前期生自主公演(新入生歓迎公演)
脚本候補を検討中
「書いたら?俺手伝うよ。書いた方が絶対楽しいと思う」
「いやー、なんも浮かばないっす」
「アイデアだけでもくれたら、俺が素案を作るから、
そこからみんなで考えながら少しずつ完成させたら?」
「いやー、難しいっす」
生徒たちから信頼されていないのを感じる
口にはせずとも、露骨に避けられている
結局彼らは出来合いの、ネットで拾った
適当な脚本を選ぶんだろうな
でもさ、漢字すら読めない高校生向けの脚本を
中学校1年生が演じるのって滑稽過ぎない?
彼らに、ちゃんと成長できる芝居をさせてあげたい
彼らに最適なものを書いてあげたい
決して彼らに押し付けるわけじゃなく
彼ら自身が作りたいものを引き出してあげたい
もっとお芝居の楽しさを教えてあげたいし
もっと彼らの限界を高めてあげたい
悔しい
悲しい
苦しい
なんで俺はこんなに
何もできないんだろう
せっかく人生で初めて、自分の専門といえる部活動の
顧問になれたのに
一部の生徒から敵視されているのは
ずっと肌で感じてるよ
ただ、俺は彼らに必要な指導をした思っているし
そこはブレないよ
お前らが勝てなかった理由も足りない努力も
全部わかってるよ
たとえ嫌われても雰囲気が悪くなっても
言うべきことを言ったよ 教員だから
ただ、もういいかな 面倒になってしまった
こんな嫌な思いしてまで彼らの芝居に関わりたいとはもう思えない
だって全部、時間外の違法労働だしね
ここで神経擦り減らすのはおかしいよね 土日までずっと
もう一人の「あの顧問」がいる限り
俺はもう何も言わないようにする
良い演技があれば褒めてやるくらいか
あとは黙っておくよ それが望みだろ?
ああ、演劇部の顧問になるって
こんなにつまらないことだったんだな
演劇部の顧問になるの、
夢だったんだけどな
夢がひとつ叶って消えた
俺は40歳になった