青春のアフター(2) 緑のルーペ 「俺には面白かった」 | 墜落症候群

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墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

青春のアフター(2) (アクションコミックス(月刊アクション))
緑のルーペ著
エディション: コミック
価格: ¥ 670

6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 「俺には面白かった」, 2016/3/12

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レビュー対象商品: 青春のアフター(2) (アクションコミックス(月刊アクション)) (コミック)
今巻も楽しめました。
作品のレビューでよく、ネガティブな方向に尖った作品に対して、「俺には面白かった」(しかし万人にはオススメできない)というコメントを見かけたりしますけれども、むしろ万能で何でもできる、自分から行動するヒーローのような主人公よりも、この作品の主人公のように、何かに執着してしまったがゆえに、底辺を這うような人生を歩むことになる主人公の方が、共感を集める時代性にはなってきた気はします。
前巻で主人公は、ゲーム会社に現在は勤めているということになっていたから、何だかんだでトラウマを乗り越えて社会復帰したんだろうなー、とか思ってましたが、俺の想定より一段階くらいは、彼の燻り期間は長かったことが今巻では明らかになります。
前巻の主人公の心の中、消えてしまってそして現れた初恋の女の子を取るか、現在付き合っている彼女を取るか、みたいな心情的二者択一の流れは意外にもリセットされ、この巻ではむしろ高校生ヒロイン・さくらが主人公の献身的、あるいは依存的な過去に触れるという展開になっています。ここで言う過去とはさくらが世界から消失していた時期。主人公大学生辺りの話。
そしてくり返される『あのシーン』のリフレイン。
よくあるラノベやエロゲなら、主人公の主観的モノローグを貫いて男性読者への感情移入を促すんでしょうけれど、思っていたよりは群像劇っぽいかも。そこら辺は、ガーデンとかでも軸のあるオムニバス風の作品を描いていた作者の表現の方向性の名残なんでしょうか。
どちらかというと、主人公の依存性が他にはない特別として評価される流れなので、一巻ほどは心を抉られず、若干残念ではありましたが、この系統の作品はなかなかお目にかかれないこともあいまって、読み終わった今の心境としては、早く続きを読みたいという感じ。
前巻ほど痛くはないですが、前巻を楽しめた人ならきっと今巻も楽しめます。

……それにしても、主人公が羨ましいとまでは思えませんけれど、何か心を捧げる対象のある人生は、それはそれで素敵だよな、とか思っちゃいますね。





◆青春のアフター(2) (アクションコミックス(月刊アクション))◆