まさに命がけの演奏~命をつなぐバイオリン | Cecilia's Diary

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「聖セシリア」は、音楽の守護聖人。これにならって、音楽をはじめとする芸術や
伝統文化などを楽しみつつ、毎日を生き生きと過ごしている様子をつづります。
ライフワークとしてコーチングも勉強中。

有楽町まで出かけて映画「命をつなぐバイオリン」を観てきました。
第二次世界大戦中のドイツ・ナチスが台頭した時代に、
人種を越えて友情を交わし合った3人の子どもたちの物語です。

舞台となるのは当時ソ連の支配下にあった1941年春のウクライナのポルタヴァ。
そこでは「神童」と呼ばれたユダヤ人の子ども2人、
ヴァイオリンのアブラーシャとピアノのラリッサが、
優れた演奏で人々を魅了し称賛されていました。

映画は、彼らが舞台でサラサーテのツィゴイネルワイゼンを
完璧に弾きこなし、大喝采を浴びるシーンから回想が始まります。

この演奏シーンを観ていて、ヴァイオリンを弾くアブラーシャは
左手の指使いといい、結構ヴァイオリンが弾ける子なんじゃない?と思ったら
アブラーシャ役を演じたエリン・コレフくんは、両親がヴァイオリニストで(!)
本人も12歳でN.Yのカーネギーホールでヴァイオリニストとしてデビューした
ホンモノの神童なんだそう。

なので、劇中で演奏されるサラサーテ「ツィゴイネルワイゼン」、
ブラームス「ハンガリー舞曲」、モーツァルト「ヴァイオリン・ソナタ」
リムスキー=コルサコフ「熊蜂の飛行」、ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」などの
ヴァイオリン演奏は、すべて彼が実際に演奏しているそうです。

もしかしたら、将来彼の演奏がコンサートで聴けるかもしれません。

ラリッサ役のイーモゲン・ブレル、ハンナ役のマティルダ・アダミックも
それぞれ幼少の時期からピアノ、ヴァイオリンを習っているそうです。

映画の中での彼らの演奏は、優れた教師イリーナ先生の指導のたまものですが、
この当時、音楽は政治の道具として宣伝に使われていたのはどこも同じで
アブラーシャとラリッサもスターリンやソ連の幹部の前で御前演奏をすることで
ウクライナの共産党幹部が、自分たちの体制が優れていると誇るために
使われていたのでした。

しかし、当時ウクライナに住んでいたドイツ人のハンナは、
彼らの演奏を聴いて感銘をうけ、2人と音楽を通じて友達になります。

音楽によって深い絆で結ばれていく3人。
でも、ユダヤ人とドイツ人という人種の違いから
それぞれの運命が狂いはじめます。

当時ドイツとソ連はお互いに不可侵条約を結んでいましたが、
ドイツがそれを破ってソ連領であるウクライナを攻撃します。
そのためポルタヴァにいるドイツ人であるハンナ一家は敵として追われる羽目に…。

彼らの危機一髪を救ったのがアブラーシャ。
誰にも見つからないような山小屋にハンナ一家を匿います。

やがてドイツ軍が侵攻してきてハンナ一家は救われますが
今度は一転してナチス・ドイツ体制のために
ユダヤ人であるアブラーシャとラリッサの一家が追われることに…。

ハンナ一家の尽力でいったんは隠れますが、結局ドイツ軍につかまって
一家は強制収容所へ。

ただし、ここでもドイツ軍はアブラーシャとラリッサを
政治の道具として利用しようといったん命を助けますが、
ナチスのシュヴァルトウ大佐は、ヒムラー総統の(これヒトラーのことですね)
誕生祝賀会で二人が完璧な演奏をしたら、特別に強制収容所行きを
免除しようとハンナの父に持ちかけるのです。

運命の誕生祝賀会当日。不運にもラリッサは直前にシュヴァルトウ大佐の
いじわるな言葉に動揺してしまいます。

演奏の成否がそれこそ自分たちの命にかかわってしまう…。
そんな緊迫した雰囲気の中、いよいよ演奏が始まります。

この演奏会の結末がとても衝撃的で、映画が終わったあとも
しばらく声も出ないほどのショック状態でした…。

先日観たお芝居「テイキングサイド」のフルトヴェングラーも
優れた演奏家であるために政治の道具として使われたし、
「戦場のピアニスト」もユダヤ人であるために必死で生き延びたピアニストの話でした。

ドイツ・ナチスの総統であるヒトラー自身が音楽好きだったため
政治的に逆らわないかぎり優れた音楽家は保護されました。
それ自体は優れた音楽家たちを失わずに済む結果になりましたが、
その代わりに政治の道具として利用されてしまうという悲劇。

またユダヤ人だというだけで、なんの理由もなく迫害され
命を奪われるという悲劇。

これらのことは、実際にそういった体験をしていない自分には
どれほど大変で悲惨でつらいことか、わかりえないことですが、
客観的に観ていても、胸が張り裂けそうないまわしい事実です。

本当に、もう二度とこのようないまわしいことが起きないことを祈ります。