夜花火の進行。 | 墜落症候群

墜落症候群

墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

 夜花火。

 二部構成の小説。昼間の部である昼朝顔が遭遇編というか、伏線が張られる部で、夜間の部である夜花火のお祭りにて、登場人物の物語が交錯することになる。
 昼朝顔の部。
 主人公編。主人公の大学紹介。主人公と友人のやりとり。友人は従兄妹の一回忌の前で、暗く沈んでいる。従兄妹をどのような視線で見ていたかについて。大学の名物男である仮面の彼に謎の液体を勧められる。友人と別れた後、白髪の大学学生服を見つけ、奇異の目で見つめる。
 白髪男編。大学生のように振舞っている男の話。桜の樹の根本で昼寝をしていたところから目を覚まし、大学の近くにある公園に赴く。そこでは、雀が虐待を受けており、それを助ける(スタンガンを代わりに受け、少年たちに逃げられる)。雀には詳しい男だが(バードウォッチングしかすることがない時もある)、その雀は目にしたことがないと思う。鶴の恩返し、あるいは浦島太郎を連想する。
 記憶喪失の男編。炎天下の中、男は自分が記憶を失っていることに気がつく。自動販売機の横に嵌っているような少女に気が付き、彼女の人探しを手伝うことになる。
 夜花火の部。
 白髪男編。祭りに出向いた男は、唐突にミニの浴衣を着た、華やかな女性に話しかけられる。大変面食らった男は、しかし、話を勧める内に、彼女が以前に助けた雀の化身であることに気が付く。自らの身分を明かした男は、女生と共に、祭りを楽しむ。
 狐面の男編。大学の名物男である彼は、神々の戦いの決着を見物に行く。
 記憶喪失の男編。少女を連れて祭りに来た男は、彼女の探し人を発見する。彼は自分の役割を思い出す。
 主人公の友人編。相変わらず、気分の晴れない彼は、主人公と共に、祭りに繰り出す。イチャイチャしている大学学生服の変人にリア充爆発しろ、と思ったり、狐面の男を見かけたりした後、暑苦しい黒衣の男を目にし、何故か涙を溢れさせて、主人公に引かれる。
 花火を見た後、大きな何かが天空に昇るのを見たように感じ、自分の心の中で、従兄妹についての煩悶に何らかの決着がついたように感じる。