2人の間に沈黙がつづく・・・
というより、みるくは何を切りだしていいかわからない。
えぬくんの冗談?と思ったのも初めのほうだけで嘘ではないことは何となくではあるが分かる。
正直背筋も寒くなっている。
ただ、本当に本当なのだろうか・・・
えぬくんが、丁寧に話してくれたこと。
あそこまで切羽詰まった面持ちで話すえぬくんを初めてみたこと。
確かに、最近毎日ご飯を誘いに来てたのもつじつまが合うし納得できた。
そして、朝の通勤も帰りも私を離れたところから見てくれてたという。
私も何か確かなものがほしい・・・みるくは確かめたいと思った。
「ね、、、えぬくん、明日会社休める?
そのアパートに連れて行ってくれない?」
「ダメだよ!」えぬるぎは声を張り上げる。
「お互いが目の前で自分を見てしまったら・・・分からないけど、多分大変なことになると思う。」
「大丈夫、ハチ会わないように遠くから・・・ね?」
みるくの言葉を問いに替え、えぬるぎの脳は瞬時に答えを出す。
確かに、もう一人のみるくを確認できれば、みるくも今以上に状況を理解し、これからの対応もしっかりできるメリットはあると思える。
もう一人の自分を見るべきなのかもしれない。
「分かった。外に出てくる2人を見つからないように遠くから。朝早くに行って見張ろうか。」
「ん、ありがとう。」
「みるちゃん、怖い?」
「うん・・・」
「あれなら・・今日うちに来る?いっ、一緒にね、寝ようか?汁」
「・・・そっちの方が怖いんだけど(爆)」
ようやく、2人に笑みが漏れる。
えぬるぎの冗談がありがたかった。
かたや、えぬるぎはやましい気持ちも混ざりかなり本気であったことは伝えておこう(爆)
翌朝、早くに合流し打ち合わせどおり若干の変装を済ませている2人はアパートの近くまで来ていた。
えぬるぎは、実家に戻り車を用意し、その車中に2人はいる。
上手い具合に路上駐車の車が何台かあり、不審に思われることもないだろう。
昨日話を切り出してからのえぬるぎは普段と違い非常に頼もしく思える。
「いつもこんな感じならな・・・」
「え?みるちゃん何か言った?」
声に出てしまったらしい。
「何でもないよ(汗)出て・・・来るかな・・・」
「こればっかりは分からないからな。とにかく出てくるのを待つしか方法はないし。」
既に時計はお昼12時を過ぎている。
未だに2人は出てこない。
そんな時、えぬくんに言われたドアが開いたのが見える。
「みるちゃん!出てくるよ。」
一人の女性が思いつめた表情で、こちらに向かって歩いてくるのでドキリとしたが、2人の乗った車を気にせず通り過ぎて行った。
「・・・私だ。間違いない。」
心臓が止まりそうになった。
えぬくんの話を信じたからここに来ている。
実際この目でもう一人の自分を見てしまうと、分かっていても混乱しそうになる。
「理解してくれた?間違っても嘘は言ってないこと。作り話じゃないんだよ。」
「私どうすれば・・・いいの?えぬくん。」
やはり、実際目にした事で、みるくも真剣にこの後の対応をしてくれそうだ。
ここに来て正解だった。
「アルっちは見てないけど、いいよな?とりあえず場所を変えよう。」
みるくの返事を待たないまま、えぬるぎは車を走り出させた。
朝から、何度か見に来ているが居ない・・・。
「みるくさんは、お出かけですか?」
「熱が出たとかで今日休んでるよ。何か用事?急ぎなら連絡取ってみようか?」
みるくの席の横の上司でもあるいくしんは応える。
「あ、大丈夫です。来たときに直接頼みます。」
休みか・・・・
この世界線で、存在してはいけないもう一人も消え既に一人になっているアルは、次の行動に出ようとしていた。
また来週!