《蘭》は、昭和45年3月30日に新発売されたロングサイズのフィルターたばこです。今回は《蘭》のパッケージに見られる変遷をご紹介します。
パッケージは〚日本専売公社〛が用意した普通たばこの銘柄では2種類目となる【ハードボックス】で発売されました。【ヒンジリット型】と呼ばれます。昭和41年の《こはく》に続く銘柄です。
記念たばこの【ヒンジリット型】では〈英国博覧会〉が《とうきょう64》を台のたばことして、
昭和40年9月に発売されていますので、普通たばこと記念たばこを合わせると3番目となります。
【ヒンジリット型】の《蘭》には発売当初から4年間ほど、蓋を開けた時にたばこを引き上げるための補助テープが装填されていました。昭和49年(1974年)3月に廃止されています。
和風を意識した銘柄です。この当時横文字の名称が多く見られる中、なかなか珍しいネーミングです。漢字一文字の銘柄では昭和42年発売のメンソールたばこ《泉》に続いて名づけられました。
この頃〚日本専売公社〛の輸出たばこには漢字一文字の銘柄が続いていました。デザインが《蘭》と似た赤と白のツートーンカラーの《祭》=まつり、他《碧》=あお、など、全4銘柄が存在します。
他に《ハイライトエキスポート》の《燦》=さん、《都》=みやこ、の2種類はクロスライセンスにより海外で製造された事が分かっています。4銘柄ともクロスライセンスだったのかも知れません。
《蘭》と配色がそっくりな輸出たばこ《祭》=まつり
丁度この頃、〚日本専売公社〛では【クロスライセンス】製品として、海外の4銘柄が製造されていました。《オールドスプレンダー》《マールボロ》《ベンソン&ヘッジス》《アスター》です。
国内の普通たばこを見ても〈フィルターたばこ〉の仲間は横文字が多いのですが、漢字一文字の銘柄は忘れた頃に登場しています。《泉》《蘭》《峰》《雅》《匠》などがあります。
《蘭》は昭和53年(1978年)6月で製造中止になりました。販売期間は8年3ヶ月です。10代の頃は時間の経つのが遅く感じられていましたので、けっこう長期間販売されていたような気がします。しかし今振り返ってみると、8年なんてそんなに長い期間だったとは感じられません。
販売期間中、全銘柄に共通するパッケージの変更は健康表示の印刷と ≪np≫ マークの2回だけなのですが、《蘭》では独自の変更がいくつかあります。それも箱の内側なので表からは分かりません。
箱を開けてからその変化に気付くと言う、なかなか面白い銘柄です。
【ヒンジリット型】には、共通した変化がひとつ見られます。昭和51年(1976年)頃のことです。蓋の部分で、内側に折り込まれた場所の片隅が三角形にカットされました。
紅白のツートーンカラーですが、白地部分は僅かにパールがかった白で印刷されています。このパールホワイトにはいろいろな色調が見られ、純白から肌色系統やオフホワイトなどが見られます。
こちらのロングサイズ《蘭》は《チェリー》の発売から15日後に販売を開始しました。フィルターたばことしては、〚日本専売公社〛による19番目の新製品となります。
昭和50年(1975年)頃より、当時集めていたたばこは全て開いています。1972年に刊行された〚日本のたばこデザイン〛にペーパーの展開写真が掲載されていて面白いので真似をしてみました。
金色で蘭の花が描かれ、その下にローマ字で品名が書かれていてとてもしゃれたデザインです。
たばこに名前が印刷されていた頃にはイラストが多くみられます。フィルター部分に名前が移動してペーパーの印刷が姿を消した現代より、風情があって見栄えが良いと感じます。
サイドに四桁の数字が印刷されています。上二桁は製造工場の番号で、下二桁はその工場の製造機械の番号だと聞いています。3番工場の45号機と言う事です。製造履歴が分かる数字の記載が始まったのは、昭和44年(1969年)5月からです。
手元で確認している《蘭》の変化
① 昭和45年(1970年) 3月30日 新発売
② 昭和47年(1972年) 7月 健康表示 印刷
③ 昭和49年(1974年) 3月 インナーフレーム 白無地に変更
④ 昭和49年(1974年) 9月 蓋の内側 白無地に変更
⑤ 昭和50年(1975年) 7月 ≪np≫ マーク印刷
⑥ 昭和50年(1975年)12月 蓋の内側 片方の隅を斜めにカット
〚日本専売公社〛の時代、《蘭》の定価改定は最後にまとめて掲載しています
蘭
①昭和45年(1970年)3月30日 発売 定価 120円
インナーフレーム ツートーンカラー
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蓋の折り込み部分 ツートーンカラー
②昭和47年(1972年)7月 健康表示
【インナーフレームの印刷色変更】
サイドに健康表示が印刷されました。《蘭》の販売期間中、共通する変更はこちらと ≪np≫ マークの印刷だけです。《蘭》に独自の変更がなければパッケージの変化は3種類と言う事になります。
インナーフレーム ツートーンカラー
↓
↑
蓋の折り込み部分 ツートーンカラー
③昭和49年(1974年)3月 インナーフレーム白無地
【蓋の折り込み印刷色変更】
蓋の補助をするインナーフレームが白無地に変更されました。外部からは分からない変化です。同時にこれまで煙草を引き出すための補助テープが用意されていましたが、そちらも廃止されています。
わずか半年間の販売で印刷が変更されますので、こちらのパッケージは短期間で姿を消します。その変更も蓋が閉じられたパッケージを見ただけでは分かりません。
インナーフレーム 白地
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蓋の折り込み部分 ツートーンカラー
