったなんてことも
信じられませんでした。(まるでどこかの国のよう)
彼は自由黒人として能力も才能もあるため、最初の雇い主に気にいられますが、
彼ほど優秀でないほかの白人にうとまれ、迫害を受けることになり、
やむなく別の雇い主のところへ売られていきます。
そこで、綿花摘みの仕事をしますが、綿花を摘む量が少ないといっては鞭で打たれ、
また逃亡した黒人の処刑を目の当たりにし、
同じ立場の女性パッツィーが雇い主にもてあそばれ、
それを嫉妬する雇い主の妻からも虐げられているのを見るという過酷な生活を送ります。
いちるの望みをかけた白人にも裏切られ、暗い絶望の底に突き落とされながらも
いつか家族に会いたい、その望みを失わないまま過ごし、
やっと12年後に協力的な白人(これがブラッド・ピット)の助けを借りて
自由の身を再び手に入れるのです。
映画が終わったあとのタイトルロールで、この後ソロモンは自分をだまして拉致した
白人たちを訴えますが、その当時黒人が裁判の場で証言をすることが禁じられたため
結局その白人たちは罪を免れたそうです。
今の世の中では、絶対にありえないような不当なことが
当時はまかり通っていたんですね。
その後ソロモンは脱走黒人を助ける秘密結社などで黒人のために活動したそうです。
この映画でもうひとつ非常に心に残ったのは、残されたソロモンの仲間たちのことです。
ソロモンの知り合いの白人が彼を迎えにきて馬車に乗り込むとき、
パッツィーが近づきハグをしますが、そのままソロモンだけが去っていきます。
ソロモンは自由黒人であることが証明されて、晴れて自由の身になれるので
とてもうれしいかもしれませんが、そのほかの奴隷たちは何も変わらない。
ソロモンだけが自由の身になるというのは、ある意味不公平です。
きっとソロモンもうしろ髪をひかれるおもいで立ち去ったのではないでしょうか。
このシーンは本当に心が痛む場面です。
人間の尊厳とは、人間の存在とはいったいどういうものなのか、
ものすごく考えさせられる映画でした。
アメリカにかぎらず、日本やほかの国々で人種差別というものが
行われてきました。
今でも完全になくなったわけではありませんが、一日でも早くこういった悲しい事態がなくなって、本当の意味での人類平等の日々がきてほしいと願うばかりです。