モノノフ自転車部、夏の一大決戦 ~つくば10耐~ 最終話その1
時刻は18時30分を過ぎ、ゴールまで30分を切っている。
猛暑の中、10時間という長丁場の耐久レースもそろそろ終わり。
男子車種混成のZチームはライバルチームに1ラップの差をつけ、1位。
(実際は2ラップだったけど、速報をみるタイミングで1ラップだと思っていた)
男女車種混成のワニシャンチームは1~2位を1秒差以内!
同一周回、同じ集団。ピッタリマークのハラハラの展開・・・
モノノフ自転車部。
ももいろクローバーZ好きの自転車乗りが集まって出来た部。
ぱっと見はももクロ好きのネタチームに思える。
(実際そうだけど)
そのチームがレースに参戦し、部員以外の人はここまで戦えるチームとは誰も思わなかったんじゃなかろうか。
ネタチームはネタチームで否定はしないけど、ただのネタチームではない。
部員は部員で表彰台のためにずっと頑張ってきていたので、戦えるとは思っていた。
でも、本当に僅差で1位を争う・・・とまでは思っていなかったのかもしれない。
Zチーム最終走者・・・・あっきー
これまで、まじまじと見せつけられていたライバルチームの速さ。
最終走者は単独で集団を追える脚をもった人だ。
ライバルチームが何を考えているかは分からないけど、去年の優勝チーム、このまま2位でよしとする訳がない。
残りの時間でなんとか1位を穫りにくるだろう。
もし自分が同じ状況だったら、とにかく高速トレインにしてライバルを酷使させてガッツリ疲労させてから千切り、1ラップ差を埋めようとする。
これをあっきーがやられたら・・・・
ワニシャンチーム最終走者・・・いっしー
集団は大きいが、近くで完全にお互いをマーク。
アタックなどはしにくい状況だし、集団が中切れしてもライバルチームだけ見てればいい状況。
勝負は十中八九ゴールスプリントになりそうだ。
猛暑の中の10時間。
モノノフ自転車部オールスターズ2013。
見渡せば大シャンパン天国。
モノノフ自転車部、夏の一大決戦~全日本10時間耐久サイクリングinつくば~ 最終話
【 モノノフ自転車部、夏の一大決戦 ~全日本10時間耐久サイクリングinつくば~ その1 】
【 モノノフ自転車部、夏の一大決戦 ~全日本10時間耐久サイクリングinつくば~ その2 】
【 モノノフ自転車部、夏の一大決戦 ~全日本10時間耐久サイクリングinつくば~ その3 】
【 モノノフ自転車部、夏の一大決戦 ~全日本10時間耐久サイクリングinつくば~ その4 】
【 モノノフ自転車部、夏の一大決戦 ~全日本10時間耐久サイクリングinつくば~ その5 】
あっきーがライバルチームと共にピットアウト。
状況的にはこちらが有利に見えるけど、もしあっきーが潰されたら1ラップ差はすぐに埋まる。
逆に言うと、あっきーがライバルに付いていければ優勝だ。
ついて行ければ・・・だけど・・・・・
ここで作戦は・・・
・潰されないように走ること。
・先頭交代でも前を牽きすぎない。
・もし千切れたら速そうな集団に入ってしやり過ごす。
~これしかない。
「あっきー!無理して付いていくなよ!そんなに簡単にはラップされないから!」
っと声をかけたが、あっきーの心中はそうではなかったと後で教えてもらった。
『ここまでみんなが繋いできてくれたのに、最初からついていくのが無理だからって引き下がれない。ただただライバルを前に行かせることは出来ないと思ったんです。自分が付いていけば優勝できる。それならやるしかない。』
っと・・・・・・・
さっきまで投げキッスばかりしていた男とは思えないくらい熱い。
それもそのはず、冬からこの日、この時の為にずっと中心となって走り続けてきたのだもの。
いっしーとあっきー。
1位での最終走者というプレッシャー。
逆境こそがチャンスなのか。
そもそも逆境ではないのか。
撮影するのも忘れ、ひたすら応援。
そんな訳で、せっかくのナイターでの緊張感ある写真を自分は一枚ももっていないという・・・・・
(モノノフ自転車部専属カメラマンがいるから大丈夫なはず!)
