フィルターたばこ《やまと》は前回ご紹介した《こはく》と同じ昭和41年(1966年)12月1日より、2種類同時に発売されました。アイウエオ順で《やまと》を後にご紹介しています。

 

パッケージには《やまと》と平仮名で大きく描かれています。この文字は ≪藤原定家≫ の字と言う事です。漢字では日本人なら誰でも先ずは戦艦〈大和〉が思い浮かびます。戦争を想起させる名前なので、まだ戦後21年と言う当時の世相では使用されないでしょう。

 

日本を表す〈倭〉も《やまと》と読めますが、これはもともとは中国による呼び名で東南にいる民族を指す蔑称から始まります。邪馬台国論争に出てくる〚魏志倭人伝〛を知る人は多いでしょう。

 

中華思想の蔑称では、東西南北の蛮族を指す言葉として、東夷、西戎、南蛮、北荻の4族が有名です。東を夷(い)、西を戎(じゅう)、南を蛮(ばん)、北を荻(てき)と呼んでいました。

 

閑話休題……

 

 

〚日本専売公社〛では初めての〈フィルターキングサイズ〉です。欧米では古くから良く見られるようです。本土復帰前の琉球政府の時代にも1940年代からいくつか輸入されています。現在ではごく一般的になったキングサイズですが、〚日本専売公社〛では《やまと》から始まります。

 

定価は100円で《こはく》と同じ価格です。キングサイズとは言え、100円と言うのは当時としては高級たばこだったと思います。4年7ヶ月ほどの販売で、昭和46年6月には製造中止になります。全銘柄に共通する変化は見られませんが、品名のサイズが変更されて2種類が存在します。

 

中学の時まで販売していましたが《やまと》も私は全く知らない銘柄でした。高校3年の時に、地元の〚日本専売公社〛支局で拝見した1972年刊行の〚日本のたばこデザイン〛で初めて知りました。

 

前回ご紹介の《こはく》も同じですが、たばこを知らない子供には周りにその銘柄を吸っている大人がいないと知る由もありません。親や祖母の使いでたばこは良く買いに行かされましたが、たばこ店に並んでいてもほとんど記憶には残らないものです。

 

 

 

こちらのキングサイズ《やまと》は、フィルターたばことしては《こはく》と同じ日に発売された、

〚日本専売公社〛による10番目-11番目の新製品となります。

 

 

 

 

前回の《こはく》と同様に、《やまと》と言う品名も初めての銘柄ではありません。〚煙草専賣局〛が誕生した明治37年(1904年)、最初の〈口付きたばこ〉4銘柄が同時に発売されています。

 

品名は《敷島》《大和》《朝日》《山桜》の4銘柄です。江戸時代の国学者【本居宣長】の詩った、=敷島の 大和心を人問わば 朝日に匂う 山桜花=から名前が付けられました。この時に《大和》が販売されています。《大和》は大正13年(1924年)3月31日で製造中止となっています。

 

 

 

 

 

 

 

                    やまと

 

 ①昭和41年(1966年)12月  1日 キングサイズ  定価 100円

   昭和42年(1967年)  4月頃   文字サイズ変更のため中止 


昭和41年(1966年)12月1日より販売が開始されましたが、4ヶ月程度で底面の品名表記が変更されています。こちらは品名が大きなサイズです。

 

同時に、底面とサイド糊付け部分の白地の幅も変更されました。それぞれのパッケージに見られる、白抜き部分のサイズを記載しておきます。

 

地色は全面が金色の印刷ですが、これは〈金付け〉ではなく〈金インク〉です。しかし封緘紙の品名は〈金付け〉で印刷されています。同じ印刷は《ハイライトエキスポート》と《ミスタースリム》に見られます。

 

         ↑            ↑          ↑

    台形の白地が 5㎜ と低い          文字が大きい         3.5㎜

 

 

 

              底面の品名 サイズが大きい

 

