TIPS4.恋心 2011/2/13 高校 ボマー | 墜落症候群

墜落症候群

墜ちていくというのは、とても怖くて暗いことのはずなのに、どこか愉しい。

 教室の学校で前髪を触りながら、彼女になにげなく僕は視線を送った。
 慌てて視線を逸らす……。
 いくら超能力が使えるとは言っても、それは恋愛には役に立たない……。
 僕の爆破の能力は何に使えるというんだ?
 例えば、彼女の心臓に爆弾をしかけて、
「解除してあげるから、僕と付き合って」
 とか?
 いやいや、ムリがあるだろう、それは……。
 まず、僕の爆破は起爆まで3分以内という設定で、それは変更できないし、解除もできない。
 使いづらいっちゃ、使いづらい能力だよなw

 そして、僕は確かに超能力者だけれど、メンタルは結構、普通の高校生だよな、と再確認する。

 何となく数学の授業を聞き流しながら、僕は思うんだけれど、彼女のどこが僕は好きなんだろうか?
 まず、あの長い黒髪が好きなんだと思う。あんなに伸ばしているのは、そしてその髪で高校に通っているのは少し時代錯誤な感じがするけれど、スカートにかかるまで伸ばしたヘアスタイルは彼女ととても良く似合っている……。
 そして、立ちふるまいが多分好きなんだと思う。
 きびきびとした動作が、たとえば物に接する瞬間はふんわりとやわらぐ……きっと物を大切にする気持ちが、動作にも現れているのだろう。
 彼女は、友人との会話の中では、あまり主張の強いタイプではなくて、少し引いたようなスタンスを取るものの、しかし意見を言うときは容赦なく刀を抜くように発言で斬る……その凛とした姿は、森の中で一輪だけ輝く白百合のようだ。
 ……とか言うとさすがにポエマーだけど、まあ好きな娘に対しては自分のモノローグの中でくらい、ポエマーしてもいいじゃんか……w

 冷たいように見えるが、それはきちんと意志と節度を持って、他人と接しているからだ。
 そこはまったくの静謐の中にいる、生徒会長のような女子とは違う……あの人は彼女と少しだけ似ているが、それは表面的な印象に過ぎず、彼女が夜なら、あの人は空白だ。
 生徒会長のことが、僕は少しだけこわい。
 あの人は……どこか人間離れしている。静か過ぎるのだ。

 数学の授業で一度当てられたけれど、僕はチョークでゆっくりながら確実に回答を書く……勉強が難しいと感じたことはない。
 しかし、学校の勉強に価値があると思ったことも、一度もなかった。