会場の実況でも男女車種混成カテゴリーの接戦すぎる接戦の状況をなんどもアナウンスしていた。
10時間のレースで、タイム差が1秒もないなんていう展開はそうはない気がする。
1ラップ差とかでもかなりハラハラするのに、1秒もないって・・・・・
もうピットでは何をどうしていいのやら。
とにかく、いっしーはライバルをマークし、ゴールスプリントを仕掛ける為の走りをしなければならない。
あっきーはライバルと上手く走らねばならない。
そんなあっきー、3~4人のトレインになってたのかな。
かなり速いトレインだったと思うんだけど、これがまた必死の形相で耐えつつ走っているのが分かる・・・・・
頑張っているのは分かる。
でも、頑張れとしか言えない。
頑張っているけど、不安は不安。
人数が少なく、ペースの速いトレインってかなりしんどいんだもの。
頻繁に出番が回ってくるし、相手は玄人。
なんとかこちらを消耗させて千切らないと勝ちはないんだから、色々やってくるだろう・・・
ただ、ここであっきーがすごかったことがある。
相手が自分より速いことはあっきーも重々承知していた。
トレインを組んでいて、相手のペースにただ合わせているような防戦ではいけない。
そう、あっきーは先頭に出た際にはちょいちょいペースを落とし、前に出ているけど牽かないという攻めをしていた。
ロードレースなどで先頭交代するのは当たり前だけど、今は終盤。
しかも争っている相手がいて、わざわざこちらがリスク承知でバカ正直に前は牽けない。
消耗させられたら負けてしまうのなら、消耗しないように走らなきゃいけない。
冷静だな~と思った。(後で聞いた)
熱いだけで相手のペースに飲まれてしまったら、逆転されてしまう可能性があるんだけど、冷静にペースを作って逆転される可能性を限りなくゼロにしていたあっきー。
ピットからは食らいついていくあっきーすごいぜ!熱いぜ!っと思っていたのだけど、そんな展開があったとは。
ちょっと面白い話もあったんだけど、それはそれで取っておこう・・・・・
いっしーの集団は相変わらずデカい。
デカいが、集団の前方に陣取り、いいペース。
格上に食らいついていくあっきーも熱いけど、1秒もない差で静かにゴールの時を待ちながら争っているいっしーも熱い。
なんか、こんなに燃える耐久レースが今まであっただろうか。
修善寺の5時間耐久でも、川崎の3時間耐久でもあんまり速報とか見てなかったし、川崎はちょっと状況違ったしね。
同じコースをずっと走り続け、何度も見ることが出来るって言うのがエンデューロレースのいい所だと思う。
ツール・ド・フランスみたいにずっとバイクから中継されているのも楽しいけど、目の前を何度も何度も通り、その度に若干状況や展開が変わっていくドキドキ感。
それをみんなて共有している一体感。
まぁ、今だからそう言えるけど、レースの時はとにかくあたふたしてハラハラして何も手に付かず大声で応援するしか出来なかったのだけど。
残り時間が10分もないくらいだろうか。
4人くらいで走っていたあっきー、若干距離が空き気味になり、トレインから落ちていった・・・・・
・・・・ように見えた。
そう、後ろから大集団が来ていたのだ。
若干速い大集団のペース。
4人でギリギリ回すよりは集団に入ってしまった方が脚は使わないし、使わされることもない。
前にいったライバルを含む3人くらいのトレインも結局2~3周で吸収されてしまったのだけど、早々に見切って変に我慢せず集団を待ったあっきー。
なんか、レース感があるというかなんと言うか、熱いのに冷静。
自分じゃこうは出来ないな~とか思ってしまった。
多分、ノリに任せて最後まで張り合おうとかして、最後でタレちゃうんだろうな・・・・
去年はラスト10分で使い物にならなくなったし。
(その時点で250km走ってたんだもの!)
さて、言い訳はいいとして。
無事に大集団に入ったあっきー。
ライバルも吸収したことで、より優勝を確実なものにした。
残り時間を考えても、もう逆転は不可能だろう。
あとは落車に気をつけて走るだけだ。
こうなると、無事を祈るしかない。
祈りつつ、いっしーの集団は活性化しており、大集団からアタックなどがかかり小規模の集団が出来始めていた。
残り時間は数分といったところ。
もちろんライバルとの差は1秒もない。
完全にゴールスプリントで決まる展開・・・・
10時間の耐久レースでゴールスプリント決着。
興奮せずにはいられない。
表彰台は確実。
それだけでもすごいのに、両チームとも1位を争っている。
19時。
ゴールの時。
男子車種混成カテゴリーのZチームの最終走者あっきーは、ライバルチームを吸収した集団で走っている。
もう間違いなく優勝だ。
御殿場の居酒屋で
「表彰台の天辺で大漁旗を・・・・」
っと涙目で話をした日から数ヶ月。
あと数分、数キロで目標達成だ。
男女車種混成カテゴリーのワニシャンチームの最終走者いっしー。
初めて一緒に練習した時、オッチーに
「かなり速いね・・・」
っと言わしめ、その時から最終走者にと決めていた。
そのいっしーはゴールスプリントで勝負をしかける。
ゴールスプリントになりそうだったので、自分はよく見える位置にいた。
ここは流石にカメラを構え、ゴールシーンを撮りたいと思った。
