第19章    外堀 | 或る愛のうた~不倫、愛と憎しみの残骸たち~

或る愛のうた~不倫、愛と憎しみの残骸たち~

不倫、生と死を見つめる、本当にあった壮絶な話

千代と仁の距離を縮めたもの、それはALI。

仁はALIに初めて会った時から


     「なんてかわいい子供なんだ。

      こんなかわいい女の子は今まで見たことがない!

      それに優子ちゃん(千代の源氏名)に似て賢そうな目をしている。」



と褒めちぎった。それが本心から出た言葉なのかはわからない。

しかし千代が仁に気を許すには、まずまずの材料にはなる。

実際、ALIは続く環境の激変によって人見知りをしない、おしゃべりの上手な快活な子供に育っていた。

何回か、ALIを交えて食事をするうちに仁はALIに問いかけた。


      「ALIちゃん、パパは欲しくないかい?」


それは、千代にとってプロポーズを意味する。

仁は会うたびに「ALIを自分の子供にしたい。君のことも愛しているが僕はALIのことも愛している。」

と千代に訴えていた。「君たちを幸せにしたい。」と。


     「うん!!ALI、パパが欲しい!これからはおじちゃんがALIのパパになるの?」



大人の策略など知る由もない、まだ幼い純真なALI。

その日のうちにパパ、パパと連呼し今まで以上に仁になつくことになる。



仁はALIの気を自分に向かせるためのサプライズも怠らなかった。

ALIの欲しがる物は何でも買い与えた。

犬が欲しいと言えば、迷うことなくペットショップへ行き目の前で選ばせたり

お菓子もおもちゃも、ALIの喜ぶ顔が見たいからと言って千代の制止を振り切って買うのが仁のやり方だった。

まずは、外堀から・・・

仁の考えそうなことだし、また仁にはそれを実行できるだけの財力も備わっていた。

千代の迷う気持ちをかき消すほどの速度でALIと仁の仲は深まっていく。





男女の気持ちが近づくにつれ、燃え上がるのは嫉妬の炎。

千代は相変わらず《小春》でホステスを続けていて、指名客も増えるばかり。

綾子ママが出す2号店のママは千代だろうという噂も流れ始めていた。

仁は千代に会うたび現金を渡し


       「店を辞めて、早く僕だけのものになってくれ。

        これからの生活は何も心配しなくていいから。」



とたびたび懇願していた。

千代は仕事を辞める勇気、収入が絶たれるやもしれぬ恐怖、仁の言葉を信じきれない不安

いろんな気持ちの交錯する中で、これからの自分の人生を決めかねていた。




そんなある日、

千代の決意を固める事件が突然起こる。


あじさい