事例:Xは、Aを殺すつもりピストルを発砲したら、弾丸がそれてAの隣にいたBに当たり、Bが死亡した。


 具体的事実の錯誤がある場合、故意があるといえるか。いかなる場合に故意ありといえるかが問題となる。


 思うに故意責任の本質は、犯罪事実を認識し規範の問題に直面したにもかかわらずあえて犯罪行為に及んだことに対する道義的非難


 そして、規範は構成要件の形で与えられている。


 そこで、認識事実と発生が同一構成要件内で符号する限り、故意は阻却しないと解する。


 故意の個数を問題にするべきか。


犯人の想定以上の数の客体に犯罪結果を発生させた場合に問題


 思うに、法定的符合説からは故意は構成要件の範囲内で抽象化されており、故意の個数を観念できず、その個数は問題とならない


 また、故意の個数を問題とせず複数の犯罪が成立したとしても観念的競合(54条1項前段)として処理されるため、量刑が不当に重くなることもない。


 そこで、複数の故意を認めてよい


 上の例では、XにはAに対する殺人未遂罪とBに対する殺人罪が成立する。

XがもともとAのみに対して殺人の故意を抱いていた場合のみ、故意の個数が問題となる。XがBに対して未必の故意でも抱いていた場合にはこれは問題とならない。