昭和41年(1966年)12月1日より、新銘柄の《こはく》と《やまと》が2種類同時に発売されました。前回ご紹介した3級品の《わかば》が発売されてから4ヶ月後の新製品です。アイウエオ順で、こちらでは《こはく》についてご紹介します。
定価は100円で、当時1級品の一般的な定価だった80円より20円割高です。〚日本専売公社〛では初めての〈キングサイズ〉製品となった同時発売の《やまと》と同じ価格帯で発売されています。
この定価は、両切りたばこ《富士》と同じ価格帯です。
高級志向の銘柄でした。パッケージは〚日本専売公社〛の普通たばこでは初めて採用された包装形態で、【ヒンジリット型】と呼ばれるハードボックスです。
これまで記念たばこが1種類見られますので、普通と記念を併せると〚日本専売公社〛2番目の登場です。販売期間は6年6ヶ月でした。昭和48年(1973年)5月に製造中止となります。
《こはく》は【ヒンジリット型】と呼ばれるハードボックスの発売から4ヶ月後に【U字Ⅱ型包装】が新たに登場しました。並行販売されますが【U字Ⅱ型包装】は1年ほどで廃止されています。
私が高校1年まで販売されていましたが、周りに誰も吸っている大人がいなかったので全く知らない銘柄でした。高校3年の時に地元の〚日本専売公社〛支局で見せてもらった、1972年に刊行された〚日本のたばこデザイン〛で初めて知りました。
その後〚日本のたばこデザイン〛は19歳の時に新橋の ≪たばこ友の会事務局≫ で購入しています。じっくりと写真を見て、1度は実物を見てみたいと思っていた銘柄でした。パッケージは琉球煙草の研究でお世話になった方にいただいています。
〚日本専売公社〛のフィルター付きたばこを発売順にご紹介しています。これまで、最初に登場した昭和32年(1957年)7月に発売の《ショートホープ》から、昭和41年(1966年)8月に発売された《わかば》までご紹介しています。
こちらの《こはく》は、次回ご紹介する《やまと》と同じ日に発売されています。フィルターたばことしては《わかば》に続いて発売された〚日本専売公社〛による10番目-11番目の新製品です。
《こはく》は初めての銘柄ではありません。昭和5年(1930年)11月に【トルコ巻き】の新銘柄として《琥珀》が発売されています。【トルコ巻き】とはトルコ葉をブレンドしてコルクや金、銀の
吸い口の付いた高級たばこです。
明治時代からの【トルコ巻き】高級たばこ《オリエント》《ナイル》《アルマ》を廃止して、新しい【トルコ巻き】の高級たばことして発売されました。吸い口は【オーバル巻き】と呼ばれる楕円形をしていたようで、吸い口には〈金口〉と〈プレーン〉の2種類があったそうです。
昭和5年(1930年)11月に発売され、昭和15年(1940年)7月7日に施行された<奢侈禁止令>により、昭和15年(1940年)9月15日に初代の《ホープ》と共に廃止されています。《ホープ》は英語が敵性語として禁止となった事で廃止されました。
こはく (KOHAKU)
①昭和41年12月1日 ハードボックス 20本入 定価 100円
昭和47年 7月 健康表示により中止
昭和41年12月1日より、普通たばこでは初めて【ヒンジリット型】と呼ばれるハードボックスで発売されました。パッケージとしては2品目の登場で、現在も良く見られるハードボックスです。
【ヒンジリット型】は普通たばこでは初めてですが、昭和40年(1965年)9月に記念たばことして最初のパッケージが登場しています。《とうきょう64》を台たばこに【英国博覧会】の記念たばこが東京都限定で販売されました。
パッケージの内側に折り込まれた見えない部分は白地ですが、上部取り出し口付近の表面に見えるすべての面で地色が淡い灰褐色(灰味クリーム色)をしています。
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蓋の内側部分は折り込まれたままです
②昭和47年 7月 健康表示が印刷される
昭和48年 5月 製造中止
1972年7月より健康表示が印刷されました。その後、僅か10ヶ月程度の販売期間で製造中止になります。こちらは表面に見える部分の地色が全て淡いクリーム色の印刷です。
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蓋部分を開いています
