【フクちゃん】は、昭和11年(1936年)1月より《東京朝日新聞》で連載が開始された4コマ漫画です。≪横山隆一≫ 氏の原作で、最初はわき役での登場でしたが主人公より人気が出たと言う事です。戦後もキャラクターグッズは作られていて、今も人気の高い有名な少年となっています。

 

【くるくるクルミちゃん】は、昭和13年から昭和15年にかけて《少女の友》に連載された少女漫画です。≪松本かつぢ≫ 氏の原作で、当時の少女たちからは絶大な人気を博していたそうです。

 

 

 

戦前にはどうもこの二人は一緒に用意される事もあったようで、私の手元にもセットのような二人が揃っています。陶磁器素材では土人形が多く、磁器人形でも作られているのでしょうが私はこれまで磁器製はほとんど見かけた事がありません。

 

漫画が連載されていた時代を見ても、大衆人形の世界では磁器人形が姿を消して土人形に変更されていた時代です。物資不足や、燃料が軍部優先になった影響だと思います。

 

 

 

 

一緒に見られる〈フクちゃん〉と〈クルミちゃん〉はいずれも5センチ~6センチ程度の小さな土人形です。〈フクちゃん〉は手にラッパを持ち、〈クルミちゃん〉は人形を抱えています。

 

                   フクちゃん

 

 

 

 

 

 

               くるくるクルミちゃん

 

 

 

 

 

 

          統制陶器〚日本玩具統制協会〛 シール

 

         この二人の背面には(統制陶器)のシールが貼付されています。

 

戦時中、玩具人形に制限がかかると(統制陶器)の認可シールが貼付されました。この時期に作られた大衆人形にも見られます。物資不足により磁器製だった大衆人形が土人形に替えられた時代です。

 

 

           査定之證 日本玩具統制協会 と印刷されています

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

顔に彩色されていない白地の〈福ちゃん〉もいます。時代が少し下って、ますます物資不足が深刻になり絵の具も省略されたと言う事でしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      また違うデザインで白地の〈福ちゃん〉と〈クルミちゃん〉が揃った姿

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         〈フクちゃん〉とセットのような〈クルミちゃん〉です。

 

 

 

 

 

 

〈フクちゃん〉も〈クルミちゃん〉も、二人とも戦時中に誕生しています。どの人形もうす汚れた姿をしていて、私にはそれが戦時中と言う時代を象徴しているような気がします。時代の証言者と言えるのではないかと思えてなりません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

               

           大きなサイズの〈クルミちゃん〉風?

 

人気の高かった〈クルミちゃん〉は、少女の土人形にも模倣された姿が数多く見られたようです。

クルミちゃん風の少女が何人も見られます。連載中の昭和13年~昭和14年頃にはまだ豊かな彩色で作られていたのでしょう。昭和15年頃には、大衆人形でも造りや彩色が粗末な人形が増えます。

 

 

 

 

 

まるで〈クルミちゃん〉のようですが、頭にリボンをつけています。絵を見るとリボンの姿も見られるので〈クルミちゃん〉なのだと思います。

 

サイズは9.2センチと大きな姿です。戦時中と言う騒乱した時代の土人形で、サイズが大きい割には状態が良い姿をしています。持っていた少女から大切にされていた事が窺えます。

 

                 高さ 9.2センチ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

姉妹でしょうか、少女二人が並んだ姿も見られます。年長の少女はまるで〈クルミちゃん〉のようです。こちらも土人形としては状態の良い姿です。当時の少女に大切に扱われていたのでしょう。

 

                高さ 10センチ程度

 

 

 

 

想像する事しかできませんが、これらの土人形で遊んで大切にしていた少年少女が初頭学齢期だったとすると、現在は90歳を超えていらっしゃるのでしょう。

 

 

〈フクちゃん〉も〈クルミちゃん〉も幼い子供の玩具なので、土人形には状態の良くない姿が多いような印象です。戦時中なのでなおさらです。

 

もちろん磁器人形でも子供向けは汚れた姿が多く見られますが、大衆人形の子供向けには水に強い【色止】加工の水洗いできる人形も見られます。