④昭和49年(1974年) 9月 蓋の折込み白無地
インナーフレームが白地に変更されてから半年後の事です。蓋の内側に折り込まれている部分の印刷もこれまでは赤と白のツートーンカラーでしたが、白無地に変更されました。上蓋の内側なので、蓋を開けてみなければ分かりません。白地部分は、ほぼ純白のパールホワイトです。
インナーフレーム 白地
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蓋の折り込み部分 白地
⑤昭和50年(1975年)7月 npマーク印刷 定価 120円
昭和51年 2月まで、 (外装セロファン開封テープ白色)
昭和50年5月1日にはたばこの値上げが予定されていました。そこで沖縄たばこと《おおぞら》を
除く銘柄に新価格のマークが印刷されますが、国会を通過せずに値上げが見送られてしまいます。
口付きたばこ《朝日》はもともと値上げが予定されていないので印刷されていません。
npマークの印刷されたパッケージはごく短期間、何事もなく旧定価で普通に販売されていました。この印刷にはコレクター以外、一般の喫煙者はあまり気が付かなかったと思います。
底面に ≪np≫ マーク
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白地で切れ込み なし
結局、たばこの値上げはこの年に実施されます。昭和50年12月18日《朝日》を除く全銘柄に定価改定が実施されて、5割もの値上がりとなりました。新価格の製品には、新たに赤いシールが用意されています。外装セロファンに昭和51年2月まで貼付されていました。
昭和51年3月から ≪np≫ シールを貼付しないことを周知するポスターです。たばこ店の店頭に貼り出されました。サイズがB4判で長さが38センチ近いのでスキャナーに収まりません。
上下2枚の画像を張り合わせたので色の違いがありますが、一枚のポスターです。このポスターは、自宅と同じ商店街にあるたばこ店で貰いました。
昭和52年12月には法改正が実施されます。そこから値上げは国会の承認が必要なくなり、管轄大臣の認可で公社が独自で行えるようになりました。〚日本専売公社〛に限らず、〚日本国有鉄道公社〛国鉄の運賃も同じです。
《蘭》が廃止されると言う発表があった頃、6個ほど買い込んでそのまま放置していました。中にはたばこが入ったままです。たばこを入れたままだと茶色い水分が染み出してしまうので、私はほとんどのパッケージで中身を出して、綿を詰めておくように心がけていたのですが……。
昭和50年にこちらを含めて2個だけは中身を出して綿を詰めていますが、廃止の発表があった時に購入したパッケージはそのままの状態です。その内の1個はブログ用に最近箱を展開しました。
下に掲載のパッケージです。
⑥昭和50年(1975年)12月頃 蓋の折込みカット
表からは見えない部分ですが、上蓋の内側に折り込まれている部分の左端がカットされました。この変更は、昭和50年頃に実施されたようです。
そして、この変更は《蘭》だけではなく《峰》や《マールボロ》など【ヒンジリット型】と呼ばれるハードボックスタイプのパッケージには共通の変更で、全て同じくカットされます。
これは箱のまま残していた、最後に購入したパッケージです。これまで展開していなかったのですが、こちらのブログ掲載の為に切れ込み入りのパッケージが欲しくて、最近になって開きました。
↑
三角の切れ込み
〚日本専売公社〛の時代、《蘭》で実施された定価改定
昭和45年(1970年) 3月 30日 発売 定価 120円
昭和50年(1975年) 12月 18日 定価 170円
〚日本専売公社〛の時代のパッケージ変化はいくつか見られます。これは他の銘柄でも同じ事が言えます。《蘭》の発売期間に見られる共通した変化を挙げておきます。
● 昭和45年9月頃から、U字Ⅱ型包装ではサイドの白地部分の長さがレギュラーサイズ 59㎜
ロングサイズは 70㎜ となる。
● 昭和47年7月から、サイドに健康表示が印刷される。
● 昭和49年9月から、金色が彩色されている銘柄では、金付けが金インクに変更される。
● 昭和50年7月には、ごく短期間、パッケージに ≪np≫ マークが印刷される。
● 昭和51年6月から、U字Ⅱ型包装には、順次レジスターマークが印刷される。
〚日本専売公社〛の時代はパッケージの印刷もキッチリとしていて、印刷会社による変化が見られません。そのためこちらの大きな変更は共通しているし、各銘柄の変化もしっかり管理されています。
《蘭》の発売中に見られる、定価改定などによる外装フィルムの変化。
セロファン包装の第一号は昭和28年からで、高級たばこ《富士》の新発売の時だったそうです。
《蘭》の発売の時には既にセロファン包装が普及していて発売当初から装填されていたと思います。
● 昭和46年頃から、 外装セロファンが広く普及する
(旧3級品にはセロファン包装がありません)
● 昭和50年12月から、3か月間、外装セロファンに ≪np≫ シールが貼付される。
(セロファンのない旧3級品は直接シールを貼付)
● 昭和51年 2月まで、ごく短期間外装セロファンの開封テープが白色に変更される。
(セロファンのない旧3級品は暫定封緘紙)
外装セロファンが装填されなかった〈旧3級品〉の銘柄とは、両切りの《ゴールデンバット》と
《しんせい》、フィルター付きの《わかば》と《エコー》の4種類です。
次回は《蘭》の登場から半年後に新発売された《エポック》をご紹介します。〚日本専売公社〛の
フィルターたばことしては20番目の銘柄です。