カゲプロ想像小説リライト。第57話。『断章』2(完)。 | 墜落症候群

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墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

 第57話。『断章』2。



「『時限爆弾』が爆発するまで、あと5分です……!」

 緊迫感が溢れ、

「僕たちの力がやっとここで活かせる……」

「私たちのあの夏の悪夢は、きっとこの為にあった……」

「君たちは本当に頑張ってきたんだね」

 『クロック』が発動し、ジャンによりアシストされ、『社会的弱者互助集団』である『メカクシ団』は今回も奇跡みたいな逃げ切りを決めて。

 そして、Cの何気ない発言にヒヨリがツッコミを入れたり、コノハの運動音痴が暴露されたり、コノハはキドが背負えば良かったとトガが言い出して逆に叱られたり、カノがいつも通りに調子に乗ったり、ルナに対するエネの禁断の愛が垣間見えそうになったり、ルリが泣くから帰ろう、等とキドが場の収拾を何とか付けようとしたり。

 そんなハッピーエンドのはずの、これ以外ないはずの結末の中で、ただ1人キドは違和感を持っていた。

 何かがおかしい。

 彼女の耳は、誰かの嗤い声を捉えた気がしたが、直にこの印象は薄れてしまった。

 私が経験してきたのは、本当に本物の現実だろうか? どこか虚構じみた夢ではないのか?

 この結末に疑問を感じている自分の方が異常にも想えて、キドは皆と調子を合わせていった。

 このキドはまだ『運命の女神』の存在を知らず――。

 そして『メカクシ団』が『運命の女神』と対峙するのは、キドが『女神』(アフロディテ)を獲得してから更に後――今から10000年以上も先のことになる。