発売当初のパッケージはそのまま6年近く販売が続きました。ところがサイドに〈健康表示〉が印刷された後は、僅か10ヶ月程度で製造中止になってしまいます。
③昭和42年 4月 U字Ⅱ型包装 ソフトパックで発売
昭和43年 製造中止
【ヒンジリット型】発売から4ヶ月後に【U字Ⅱ型包装】のソフトパックが新たに発売されました。ボックスタイプと並行販売されますが、僅か1年程度で製造中止となります。ボックスタイプとは
印刷色が違います。(灰味クリーム色)の部分が白地となっています。
まるで試験販売のようで、【ヒンジリット型】から【U字Ⅱ型包装】へ置き換える予定でもあったのでしょうか?。2種類の包装形態の販売状況を見て、結局断念したかのように見えます。
〚日本専売公社〛の時代、《こはく》で実施された定価改定
昭和41年(1966年) 12月 1日 発売 定価 100円
昭和43年(1968年) 5月 1日 定価 130円
昭和43年(1968年)5月1日に、専売公社として初めての一斉値上げが実施されました。旧価格品と新価格品を区別するために、銘柄によっていくつかのパッケージ変化が見られます。
● 封緘紙のデザインを変えずに、暫定的に印刷色を変化させる。
《ホープ》《ピース》《ルナ》《ハイライト》《ハイライトデラックス》《mf エムエフ》
《ひびき》《トリオ》《スリーエー》の、9種類の暫定封緘紙が確認できます。
《ハイライト》と《ハイライトデラックス》は、《ハイライト25》の封緘紙と同じデザインで
(25)の数字のない色違いです。この暫定封緘紙が《ハイライト25》に引き継がれます。
● 定価改定の丸型の小さなシールをパッケージに貼付する。
定価改定のシールは全6種類が用意されたようです。印刷色と併せて中央の星の数がそれぞれ違います。たばこの値上げ価格によって違うようです。ただし、赤色=星1個は共通用なのだそうです。
こちらは赤色で中央の星が1個です。他に赤紫色=星1個、青色=星2個、オリーブ色=星3個、
レモン色=星4個、また中央に星の代わりに〈輸入たばこ〉と書かれたタイプを加えて6種類です。
はっきり分かりませんが、改定額が星1個=10円、星2個=20円、星3個=30円、星4個=40円なのだと思います。星の数で10円~40円までの値上げ金額を表しているようです。
《こはく》の新価格品は、30円の値上げなので旧パッケージに〈オリーブ色=星3個〉、あるいは共通用〈赤色=星1個〉のシールが貼付されていと思います。
たばこの外装セロファンが広く普及したのは昭和46年頃のようです。初めてセロファンが装填された銘柄は昭和28年の両切りたばこ《富士》でした。《こはく》は高級たばこなので昭和41年の発売当初からフィルム包装されていたのでしょうか。
昭和43年(1968年)5月1日の定価改定の時は、たばこのフィルム包装が広く普及する前の事です。定価改定のシールは、まだいくつかの銘柄でパッケージに直接貼付されていたと思われます。
しかし《ハイライト》では昭和35年(1960年)の発売当初からセロファン包装されていましたが、パッケージにはシールの貼付が見られます。他の全銘柄に対しても、セロファンが装填される前に直接パッケージにシールを貼付していたと言う事なのでしょうか?。
この2種類の方法が採られたようです。銘柄によって違うようですが、当時小学生だった私には詳しい事は分かりません。学生時代にも《たばこサービスセンター》で伺っていませんでした。
〚日本専売公社〛の時代のパッケージ変化はいくつか見られます。他の銘柄でも同じ事が言えます。《こはく》の販売期間中に見られる共通した変化を挙げておきます。
● 昭和45年9月頃から、U字Ⅱ型包装ではサイドの白地部分の長さがレギュラーサイズ 59㎜
ロングサイズは 70㎜ となる。
● 昭和47年7月から、サイドに健康表示が印刷される。
《こはく》の販売期間は6年半ほどです。その間に昭和43年5月1日の一斉定価改定が行われていて、昭和47年7月の健康表示の印刷もあります。その他には【U字Ⅱ型包装】が短期間だけ追加販売されていますので、6年半の販売期間としては変化が賑やかと言えます。
次回は《こはく》と同じ日に発売された《やまと》をご紹介します。5年間ほどの販売であまり変化が見られない銘柄です。アイウエオ順に並べたので《こはく》を先にご紹介しました。