あの夜は、仁の家へ泊った。
ALIは、リビングのこたつで眠ることになり、千代は仁の書斎で・・・
突然の来客に、雪枝の飼っていたペットたちはALIを警戒するように
遠巻きにこちらをうかがっていたし
他人の家の生活臭というのはなんとも落ち着かない。
それでもALIは、現実を忘れるように深い眠りに落ちた。
朝方、あれはまだ暗い時間・・・
千代はALIを起こし
眠たい目をこすりながらALIは仁の車に乗り、家に帰ることが出来た。
なぜ、こんな早くに・・・と思ったが
答えは単純だ。
私たちは、仁の近所の住人誰ひとりとして、目撃されてはいけない存在だから。
そして、その次の日も
ALIは、雪枝の作ったご飯を食べるハメになる。
「ママ・・・ALI嫌だよ。
パパの家には行きたくない。」
ALIはあの雛人形が、とにかく嫌だった。
こそこそ他人の家に入り、知らない人が使うこたつで眠る。
それならば、自分の家にじっとしていたい。
仁が思うほど、ALIは仁の家の骨董品やペット
カラオケなどに何の興味もそそられなかった。
ALIの気持ちが通じたのか、千代は仁にALIの体調が優れないことを理由に
留守番をさせることにした。
千代を迎えに来た仁は、何やら小さな紙袋を提げていた。
「ALI、いいこで留守番するんだぞ。
それから、これは夕飯だ。
食べたら、洗わずにそのまま、パパに返すんだ。」
そう言って手渡されたのは、昨日、仁の家で見たあのタッパーだった。
千代は、ALIにキスをして家を後にした。
「ごめんね。パパの言う事をきかないと
機嫌が悪くなってしまうから・・・」
わかってる。そんな事。
ママだって、あの家に行きたいはずなんてない。
ALIは千代を笑顔で見送った。
服をあまり持たない千代は、昨晩と同じジャケットを羽織って、出かけて行った。
後にこのジャケットが、ある事件のきっかけになるとは
それを身に着けていた千代自身、思っていなかった。