ジャンル：一般犯罪
製作国：アメリカ
監督：シドニー・ポラック
愛するポイント：とにかくかっこいい健さんの殺陣に魅了されるハリウッド製任侠モノ

映画を観始めた頃は洋画中心だったので、やくざ映画、いわゆる任侠物はあまり観てきませんでした。健さんこと高倉健が東映任侠路線で人気を博していた時期のすぐ後、丁度健さんが別路線への転身を模索していた頃からの映画ファンなので、任侠もの最盛期の健さんや藤純子(富司純子)　はほとんど観ていません。

それもあってか、ヤクザ映画は「仁義なき戦い」に代表される実録ものの方が好き、というかそもそもやくざ(a.k.a 暴力団員)という稼業が許せないので(当たり前か)、彼らをヒーローではなくクズとして描いた作品に好感を持ったと言うわけです。
というわけで、"やくざ"(または渡世人)の健さんを観たのは「ザ・ヤクザ」が初めてでしたが、健さんのかっこよさ、その殺陣の切れ味に一発で惹かれました。が、実のところ本作での健さんの役は"元"やくざであって、やくざではないんですよね。

そこに「ザ・ヤクザ」(本物のやくざ、的なニュアンスですね)と言うタイトルをつけてしまうあたり、メルヴィルの「サムライ」やトム・クルーズが活躍する「ラスト・サムライ」的な外国人によくある勘違い(ついでに言えば"ニンジャ"も同様ですが)を感じないでもありません。
と軽くディスリはしましたが、本作はやくざのしきたりや現代（といっても70年代ですけど）の暴力団化したやくざの実態などがよく描かれていると思います。とりわけ健さんのものの考え方や立ち居振る舞いは、市川雷蔵が武家くずれのストイックな侠客を演じた「ひとり狼」(1968)を連想させました。

アメリカ側の主役はロバート・ミッチャム。この時期のミッチャムはもはや大御所感がありましたが、若いからというだけでなく、かっこよさも迫力も健さんが上、と感じました。
とは言っても、同じく現代やくざが登場する日本を舞台にしたハリウッド映画で松田優作の遺作となった「ブラック・レイン」(1989)の主演マイケル・ダグラスと助演のアンディ・ガルシアに比べれば、その存在感は半端なく、大物スターらしさをいかんなく発揮していました。
ちなみに健さんは「ブラック・レイン」にも出演していますが、役柄上、および優作の鬼気迫る演技の前に若干影が薄めでした。

ヒロインの岸恵子もいい雰囲気でしたが、脇役ながら頑張ったのは「追跡者」(1971)「追撃のバラード」(1971)でバート・ランカスターと共演したリチャード・ジョーダン。この2本を愛してるからか何となく嬉しいキャスティングでした。

ブロトピ：2024/07/2

#97 ザ・ヤクザ The Yakuza (1974)

#97　ザ・ヤクザ　The Yakuza (1974)