生きるために本当の自分を隠してきた人~アルバート氏の人生 | Cecilia's Diary

Cecilia's Diary

「聖セシリア」は、音楽の守護聖人。これにならって、音楽をはじめとする芸術や
伝統文化などを楽しみつつ、毎日を生き生きと過ごしている様子をつづります。
ライフワークとしてコーチングも勉強中。

立て続けに映画を観ています。
今回観たのは「アルバート氏の人生」。

新聞の映画批評を読んで、思わず興味を持ってしまいました。チョキ

舞台は19世紀のアイルランド・ダブリン。
「モリソンズホテル」でウェイターとして働くアルバート・ノッブス。
細かいところまで神経が行き届くゆえに、顧客からも信頼されている彼は、
ひっそりと目立たないように暮らしています。

そして、彼はとても重大な秘密を隠しもって生きてきました。
なぜなら、彼は「女性」だから。目
当時のダブリンでは、独身の女性が自立して生きていくことが難しい時代。

貧しい生活の中でなんとか生きていくために、
彼(彼女)は、14歳のときに男性になりすまして職を得たことをきっかけに
女性であることを捨て、男性として生きることを選びました。

そのまま、ひっそりと誰とも必要以上にかかわることなく、
人生を終えるはずだった…。

しかし、モリホンズホテルへ仕事でやってきた
ペンキ屋のヒューバートと出会うことによって、
彼の人生の歯車が動き始めます。

ヒューバートにも、人には言えない秘密があることを知り、
また彼の生き方を知ることで、
今までの自分とは違う生き方ができるかもしれない…。

そんなひと筋の希望を見出したアルバートが
少しずつ行動を起こし始めるシーンはとても印象的です。

今までひたすら自分を押し殺し、ただ生きるために仕事をし
毎日を過ごしてきたアルバートは無表情でしたが、
コツコツと貯めたお金で自分の店を持ちたいと願い、店を探し歩いたり、
ヒューバートが人生の伴侶とともに自分の人生を歩んでいることを知って、
アルバート自身も人生を共にしたい女性に対して
一生懸命アプローチしたり。

それまでの彼とは違って、頬をバラ色に染め、
あれこれとささやかな幸せを得られる末来を思い描き
それに向かって行動していく。

やっと、アルバートという人間らしい感情を持ち始めた様子が
細かく描かれています。

いちばん印象的だったのは、ヒューバートの亡き妻が
自分のために作ってくれた女性用のドレスを着て浜辺を散歩するシーン。

はじめはおずおずととまどい気味だったアルバートが、
本来の自分の性を取り戻して、自分を縛っていたものから解き放たれ
自由になった瞬間のうれしそうな表情が、
女性としてのアルバートの素顔なんだろな、と思いました。

それだけにラストシーンは、とても意外というかショックでした。
彼の人生は、いったいなんだったのだろうか…。
空しさがこみあげてきました。

でも、確かに悲しい最後ではあったけど、
アルバートが自分を押し殺して生きる人生のまま終わるのではなく、
たとえ短い間だったとしても自分自身を生きることができたので、
もしかしたら彼は幸せだったのかもしれないな、
と思いました。
それは、彼が最後にベッドに横たわるときの
なんともいえない優しい表情からもうかがえた気がします。

先日観た「TED」に比べると
劇場内も人がまばらで閑散としていましたが、
こういう「人生とは何か」ということを深く考えさせてくれる
心に響く映画も、もっとたくさんの人に観てもらいたいなと思います。