彼との衝撃的かつ変態的な出逢いと、愛に至る道のりを語っていきます。

 

これは彼との愛の物語


 Yへの報復作戦をすっぽかし、Hとも連絡を絶った。その後Yからの音沙汰もない。噂によると前々から派手に遊んでいて、他の女の子にも酷いことしたり法に触れるようなことをしてて逮捕されたとか。
 もしくはやっぱりYとHがグルで、私のイカれっぷりに恐れをなしたものか。そりゃ、スタンガンまで購入して病院から危険な薬剤を持ち出してやる気満々のイカれ女を敵に回したら何をされるやら。
 ともかくも、これで平和な日常が戻ったものと思われた。

 彼は前から、いつも仕事帰りにはスロットに行ったり趣味の時間を持ったりしてすぐには家に帰らない生活をしていた。彼の妻は夜専の仕事をしており21時頃に家を出るので、平日はほとんど顔を合わせることもないのだとか。
「早く帰ってもつまらんしなぁ。嫁と顔合わせても文句言われるばっかりやし」
 彼はよくそうぼやいていた。
 だから彼は平日夜の時間は自由がきいた。当時の私は子どもが小学校に上がったのを期に常勤となって夜勤もあったので、夜の外出は難しかった。そこで合唱サークルに参加すると偽って週に一度は確実に外出できる時間を確保していた。

 週に一度の甘い夜。彼と私のデートはいつも夜の公園だった。
 お洒落なレストランでお食事して、夜景の綺麗なところや海へドライブ…なんてロマンチックなデートではなく、なんの変哲もない夜の公園だ。
 彼の趣味のためである。彼の趣味は覗きだ。夜の公園やショッピングセンターの駐車場でカーセックスをしているカップルを覗くのだ。
 それを聞いたときは驚いたけれど、経験談や覗きのテクニックをあんまりにも楽しそうに話すので、なんだか笑って受け入れてしまった。
 そしてまず足を運ぶのが、初めてのデートで行った公園。その筋の人たちがハッテン場と呼ぶ場所のひとつだった。カーセックスを楽しむカップルやそれを覗く人、露出狂や女装男子など、様々な性癖を持つ人が集まる場所なのだ。
 あの日彼と話していた男女もSM露出カップルで、何度か顔を合わせた。いつも誰かいるわけではないが、徐々に顔見知りが増えていった。

 彼と行動を共にするようになって2ヶ月ほどが過ぎた頃、いつもの公園でまた彼の知り合いに出会った。私は初めて会う人たちで、その人たちに彼は私をこう紹介した。
「俺の彼女」
 嬉しかった。まだこの頃は自分の立ち位置がよくわからなくて、彼にとって私はただのセフレに過ぎないのかもしれないと思っていたから

 初めて好きなひとに抱かれて身も心も満たされることを知った私は、これまでのセフレたちに別れを告げた。ほとんどの人は潔く身を引いてくれたけれど、何人かはしつこく食い下がってきた。
 その中でも最後までつきまとって、私を悩ませたのはNだった。50代後半を自称してはいたが、見た目的には60代半ばといったところ。U字ハゲで眉毛ボーンの、おじいちゃんという呼称の方が相応しい醜悪な年寄りだった。
 しかし近年妻を亡くして寂しいのだと言うNに同情したこともあり、誘いを無碍に断ることもできずにいたのだ。強引な男で私の都合も構わずに呼びつけるので、嫌気がさしていたところではあった。
 それが別れを告げると、脅迫者へと変わった。
「その男(彼)の居場所突き止めて殺してやる」
「もう会わないって言うなら家族に全部バラしてやる」
「離婚したらオレと結婚するって言ったやろ!裏切るのか!」
 冗談じゃない。「嫁にもらってやる」とNが言うのに「はいはい」と軽くあしらったのは覚えているけれど、本気で結婚なんて考えるわけがない。当時38歳だった私が自称年齢が本当だとしても20歳も年上の醜男に惚れるなんて本気で思ったのだろうか?鏡を見てからものを言って欲しいものだ。
 そこから先が大変だった。一日に何十件というメールに電話。職場で待ち伏せもされた。完全にストーカーと化していた。