或る愛のうた~不倫、愛と憎しみの残骸たち~ -28ページ目

或る愛のうた~不倫、愛と憎しみの残骸たち~

不倫、生と死を見つめる、本当にあった壮絶な話

笑顔を捨てたALI。

安らぎのない擬似家族。

喜怒哀楽を共有しないという事は、怒りの感情も、嬉しさも、何も持たないという事だ。

それは無関心という言葉もあてはまる気がする。

そんな小さな反抗心を

仁や千代に気付いて欲しいという甘い期待は毛頭なく

とにかくこの家族に参加したくないという自己防衛からくるもので

ALIは全ての感情のスイッチを彼らの前ではオフにしていた。

だから、仁や千代に対してあからさまに睨んだり、ぶすっとした顔で食事をとったりはしない。

それは結局家庭の中に嵐を起こすだけでALIだけが損をする事がわかっていたからだ。

あの3人で過ごした時間の大半は

ALIはうすら笑いや愛想笑いで場をしのいでいたし

いかに無関心、平常心を保って生活するかが一番重要なことだった。

勉強を理由にすれば、仁も千代も何も言わないという事はわかっていたから

外食の誘いや、花見、紅葉などの行楽もやんわりと断り

彼らが家に居る時はALIは自室にこもって、ひたすら勉強に打ち込んだ。



いつか、この家を出よう。

ALIは18という年齢をひとつの区切りと定め

それがこの偽家族解体の日と心に決めていた。




その頃、ALIが仲良くしていた友達のひとり、愛。

愛は、親も自営できちんとした学歴を持っていたため

ALIとの交友を仁に認められた子だった。

真面目な外見とは裏腹に

愛はALIと似ていて心に闇を秘めたところがあった。

小さな頃から頭のいい子、将来を期待された子

愛の家もALIと同じく学歴主義のところがあり

愛はよくALIの家に遊びにきていたが

逆にALIは愛の両親からは片親という理由で嫌悪され彼女の家には行きにくかった。

その当時、愛とALIの間で流行っていた遊び。

それはALIの部屋で、ひそやかに行われる禁じられた遊び。

ALIの家は

不良在庫のAVビデオが倉庫と称したある部屋にうずたかく積まれていたのだが

愛とALIはそれを二人で鑑賞するのだ。

私たちは中学生、どうしたら子供が出来るのか、教科書では習っていたけれど

実際にそれがどのようなシチュエーションで、またどんな風に行われるのか興味津々だった。

映像で見るそれは、ALIが小さな頃から子守唄代わりに聞いていたあの声と同じ。

愛は見終わるといつも

「イク!」ってどこに行くんだろうね?と不思議がっていた。

それにあのモザイクの部分はどうなっているんだろう?

男の人があんな風に動くことで、本当に女の人は気持ちよくなれるのか?

実際に経験のない私たちは疑問だけが残り

テレクラで直接男の人に聞いてみようということになった。

今と違い公衆電話は帰り道の至る場所にあり

放課後に愛とテレクラに電話をかけるのが楽しかった。

性交渉の疑問点解消を目的とした、単なるウサ晴らし。

親に勘当されて行く当てのない家出少女、彼氏に振られて傷心の女子高生

私たちは様々な役を演じ

同情してくれた男性軍をあざわらっていた。

≪え~会ってくれるの~?でも、今までの話ぜ~んぶ嘘だから!!≫

放課後どんなに悪い遊びに没頭していても、家に帰ると真面目ないい子に戻る。

それがALIと愛の共通点だった。

あじさい