今思うとスーパースローで動画を撮るべきだったのだけど、そこまで頭が回らなかった。
ラストと言うことでアタックが頻発し、集団はバラバラに。
どこに誰がいるのかもちょっと分からない。
分からないのでひたすらカメラを構えつつ、ゴールスプリントの時を待つ・・・・
目を凝らしつつカメラの準備をしていっしーを探す。
際立って迫力があるというか、鬼気迫る雰囲気のゴールスプリントをしている3~4人組がいた。
いっしーだ。
あの大きな集団からアタックがあり、小規模集団へ。
そこから更にライバルチームと抜け出し、最後の勝負・・・・
いっしーもライバルチームもお互いガッツボーズ。
どちらが勝ったのか、全く分からなかった。
同時に見えたし、いっしーが前にいるようにも見えた。
この時、いっしーの脳内BGMは「灰とダイヤモンド」だったらしい。
ガーミンのデータから、速度は約60km/h。
今回のレース、リアルタイムで速報を見ることが出来る。
となりにいたどらちゃんが速報を確認すると・・・・
「・・・・・0.05秒差で2位っぽいです・・・・」
「・・・・え?0.05秒差?・・・・・それって、どんな差・・・・?」
速報のデータだけど、多分それは最終的な順位だし、タイムだろう。
残念なことは残念だったけど、個人的はそれでいいと思っていた。
表彰台に上がるっていうことは本当にすごいことだもの。
でも、1位でなくて2位でよかったという理由は後ほど。
タイミング的にはあっきーが後だったと思う。
ゴールスプリントをし、やりきった感が全身に出ていた。
1位での最終走者というプレッシャーの中、格上のライバルチームとも上手く戦い、目標としてきたレースで最高の結果を出したあっきー。
『走れ』
のフレーズが自然に出てきてしまうじゃないか・・・・・
ピットでは速報はしりつつも、最後の最後に何かあって実はこっちが1位なんじゃ・・・・
なんて淡い期待を持ちつつ、無事に終わったことを喜びつつの、何か妙な感覚。
しかし、嬉しいことは嬉しいのだ!
これからパレードランだ。
みんな、とにかくあっきーといっしーを迎えようぜ~!
みんなでピットからコース上へ。
10時間という長丁場のレースが終わり、このスッキリした感覚は他のレースではなかなか味わえない。
あんなに暑くて、飲み物もすぐお湯のようになるし、日差しは痛いし、5時間経ってもまだ半分・・・・っていう長さの感覚。
でも、みんなで一緒になって走って、競って、上位になって。
本当にいいレースだな~なんて思う。
一番いいのはみんな無事だったってこと。
落車もなかったし、この暑さで熱中症もなかった。
もちろんそうならない為にコミパパさんにタープを借りたり、色々な準備をしたのだけど。
(イージーアップ、本当にありがとうございます!)
クーラーボックスもそうだし、DJ.MAXさんの差し入れや、三曹コーラなどなど。
あと、これは特殊と言えば特殊かもしれないんだけど、みんなが「ももいろクローバーZ」が好きだから、ポジティブに全力で頑張れるし励まし合えたってことでここまで来れたのかなと。
そういう集まり、『部』でなかったら雰囲気はこうならなかったと思う。
中心にある何かで一つになれたり、なれなかったり、なった時の形が違ったり。
いいチームだな~と思いつつ、二人を待つ。
みんなの笑顔がキラキラしててまぶしいわ!
初レースで緊張もあったと思うけど、感の良さで走りきり、ピットではいつも明るい雰囲気を作ってくれた可能性を感じずにはいられないどらやきさん。
そして帰ってきたきたあっきー。
最後の最後まで走りきり、突き上げられた右腕と人差し指。
ぶれっぶれだけど、感動してそれどころじゃなかった。
撮るより、声をかけたかった。
ついにやったなこのやろー!!!!!!!!
まだいっしーを見つけていなかったのだけど、あっきーがピットエリアにフラフラしながら帰ってきた。
ちょっと危なそうだったので、すぐさまそちらへ・・・・
出し切った。
ゴール後のパレードラン前には芝生エリアに倒れていたくらい限界まで消耗していたあっきー。
しっかり最後の最後まで全部出し切った。
それがいい。
みんなもピットへ帰ってきた。
そして、いっしー。
「絶対にゴールスプリントで勝った!!!!」
っと本人。
しかし速報では・・・・でもでも、実際はどうなんだ!?
っと言うことで、カメラでチェック!
たけちゃんもいい笑顔。
クライマーと言う事で平地が不安に感じていたが、実際は高速トレインも集団を牽引し続ける脚もあり、今回のレースで新たな道を見いだしたのがたけさん。
おさむちゃんは感動に浸っている。
レース経験が長く、流れを理解してくれており、出番が多くて疲れているのに一番ピット作業を手伝ってくれていた。
こーたろ君。
出場しないレースで自転車にも乗れなかったのに、ずっとピットや本部でサポートをしてくれていた。必ず同じチームで共に走ろう。
無線の手配やベンチなど、事前準備。そしてレースでは「忍耐」を期待しての暑い時間での長時間走行をしっかりこなしてくれた三曹。
三曹、目の回りが赤いぞ?
そこはアイウエアあるから日焼けしないだろ。
泣いたな?
泣いたろ三曹!
それでいいんだ!
ピットでがやがやしていると、壁の上で佇むゴウさんが・・・・
最終話だったけど、文字数オーバーの為、最終話その2へ。