彼との衝撃的かつ変態的な出逢いと、愛に至る道のりを語っていきます。

 

これは彼との愛の物語

 
 COVID-19が世界を震撼させた。皆がマスクをつけて外出を控えて家に閉じこもる。飲み会もなくなって夜の街から灯りが消えた。
 人の姿が消えたのは、街ばかりではなかった。夜の公園でたむろする人の姿も消えた。
 この頃は彼は週に2〜3回は、仕事終わりに私のマンションを訪れていた。早く帰っても嫁の小言を聞くだけだからと、うちで私の手料理を食べてシングルのパイプベッドで肌を合わせる。
 コロナのおかげで夜の街に繰り出しても、カーセックスを楽しむ男女も覗きの男も、女装やゲイすらも姿を見せない。
「出かけてもつまらんからな」
 彼がそう言って外出を面倒臭がるので、すっかり狭いマンションの一室が私たちの居場所になっていた。
 しかし時折首をもたげてくる彼の変態趣味に悩まされることになった。息子にセックスを見せたがったり、窓を開けてわざと外に声が聞こえるようにしたり、私を裸で窓際に立たせてバックで突いたりと。
 それはまだ笑って許せる。彼の露出願望を満たせるならそれでいいし、むしろこんなにも素敵な男性に愛される自分を見せることは誇らしいくらいだ。
 しかしまた別の思いに私は悩まされることにもなる。

 この頃の私は部署異動で病棟勤務に変わっていた。前までの透析室なら週に1〜2回の夜勤で日付が変わる頃には帰れていたし、日曜定休だから予定は立てやすかった。それが完全に3交代シフトになるとなかなか彼と都合が合わせにくい。
 会えるのは私が夜勤や遅番ではない日で、彼が仕事終わりにうちに寄る時間がある日ということになる。結果うちに寄る頻度は増えたけれど、私はいつも彼を待つばかり。
 今日は来るだろうか?来ないだろうか?そう思いながら無駄に3人分の夕食を作って待つ日々が過ぎていく。
 彼はいつも、うちに寄ることを事前には連絡してこない。仕事が終わってから気が向くと、予告なくうちに来る。だから私は夜の外出を控えて家で待つのだ。
 彼が予告しないのは、サプライズが好きだから。夜勤明けで眠っているところへ静かに入ってきていつの間にか隣で寝ていて、起きて驚く私のリアクションを楽しんだりする。
 それとは別に、彼の思いやりでもある。朝や昼頃に予告してしまうと、急な用事や残業で来られなくなったときに私ががっかりするだろうという彼なりの気遣いなのだ。予告があろうがなかろうが会えない日はどちらにしてもがっかりするのだということを、彼はわかっていない。
 そして彼が来ても、ただ一緒に食事をしてセックスをして、ただ彼を見送るだけの生活。一緒に出かけることもなく一緒に眠ることもなく、ただ妻のもとへ帰っていく彼を見送るだけ。私のたまの土日の休みも、彼は妻と息子が家にいれば出かけることができないからデートに出かけることもない。
 これじゃ私、都合のいい女だな…。いつしかそう感じるようになっていた。

 不毛。私とは会う日の約束さえしてくれない。会ってもセックスをしたら帰ってしまう。
 他にいい人を探した方がいいのだろうか?彼は妻とは別れない。いつまでも私は都合のいい女で、いつか彼が定年を迎えて仕事にも行かなくなったら、もう会いにも来ないのではないか?
 でも、もし彼と別れたとして、他に愛せる人ができるだろうか?否、彼以上に愛せる人なんてできやしない。彼の全てが好きだから。45年生きてきて、こんなにも愛しく思う人は彼ただ一人だけだから。
 会えない時間は不安で寂しくて。それでも顔を見れば、愛しさが込み上げる。いっそ彼を嫌いになれたら楽になれるのに。
 

 
 
 
 
 
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