 

 

 

 

                〈金付け〉の封緘紙

 

      茶色地に〈金付け〉なので目立ちませんが、キラキラと豪華な雰囲気です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昭和42年(1967年)  4月頃    底面の文字サイズが小さくなる

  昭和46年(1971年)  6月     製造中止

 

底面に印刷されたローマ字の品名が小さくなりました。底面とサイドに見られる糊付け部分の白地は大きくなっています。底面は台形が高くなり、サイドの白地は 3.5㎜ → 5㎜ へ変更されました。

 

          ↑            ↑          ↑

    台形の白地が 6㎜ と高い          文字が小さい          5㎜

 

 

 

              底面の品名 サイズが小さい

 

 

 

 

 

                〈金付け〉の封緘紙

 

      茶色地に〈金付け〉なので目立ちませんが、キラキラと豪華な雰囲気です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                 品名サイズ 比較

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        〚日本専売公社〛の時代、《やまと》で実施された定価改定

 

        昭和41年(1966年) 12月   1日  発売       定価    100円

        昭和43年(1968年)   5月   1日         定価    130

 

 

 

昭和43年(1968年)5月1日に、専売公社として初めての一斉値上げが実施されました。旧価格品と新価格品を区別するために、銘柄によっていくつかのパッケージ変化が見られます。

 

● 封緘紙のデザインを変えずに、暫定的に印刷色を変化させる。

  《ホープ》《ピース》《ルナ》《ハイライト》《ハイライトデラックス》《mf エムエフ》

  《ひびき》《トリオ》《スリーエー》の、9種類の暫定封緘紙が確認できます。

 

  《ハイライト》と《ハイライトデラックス》は、《ハイライト25》の封緘紙と同じデザインで

  (25)の数字のない色違いです。この暫定封緘紙が《ハイライト25》に引き継がれます。

 

 

 

 

● 定価改定の丸型の小さなシールをパッケージに貼付する。

定価改定のシールは全6種類が用意されたようです。印刷色と併せて中央の星の数がそれぞれ違います。たばこの値上げ価格によって違うようです。ただし、赤色=星1個は共通用なのだそうです。

 

 

こちらは赤色で中央の星が1個です。他に赤紫色=星1個、青色=星2個、オリーブ色=星3個、

レモン色=星4個、また中央に星の代わりに〈輸入たばこ〉と書かれたタイプを加えて6種類です。

 

はっきり分かりませんが、改定額が星1個=10円、星2個=20円、星3個=30円、星4個=40円なのだと思います。星の数で10円~40円までの値上げ金額を表しているようです。

 

 

《やまと》では、当初は暫定封緘紙を使用する予定だったようですが用意されませんでした。

《やまと》の新価格品は、30円の値上げなので旧パッケージに〈オリーブ色=星3個〉、あるいは共通用〈赤色=星1個〉のシールが貼付されていたと考えられます。

 

 

 

昭和43年(1968年)5月1日の定価改定は、たばこのフィルム包装が広く普及する前の事です。

定価改定のシールは、まだ多くの銘柄でパッケージに直接貼付されていたと思われます。

《やまと》は高級たばこなので発売当初からフィルム包装されていたのでしょうか。

 

しかし《ハイライト》では昭和35年(1960年)発売当初からセロファン包装されていましたが、パッケージにはシールの貼付が見られます。他の全銘柄に対しても、セロファンが装填される前に

直接パッケージにシールを貼付していたと言う事なのでしょうか?。

 

 

 

この2種類の方法が採られたようです。銘柄によって違うようですが、当時小学生だった私には詳しい事は分かりません。学生時代にも《たばこサービスセンター》で伺っていませんでした。

 

 

 

 

 

次回は《こはく》《やまと》の発売から5ヶ月後に12番目の新製品として登場した《泉》をご紹介します。2年程度の短い販売期間で、販売中にパッケージの変化が見られない銘柄です。