「ミックスジュース2つとレイコー2つ」

古ぼけた喫茶店で、彼の同僚のマルさんの声が響く

「レイコーって何ですか?」私はマルさんに聞いてみた

「ああ、アイスコーヒーですよ。昔の大阪の人は、レイコーって言ってたみたいで、ここのマスターも、未だにアイスコーヒーって言っても、聞いてくれないんでね」
マルさんは小声で「見たとおり、店もマスターも昔のままですよ」と言った

確かに、お世辞にも今どきの素敵なお店とは言えないけど、手入れのされたレトロなお店だとは思った。

「よく来るんですか?」私の問にマルさんが
「仕事中に、考え事をしたくなったらここにくるんですよ。ここで色々考えたり、商談したり」

そこへ彼が「良いように言いすぎでしょう、ただサボってるだけじゃないですか」

「いやいや何を言うとるん、羽休めがあるからまた羽ばたけるんやで」「ヒロももっと休まなアカンで、渡り鳥みたいに飛びっぱなしやと、しんどいで」

ヒロさんって言うんだ…
マルさんの名前は彼が呼んでたからわかったけど、彼の名前はやっと知れた

名前しか知らないのに、少しだけ近づけた気がした

「本当にマルさんは、相変わらずですね」友達のチカがマルさんに呆れる様に言った

「お褒めいただきありがとう」マルさんの言葉に
「褒めてません!」とチカとヒロさんの声が重なり合った

この時は、楽しかったけど、少しだけ胸の奥に違和感があった